第195話 地下大浴場でバッテン先生に謎のマッサージをほどこす
みんなで女子寮地下のお風呂にやってきた。
ゆりゆり先輩はいないが、昨日と大体同じ面子だね。
あ、ジュリエット嬢もいないや。
「ジュリちゃんは今日はいないの?」
「ロイド王子と観劇に行ってしまったようです。『氷結湖悲歎』に行くって言ってました」
「ああ、あれは面白かったなあ」
マリリンが服を脱ぎながら寄って来た。
「そうですの、私も行こうかしら」
「行けば良いじゃん。ペンティア部のカーター部長でも誘ってさ」
「ま、まあっ、いやですわ、マコトさまったら。……でもそうですわねえ」
カリーナさんに服を脱がせてもらいながら、メリッサさんも寄って来た。
「日曜日に行ってらっしゃいな、マリリン」
「そうね、切符は取れるかしら」
「明日、一緒に切符を取りにいってあげるわ」
「まあ、メリッサさま、うれしいわ」
女同士の友情は美しいことだなあ。
服を脱ぎおえ、裸ん坊で浴室に入る。
大浴場の真ん中にバッテン先生がいるぞ。
「先生、体の調子はどうですか」
「キンボールか、そうだな、何時までも私は若くは無いんだと気づかされたよ」
バッテン先生は虚空に暗い視線を向けた。
ざばざばかけ湯をして私も湯船に入る。
おろ、お湯から匂いがしないね。
薬剤が無い普通のお湯のようだ。
「薬効かい? 昨日たくさんの生徒が入ったせいでお湯が汚れて、張り替えたようだよ」
「それはそれは」
一日でお湯を張り替えなきゃならないとは、どんだけ生徒がきたんだろうか。
「先生、まだ体痛いですか?」
「いや、もう痛くはない、だるいだけだよ」
ああ、だるいのはなあ、治せないな。
ざんねん。
せめてマッサージぐらいはして上げよう。
「肩をもみますよ」
「ははは、気をつかわなくてもいいよ、あ、そこそこ、んっ、キンボールは上手いな」
まだまだバッテン先生も四十前である、肌はしっとりしているな。
もみもみ。
「んっ、あっ、くっ」
どうでもいいが、声がエロすぎだろう。
まったく、いけませんな。
と、思ったが、なんか私の手の平が光ってるー。
「うわ、なんだ! 凄く肩が軽くなったぞ、ありがとうキンボール」
「い、いえ……」
あちゃあ、また私、なにかやっちゃいましたか。
回復系のなんかだな、これ。
マッサージの才能まであるのか、聖女の技能、あなどりがたし!
バッテン先生が、すごくはつらつとしてるーっ。
こ、これは秘匿しなければならない能力のような気がするぞー。
王家ご用達のマッサージ師になるのはいやだしな。
暖まったので、湯船の外に出て、ダルシーに体を洗ってもらう。
なんか私のお世話をするときのダルシーは楽しそうだな。
何時も体を洗って貰って悪いので、今度、ダルシーを洗ってあげよう。
うむうむ。
今日ではないがな。
髪を丁寧に洗って貰う。
あー気持ちがいいねえ。
隣ではバッテン先生がガッシガッシと漢らしく体を洗っている。
男前だなあ、先生。
「今日も食堂で晩餐を取っていくんですか、先生」
「そうだな、うん、食べていくよ」
「良く食べに来るなら、月間トークンを買った方がお得ですよ」
「そうだな、一週分ぐらい安いんだっけか?」
「はい、まとめてお金を納めるので七日分の食費が割り引きされてます」
「でも、私は朝食は食べないからな、ちょっと損じゃないかな?」
「そうですね、そうなると少し損かもしれません。学園長に言って、夕食だけの職員トークンを発行してもらったらどうですか?」
「それは良いね、職員トークンか。学園の下級貴族レストランの割引券は出てるんだが、あそこはなあ」
「まあ、割り引かれても行きたくないですよね、下級レストランは」
先生はざばざばと体にお湯を掛けて、立ち上がった。
「よし、復活! お風呂はやはり利くな」
多分お風呂のせいじゃないけどねー。
でも言わないからねー。
髪にバスタオルを巻いてもらって、湯船に入り直す。
はあ、お風呂はいいねえ。
ビバノンノン。
さて、暖まったので脱衣所に出て、ダルシーに体をふいてもらう。
しかし、最初はこそばゆかったけど、慣れましたね。
人間の順応力たるや、すごいものです。
ドライヤーがまだ使えないのが困るね。
バスタオルで乾かすのは大変であるな。
205号室で、ダルシーにドライヤーを掛けてもらおうかな。
ふう、髪は少々濡れているけど、新品の下着に制服を着てさっぱりしました。
「それでは、また晩餐でねー」
「はい、またー」
「またなーマコト」
「またあとでみょん」
みんなと挨拶を交わし、地下大浴場を出る。
ダルシーが汚れ物を片手に洗濯室に入っていった。
彼女はよく働くね。
喧嘩も強いし、言うこと無しだ。
階段を一段飛ばしであがって205号室へ。
ドアを開けて入ると、中ではコリンナちゃんが勉強していた。
「ただいま、コリンナちゃん」
「おかえり、良い匂い、お風呂あがり」
「そうさー」
わたしははしごを上がって自分のベットスペースに入る。
ダルシーに託した四冊のご本がベットサイドに並べてあった。
うしし。
晩餐まで読書をするかなあ。
私は前世から文系なんで、本が大好き。
うっしっし。




