第177話 バッテン先生に感謝される、あと武道大会の事を聞く
「そうだ、キンボール治療費はいくらだい? 先生は薄給だが借金してでも払うよ」
「いりませんよ、何言ってるんですか」
「え、ええっ! 名医に掛かっても治らなかった膝だよ、只ってわけにも」
「聖女の仕事ですから、無料ですよ。気になるなら大神殿に好きなだけお布施してください」
バッテン先生は私の肩をつかんだまま固まった。
「キンボール!! 私は感動したぞっ!!」
「感動も良いですから、授業を始めてください。あ、あと軍部に同じ症状の人が居るならなおしますよ」
かなり従軍の時代が違う学園長とバッテン先生が同じ術を掛けられていたので、かなり被害者はいそうだな。
「あ、ああっ、確かに沢山いるぞ。みな長い間医者に掛かっても治らなくて苦しんでいる」
「動けない方にはこちらからお伺いしますから、教えてくださいね」
バッテン先生は泣きながら、また私に抱きついた。
「キンボール!! なんてお前は良い奴なんだっ!! まさに聖女だっ!!」
「ま、まだ候補生ですよっ」
もーっ、はやく授業を始めやがれっ!
なんだかバッテン先生が弾むようにして授業の開始を宣言したぞ。
さて、コイシちゃんと向かい合って、小太刀と盾剣の練習だ。
カロルと組んだカトレアさんはエストックの模擬剣を使っている。
ビアンカさまの片手の動きで振ってみる。
おお、鋭いな。
コイシちゃんが模擬盾剣を落としそうなぐらいに綺麗に入った。
「上手いみょん、その調子」
「おっけーっ」
うんうん、思った通りに体が動くと楽しい。
そうやってしばらくカンカンと、攻撃と防御を重ねていると、バッテン先生がやってきた。
「なんだか、小太刀だけが抜群に上手くなってるね」
「聖剣、聖刀には元の持ち主の動きを記憶する機能がありまして、それで学びました」
「まったく、凄い物だなあ。小太刀は良い感じだから、盾剣に意識を集中してみなさい」
「はい、先生」
バッテン先生の指導は的確でいいね。
「マコトしゃん、長刀に変えても良いかみょん?」
「あ、良いよ~、コイシちゃんも普通の刀になれないとね」
「部活でも刀は結構やってるから、いいみょんけど、やっぱり魔刀に早く慣れたいみょんね」
コイシちゃんが木刀、私が小太刀、盾剣の編成に代わってカンカンやる。
おお、間合いが長くなった分、盾剣で受けるのが難しくなったな。
勉強になる。
おもしろいおもしろい。
カンカンコンカン。
そうやって、模擬小太刀と模擬盾剣を振っていたら、終業の鐘がなった。
ふう、汗をかいたな。
「だいぶん、盾剣が上手くなってきたみょんな」
「そう、ありがとうコイシちゃん」
コイシちゃんは小さいときから蓬莱刀法をやってるから、動きが安定してるなあ。
剣の動きとちょっと軌跡が違うのだけど、だからこそ盾剣で捌く練習になっている気がするよ。
バッテン先生が前に出て礼をした。
「では、今日の授業はこれで終了です。また明後日にね、解散」
「「「ありがとうございました」」」
武術場のご令嬢たちが声を揃えて挨拶をした。
よーし終わった終わった。
バッテン先生の膝も良い感じのようだね。
「先生、リンダ師と決闘するのですか?」
「そうだね、しばらく体を作ってから挑戦するよ」
「勝てるみょんか? 一昨日四人で掛かって奇跡的に一太刀しか入らなかったみょんよ」
「なにっ! 君たち、リンダと戦ったのか、詳しく!」
うは、バッテン先生がカトレアさんとコイシちゃんの話に食い付いた。
カトレアさんが、かいつまんで説明した。
「聖剣三本、聖刀一本をしのいだのか、やれやれ奴は相変わらずすごいな」
「先生はリンダ師匠と戦った事あるみょんか?」
「年齢が十違うからね、私が膝に矢を受けて騎士団を除隊したときには、奴はまだ神殿騎士として駆け出しだったよ。一度戦ってみたかったんだ」
「私も見てみたいですね、バッテン先生」
「一学期末の武道大会のエキシビションマッチで戦えないか学園長に提案してみるよ」
「わあ、それはみたいみょんよっ!」
おー、それは楽しそうだなあ。
「武道大会の出場は全員ですか?」
「キンボールも出たいのか、志願制だぞ、黄金週間あとに参加志望の用紙を配るぞ」
「剣だけですか? 魔法は?」
「魔法は秋の魔法大会だな。剣術大会は剣のみ、全学年対抗の勝ち上がり戦だ」
「男女別みょんな」
「そうだな、去年の男子の部の優勝者はマイケル・ピッカリン卿だ。女子の部はパトリシア・ビール男爵令嬢だよ」
うむ、まだ見ぬ強豪女子、というか、卒業してしまったのでは?
「パトリシアさんはご卒業しましたか?」
「ああ、三年だったからね、今年は誰だろうな」
「私が勝つ」
「私みょんっ」
「エルザさんじゃないかなあ」
「うっ」
「ぐっ」
いくら二人でも、剣豪エルザさんには勝てまい。
そして、私は勝ち目がないので武道大会には参加はすまい。
ゲームでは成長補正が付くから武道大会参加はいい手だったんだけどね。
たいてい一年では優勝できなくて、二年か三年の時に優勝する感じになる。
優勝すると、カーチスの好感度が爆上がり、他の攻略対象の好感度も結構あがる。
だがまあ、テストで一位取る方が好感度のコスパは良かったな。




