第193話 図書室でルカっちと出会う
ドラゴンを見送った後、パンをパクパク食べて。
カロルにひっついていたら、暑いと言って逃げられた。
なぜなんだー。
昨日は昨日はあんなにあんなにー。
ひーん。
べそをかいていたら、コリンナちゃんが手を引っ張って学園まで引かれて行った。
まあ、いいや。
私は切り替えが早いんだ。
そして、火曜から金曜の午後は光魔法実験の時間だ。
しかし、そろそろ飽きてきたなあ。
「ジョンおじさん、同じ実験ばっかりで飽きませんか」
「飽きないね、同じ数値が出れば嬉しい、違う数字がでると、なぜかと疑問で嬉しい」
「しかり……」
くそう、魔術馬鹿どもめーっ。
光らせたり、それを崩壊させたり、ヒールしたり、キュアしたり、アンチポイズンしたりした。
「そういや、魔法省に持って行ったヒールポーションはどうしましたか?」
「希望のハゲに渡した。魔法省のハゲ五十人が一瞬で応募してきたよ」
「そんなに薬剤は回らないんじゃないですか?」
「二十五人には本物のヒールポーション、あと二十五人には、対照実験として、普通のポーションを渡してある。ビンは不透明なものだ」
「外れたハゲの人は可哀想ですね」
「実験には犠牲がつきものなんだよ」
毛生え薬の需要は凄そうだからなあ。
下手をすれば一生を毛生え薬製造機として過ごさねばならないぞ。
お金は儲かりそうだけど、なんかやだなあ。
世界のハゲの悲しみが少なくなるようにお祈りしながら、今日の実験は終わった。
エルマーと一緒にA組に帰る。
アンソニー先生がやってきてホームルームが始まる。
夜に寮から抜け出して街に遊びに出かける生徒がいるが、見つけたら身分にかかわらず厳罰だそうだ。
そろそろ高等学園にも慣れて、遊びたくなる時期なのかね。
捕まったら、二週間ほど寮で謹慎だそうだ。
結構厳しいね。
起立、礼で、本日の授業は終わり。
いやあ、疲れました。
疲れてないけどさ。
さてと、放課後はどうしようかな。
「カロルは今日は?」
「錬金よ、なにかあったら錬金室にいるから来てね」
「わかったよう。ちゅーしにいっていい?」
「駄目よ、人間発電所かけるわよ」
「ちえー、けちんぼー」
カロルはケラケラと笑って行ってしまった。
まあ、変な感じにおたがいモジモジするよりは良いか。
距離はゆっくり詰めていこう。
あー、カロルにちゅーしてえなあ。
教科書を鞄に入れて、私は学園無宿でござい。
どこに行こうかねー。
と、校舎をぶらぶら歩く。
そういや、図書館を探検するんだったか。
行ってみよう。
魔法学園の図書館は独立した建物だ。
校舎の中にも図書室があったから気がつかなかったのだけど、空中を渡り廊下でつないだ大きい物がある。
こっちの方ならビアンカさまの伝記とか詳しいのがあるかな?
重々しい扉を開けて図書館内に入る。
ふむ、蔵書が多いぐらいで、図書室と同じ感じだな。
壁一杯に本が並んでいる。
部屋の中にも書庫が並んで、少々ほこり臭いね。
しかし、羊皮紙の本をこんなに集めて、管理が大変だろうなあ。
「やあ、少女よ、なにかお困りかい?」
だれや、お前?
なんだか、キラキラした美少年が私に声を掛けてきた。
あー、こいつルカっちだな。
攻略対象じゃないんだけど、図書館限定のお助けキャラみたいな。
彼と知り合っておくと、図書館での稀覯本発見確率があがるのだ。
稀覯本はエルマーか、ケビン王子にやると好感度が上がる。
街で男性用おしゃれアイテムを買って、ロイドちゃんにやるのと一緒だな。
ちなみに、カーチスは武器屋で掘り出し物をゲットして渡すと好感度がアップする。
今生では誰にもプレゼントとかする気が無いけどな。
あっ。
「錬金術の稀覯本とかあるかな?」
「あるともー、錬金術コーナーはこっちだよ」
「私はマコトだよ、あなたは?」
「僕かい、僕は本の妖精さ、はっはっは」
「変なテンションだな、ルカっち」
「なななな、なぜそのあだ名を知ってるのだ、金的令嬢」
「金的令嬢はやめろい」
ルカっちは、その場でくるりと回った。
「僕は、ルーカスだ、サルトミン子爵家だよ」
「よろしくルカっち」
「気さくな子だね、マコトっちは」
ルカっちはポーズを取ってふふふと笑った。
そして棚を指さすと、優美にお辞儀をした。
「ゆっくりしていきたまえよ。マコトっち、わからない事があったら僕はあそこにいるからね」
そう言って、ルカっちは貸し出しカウンターを指さした。
図書委員なんだよな、ルカっち。
錬金コーナーを見上げる。
本が一杯だ。
うん、どれが稀覯本かわからん。
くそう、カロルにやって好感度を上げようと思ったのに。
というか、図書館の本をかってに人にやって良い物なのか?
あれは、「こんな本があったよ、借りてきた」って又貸しする行為なのかもな。
とりあえず、錬金も勉強したいから、『錬金術・初歩』と、『簡単な術式・魔法陣変換知識』をとった。
歴史コーナーには、ビアンカさまのコーナーがあった。
ほほう。
さすがは元ビアンカさまの邸宅があった場所だな。
彼女の蔵書とかも残ってるのかな?
とりあえず、ビアンカさまの逸話の本も借りよう。
いつもお世話になってるしな。
そうだねって感じに、腰に差した子狐丸がリンと鳴いた。