第197話 ダルシーが新しいカップでお茶をついでくれる
聖女の湯条件闘争党の活動が収まったようなので、カウンターへ行く。
クララに挨拶をして、カウンターの料理をトレイに乗せる。
今日の料理はチキンのホワイトシチュー、コーンスープ、プチトマトサラダ、黒パンであった。
わりと無難な感じのメニューだけどイルダさん監修でどれくらい美味しいかな。
とても楽しみだね。
この時間、聖女派閥がいつも使うテーブルが空いている事が多い。
気を遣わせてるのかなあ。
悪いなあ。
とは思うのだが、ご厚意に甘えさせてもらう感じだね。
ジュリエット嬢がだんだんトレイを運ぶのが上手くなってるね。
良い事です。
カロルの隣に座って皆が席に付くのを待つ。
みんなが揃ったらいただきますである。
待っている間、暇なので、隣のカロルの肩に自分の肩をぶつける遊びをしていたら、無言で頬を引っ張られた。
「何らよ~」
「やめなさい」
なんだか、最近カロルが冷たい~。
えーん。
まあ、いいや。
みんなが揃ったので私は手を合わせる。
「いただきます」
「「「「「「「毎日の糧を女神に感謝します」」」」」」」
だからー、おがむなー。
毎日天丼だなあ。
天丼というのは、コメディドラマとかでのお約束というか、同じギャグを繰り返しやって笑いをとるやつだね。
パクリ。
おーーーー、チキンのシチューにチーズが入ってるね。
おもしろい。
美味しい。
あっさり目の味わいのホワイトシチューに、チーズの風味が奥行きを出していて、平たくいうと美味しい。
イルダさんは凄いな。
「美味しいねカロル」
「うん、チーズが良い味わいになってるね。コーンスープも甘くて美味しいわ」
どれどれ。
うん、甘めだけど、シチューの味と調和するように良いあんばいに押さえてある。
おいしいねえ。
ちょっと重めで、酸っぱい味わいの黒パンとも良く合う。
はあ、毎日美味しい物を食べられて、幸せだなあ。
やっぱり食事は大事だな。
あと、みんなとおしゃべりしながら食べるのも美味しい。
うっは、またコイシちゃんが塩を山盛りシチューに入れている。
あの子は高血圧にならないのかね。
バッテン先生も別のテーブルにいて、ぱくぱく食べているな。
私と目があうとニッコリ笑ってくれた。
あの光る手の平の効果は大丈夫だろうか。
後遺症とか無いだろうな。
回復系だから大丈夫だとは思うけど。
などと考えながら食べていたら、食べ終わっていた。
うん、食べた食べた、お腹いっぱい。
「ごちそうさまでした」
食器返却口にトレイごと戻して、みんなが食べ終わるまでお茶を飲む。
食堂備え付けの木のコップに大ヤカンからついだ冷めたお茶を入れた物だ。
「どうぞ」
ダルシーが新しいポットから、新しいカップにお茶を入れてくれた。
おお、いつの間に買ってきた?
おー、カップもポットもお花の柄で可愛いね。
結構良い物っぽい。
何より暖かいお茶が飲めるのが良いね。
「ありがとうダルシー」
角砂糖とミルクを入れて飲んでみる。
おお、美味しい。
普通からレベルアップしてるね。
お茶のせいか、ポットのせいかは解らないけど。
「おいしい、上手くなったねダルシー」
「ありがとうございます」
ダルシーはとても嬉しそうだ。
「ほんと? 私にもちょうだい」
「はい、コリンナさま」
コリンナちゃんもお茶を一口含んで、おっという顔をした。
「美味しいね、ダルシー」
「ありがとうございます、コリンナさま」
「私にも下さいな、えっとカップは……」
ダルシーの持ってる新しいカップは私とコリンナちゃん用の二つだけだからねえ。
と、思っていたら、アンヌさんが現れてカロルにカップを渡した。
ダルシーは緊張の面持ちで、カロルのカップにポットからお茶を注いだ。
カロルは匂いを嗅いで、お茶を一口含んだ。
「あ、上手くなってるわね、この前頂いた時よりもずっと美味しいわ」
「あ、ありがとうございます」
カロルの舌は肥えてるからなあ。
私やコリンナちゃんよりもずっと信頼できるぜ。
「よかったね、ダルシー」
「はい、ありがとうございます」
ダルシーははにかんだあと、姿を消した。
「ダルシーも進歩してるんだなあ」
「彼女は努力家ですよ、コリンナさま」
「そうだねえ、アンヌさん」
では、と言って、アンヌさんも消えた。
やっぱりお金の力は凄い。
ダルシーのお茶がいまいちだったのは、使っていたのが安売りのお茶っ葉だったからなんだなあ。
悪い事をしたね。
私たちがお茶を飲み終わる頃には、みんなのお食事が終わった。
食事の速度が遅いのは、ジュリエット嬢だねえ。
侯爵家のお嬢様だからしょうがないね。
身分が上がるほど、マナーは良くなり、食事の速度は落ちるものだ。
ひよこ堂のパンとかを、ジュリエット嬢が食べる速度はそんなに遅くないもんね。
ダルシーが一瞬現れて、私とコリンナちゃんのティーカップを回収していった。
カップもおしゃれで可愛い。
意外にダルシーはセンスが良いなあ。
アンヌさんも現れてカロルのカップを回収していった。
なんだなあ、諜報メイドは便利過ぎだな。
さて、205号室に戻って寝ようではないか。
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