第181話 みんなで錬金実習室から引き上げる
できあがったポーションをカロルが検分している。
「市場には出せないけど、普通に実用にはできるわね」
「本当ですかっ、うれしいっ!」
おー、良かったね、ライルさん。
みんなで手分けして瓶に詰めていく。
一人二本ずつぐらい配れるな。
いいねいいね。
しかし疑問なんだが、薬草はどこに消えたのだろう。
ポーションの薬液は濁りもない緑色の透明であるな。
「薬草は完全に溶けて形もなくなるのよ」
「な、なぜそれが解ったの」
「マコトは考えが読みやすいわよ」
そ、そうか、なんかカロルに言われると恥ずかしいな。
ちょっと頬が熱くなる。
そういや、先週、私が作ったヒールポーションを飲んでないな。
使用期限は一週間ほどとか聞いたから、飲んじゃわないと悪くなるね。
誰かに飲ませるかなあ。
でも、病人もけが人もいないしな。
ハゲてる先生にでもあげるか?
サーヴィス先生がやってきて、ポーションを検分した。
「さすが、カロルさんが居る班ね、まったく問題はありません」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、私が作ったんです、嬉しいですっ」
「ライルさんは錬金の才能があるようね、励みなさい」
「はいっ! サーヴィス先生」
まあ、手に職が付くのは潰しが利いていいよね。
隣の班を覗いたら、コリンナちゃんと目が合ったので寄ってみる。
「どうだった?」
「難しいね。班の子が火加減を間違えて一釜分の薬草が無駄になったよ」
「火加減もあるのかー」
「ちゃんとしたポーションが欲しかったんだけどねー」
「私の分、一本いる?」
「……、今考えたら、ポーション使う状況って無いからいらないわ」
「無いよね、先週のポーションも使っちゃわないといけないんだけど、アイデアがないよ」
「凄いポーションも使用期限があるのがやばいな」
そうなんだよねえ。
ライルさんにあげて、弟さんのジュリー君に飲んで貰うかな。
悩ましい事だ。
「そういえばサーヴィス先生。先週の光ポーション、そろそろ賞味期限でしょう、どうしてるんですか」
「ああ、研究用の冷凍室で凍結させた、問題はないよ」
あー、冷蔵かあ、そういう手もあるのね。
ここの世界、冷蔵冷凍庫あるからか。
そんなこんなで錬金の授業二コマはあっという間に終わった。
これで錬金実習は来週までお預けか~。
「光リボンの話は放課後にしよう、どこか集まれる所はないかな」
「集会棟の155室が聖女派閥の集会室です。そちらで良いですか」
「かまわないよ、光るリボンとはそのリボンかね?」
「はい」
私はリボンのスイッチ回路に魔力を入れた。
「おおっ、ほお、綺麗に光るね」
おっと、ドレス組のお嬢様方も、目をらんらんとさせて見ているぞ。
「ジョンおじさんと、エルマーに改造してもらいました。改造前のはカロルがしてます」
カロルが自分のリボンに魔力を入れて光らせた。
「あ、そちらはキンボールさんが作ったんだね、よく光っている」
単なる点滅なんだけど、光る量が倍ぐらい違うんだよね。
でも、ダンスパーティは夜だし、そこまでの光度は要らないと思うんだ。
「楽しそうだ、二時頃集会室に行くよ」
「はい、待ってますね」
「私も行っていいかね」
「ジョンおじさんも聖女派閥ですから問題無いですよ」
「ほっほっほ、嬉しいね」
ジョンおじさんが上機嫌になったね。
さて、片付けて、A組に戻ろう。
錬金釜を洗ったり、包丁を洗ったりで、意外に錬金実習の後片付けは大変なのであるよ。
片付け終わって、エルマーとカロルとコリンナちゃんと一緒に校舎に向かう。
B組の前でコリンナちゃんと分かれ、A組に着いた。
すぐアンソニー先生が来てホームルームである。
学園にも慣れてきた頃なのが、そういう時期が一番問題が起きやすいのだそうな。
気が緩んで、外に飲みに行ったり、異性としけ込んだりしちゃうんだろうな。
油断なく過ごさねばね。
さて、ホームルームが終わったら念願の放課後であるよ。
「さて、行こう、カロル、エルマー」
「そうね、魔法塔の錬金技術が見られるなんて胸が高鳴るわ」
「ドライヤー……、を見せてほしい……」
「ダルシー」
虚空に呼べば、ダルシーはすっと現れる。
どういう仕組みなんだろうなあ。
魔法じゃなさそうだし、スキルなのかな。
「こちらです、クレイトンさま」
「ほお……」
エルマーは、ダルシーに渡されたドライヤーを興味深そう見たり、作動させたりした。
「わりと……、単純……、だが、単純にしない……と彫りにくいのか……」
「それもあるねー。彫金コストがあまり上がると大変だし」
「シンプルな方が壊れにくくて良いかもしれないわね」
「とりあえず集会室に行こう」
ダルシーが、エルマーからドライヤーを取り上げようとしている。
「返してください、クレイトンさま」
「……もう少し」
「マコトさまからいただいた大事なドライヤーなのです、後生ですから返してください」
「それでは……、しかたがない……」
エルマーはダルシーにドライヤーを渡した。
どんだけ、ダルシーはドライヤー一号器を大事にしているのか。
まあ、嬉しいけどさ、ちょっと引く。
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