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第186話 武道場へ剣術部の様子を見に行く

 地下大浴場から、みんなつやつやになって出てきた。

 ふわあ、良いお湯だったな。


「それでは、また、晩餐でお会いしましょう」

「そうですわ」

「そうですね~」


 お洒落組が階段を上って去っていく。


「私はカロルの部屋でハーブティーを飲みながらおしゃべりがしたい」

「うんうん、気持ちはわかるがやめとけ」


 コリンナちゃんが苦虫をかみつぶしたような顔をしてそう言った。


「なんでよー」

「カロルは照れくさくなって逃げてしまったのだから、晩餐までほっといてさしあげなさい」

「ぐぬぬ」


「それでは、私も部屋にもどりますわ。今日の食堂監督は私ですので、また後で」

「ユリーシャ先輩もおつかれさま」

「いえいえ、眼福物でしたわ~」


 まったく、ぶれねえよなあ、このガチ百合先輩。

 ゆりゆり先輩は上機嫌で、ミーシャさんを引き連れてエレベーターへ向かった。


 しょうが無い、自分のベットでのたのたしてるかな。

 あーでも、それもなあ。


「私は剣術部を見てくるよ」

「そうかそうか、私は勉強してるよ」

「んではいってくる」

「いってらっしゃい」


 コリンナちゃんと分かれて女子寮の外に出る。

 まだ四時頃だから日はあるね。

 そらはうっすら色づき始めてるけど。


 剣術部どもは、どこらへんにいるのかな。

 武術場だろうか。


 体育館を目指してぷらぷらと歩く。

 ときどき、おい、あれ金的令嬢だ、とか言う声には睨んでおく。

 こっぱずかしい二つ名が定着してしまったなあ。

 聖女令嬢とか、神殿令嬢とかに変えてもらえないものだろうか。


 体育館の横の武道場に入ると、中では剣術部の連中が倒れ伏し、はあはあと息をしていた。

 な、なにごと?


「おお、マコト、水もってきてくれー」

「なんだよ、カーチス、どうした?」

「バッテン先生が張り切っちゃってよお。剣術部全滅」


 そのバッテン先生も武道場に転がっておる。


「ダルシー、水」

「急いで汲んでまいります」


 ダルシーはケトルを抱えて武道場の外に駆けだした。

 武道場と体育館の間に水飲み場があったな、たしか。


 乙女ゲーなので、王都は上下水道完備である。

 固めの水だから、わかして冷まさないといけないけどね。

 お茶が流行るわけなのだぜい。


 ダルシーが汲んできたケトルから、カーチスが水をぶがぶと直接飲んだ。


「生水飲むと腹をこわすぞ」

「そんときは直してくれ」


 それもそうだな。


「水みょん」

「みず……」


 コイシちゃんとカトレアさんもゾンビのようにケトルに群がる。

 と、そこに、アンヌさんがやってきた。


「水をお持ちしました。蒸留水ですよ」


 ひゃあと声を上げてコイシちゃんがガラス瓶から水をラッパ飲みする。

 カトレアさんも続く。


「ああ、冷たい、生き返る」

「俺だけ生水かよ」


 哀れなので、カーチスのお腹にキュアをかけてやる。

 たぶん、これで大丈夫だろう。


「サンキュ、マコト」


 バッテン先生も、よろよろと立ち上がり、水、水、と言いながらガラス瓶に口を付けた。


「まったく、何をやってるんですか先生」

「いやあ、面目ない、つい練習に熱がはいってしまったよ」

「先生の仕上がりはどう? カーチス。リンダさんに勝てそう?」

「まだ、ぜんぜんだな」

「いやあ、こんなに体がなまってたとはねえ。足が利かないって怖い事だよ」


 しばらく走り込みとかをして持久力をつけないと駄目っぽいね。


「ああ、まだ練習をしたいのだが、体がついてこないよ」


 私はピンとひらめいた。


「いま、女子寮の地下大浴場に聖女ポーションをまいたから疲労回復するんじゃない? バッテン先生は入れるの?」

「うむ? 女子寮地下浴場か、行った事はないが、入れるだろう、護衛女騎士ドミトリーガードにも止める権限はなさそうだし」

「じゃ、みんな入って疲れを取ってきなさい、お肌もぷるぷるになるよ」


「お肌」

「ぷるぷる」


 コイシちゃんとカトレアさんが立ち上がってよろよろと歩き出した。

 ゾンビみたいで正直怖い。

 バッテン先生も後を追う。


「俺はー?」

「知らんがな。男子寮の大浴場にでもいきなよ」

「ぬおーーーっ」


 カーチスも気合いを入れて立ち上がり、ふらふらと歩き始める。


「じゃあ、また明日なー、マコト-」

「お風呂入ったら、手足マッサージしときなさいよ」

「おーう」


 まあ、ブロウライト家の執事さんとかがマッサージしてくれるだろうさ。

 なにげに奴はお坊ちゃんだしなあ。


 ふらふらと歩くゾンビ女三匹を追い越して女子寮に戻る。


 入り口に入ると、ロビーで女生徒が噂話をしているのを小耳に挟んだ。


「それで、今日の地下大浴場がすごいらしいの、肌がすべすべになるって」

「まあ、何かしら、温泉のお湯でも運んできたのかしらね」

「晩餐が終わったら行ってみない?」

「そうね、お風呂は入らなきゃいけないし、楽しみだわ」


 もう、噂になっておる。

 意地悪令嬢の二人がまき散らしたかな。


 まあ、効能は明日ぐらいまで持つはずだから、大丈夫だと思うけどね。

 しかし、聖女ポーションを入浴剤として売るのもありかな。


 もったいないか?

 まあ、元は薬草で、ポーションと同じ製造単価だから、毎日カロルの所で作ってもいいんだけどさ。

 ちょっと考えておこう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 現実の入浴剤も日本の会社が薬草風呂の処方をパックにして売り出したのが始まりらしいので、ポーション入浴剤が発売されても何もおかしくはなさそう。現実のヨーロッパと違ってこの国の入浴文化は日本風…
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