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第176話 バッテン先生の膝も治療する

 A組の教室に入り、授業の準備をする。

 今日の午前中は、国語、数学、魔術理論、武術だな。

 さあ、今日も頑張るぞ。


 と、三コマを一気に片付けて、四時限目前でございます。

 座学は得意だからね。

 なんでも無いよ。

 まだ、一年生の授業だしね。


 さてさて、武道場へ移動だ。

 みんなで体操着袋をぶらぶらさせて廊下を歩くよ。


「マコトしゃんは今日も小太刀と盾剣の二刀流かみょん?」


 コイシちゃんが横に並んで話しかけてきた。


「そうだねえ、なんとか二年までに身につけたいね」


 二年からは、公爵家の本隊がくるから荒事が増えそうだし。

 一人でも戦えるようにしておくべきだろうね。


「聖女さまの動きをトレスとかしないみょんか?」


 あ、たしかに。

 子狐丸の中にはビアンカさまの刀の動きが入ってるのだなあ。

 コイシちゃんがリンダさん戦で使ってたな。


 子狐丸の柄を握って、刀身の中に意識を向けてみた。

 おうおう、ビアンカさまの刀法が伝わってくるな。

 だが、残念な事に、だいたい両手持ちだね。


 ビアンカさまは、だいたい私よりもちょっと背が高いぐらいで、動き自体は参考になる。

 片手の動きは、四種類ぐらいか。


「参考になる? マコト」

「四種類ぐらい片手技があるね、これを使えるようになろうっと」

「聖剣は便利みょんね」


 そういう、コイシちゃんの腰の刀も、希代の魔剣なのですが。

 冷凍剣も色々応用が利いてよさそうだね。

 なにより、夏に使うと涼しそうである。


 さて、いろいろ喋っていたら、更衣室に着いた。

 中に入り、ロッカーの前で、制服から体操服に着替える。

 子狐丸とユニコーン剣はロッカーに入れておく。


 カトレアさんがエッケザックスを持って難しい顔をしている。


「どうしたの?」

「聖剣を無造作にロッカーにしまっていいものかと考えて居る」

「大丈夫じゃない、アンヌさんが見張っているらしいから」

「今日は私です。ご安心ください、カトレアさま、見守っておりますので」


 ふいにダルシーが現れた。


「そうか、ダルシーどのが見ていてくれるなら安心だな」

「わっちも安心みょん」


 エルザさんとか、カーチスはどうしてるのだろうか。

 まあ、聖剣とか盗む奴はいないだろうけど、派閥の嫌がらせで盗んで隠すのはありそうだな。

 お昼にでも二人に聞いてみよう。


「あ、でもバッテン先生に聖剣を見て貰って戦い方を教えてもらおう」

「そうみょんな、現物を見るとヒントが貰えるかもみょん。カトレアしゃん冴えてるみょんなあ」

「そんな事ないよ、コイシ」


 確かにエッケザックスは普通の長剣と運用がちがうからね。

 勇者の動きがあっても、男性と女性で動きが違うだろうしね。

 バッテン先生に見せるのは良いかも。


 で、授業が始まって、先生の前説が終わった後、さっそく二人は聖剣と魔刀をバッテン先生に見せていた。

 バッテン先生は頭を抱えた。


「ど、どうなされた」

「どうしたみょん?」

「良く聞きなさいよ二人とも」

「は、はい」

「う、うんみょん」

「先生は近衛騎士団の女性部で副団長まで務めたのだ」

「知ってるみょん、すごいみょん」

「惜しくも怪我で引退をなされたと聞きます」

「聖剣は勇者が使う物で、魔刀は私も見たことが無い」

「使い方解らないみょんか? アイスブランドの技術が使えると思えるみょんが?」

「突くタイプの剣、エストックとかは応用できませんか?」


 バッテン先生は渋い顔をした。


「まあ、それぐらいなら、しかし、エッケザックスを効果的に使う技なんか見当もつかないよ」

「そ、そうかもしれませんね」

「氷魔刀については、アイスブランドの技が使えるかもしれない、近衛騎士団に持っている奴がいたから聞いてあげよう」

「わあい、みょん」


 そう言って、バッテン先生は一歩さがる。

 ああ、やっぱり膝をやられて引きずっているなあ。

 ふむ。


「さあ、みな、攻撃の練習を一セット、防御の練習を一セットおこなうよ。基本の動きだから、解らない事があったら聞いてくださいね」

「「「「「「はいっ!」」」」」」


 元気の良い生徒の返事が武術場にこだました。


「先生」


 私はバッテン先生に近寄った。


「なんだい、キンボールさん」

「よかったら、膝直しますよ」

「ん? ハイポーションでもどうにもならなかった酷い傷だよ?」

「まあまあ、見せてくださいよ」


 私はかがみ込んで、ピッと探査光線を放った。

 ほうほう。

 あれ。


「学園長の傷と似てますね。同じ戦場に行きましたか?」

「時期が違うが、北方戦線だね。相手は帝国軍だった」


 呪いを矢に付与するのは、帝国軍かあ、嫌な事すんなあ。

 学園長を直したようにすれば治るかな。


「ダルシー、子狐丸を」

「はい、マコトさま」


 ダルシーが子狐丸を抱いて現れた。


「キ、キンボール君、何をするんだね?」

「ご安心を、治療刀でもあるんですよ」


 本当はスパッと切りつけた方が手軽なんだけど、さすがにそれは患者が怖がるね。

 先生の膝を持って、子狐丸を差し込んでいく。


「あっ、あ? 痛くない?」

「斬ってはいるのですけど、治癒しながらですので痛く無いんです」


 よし、子狐丸が呪いに届いた。

 刀の先で突いて、光の魔力を流し込んで消滅させる。


 ガタリと矢の先が床に落ちた。

 呪いは学園長の奴の方が強かったな。

 呪いの力でヤジリを概念化して、エクスポーションでも治療出来ないようにしているね。

 酷い呪いだ。


 子狐丸を引き抜いて、終了だ。


「……」


 おろ、武術場がシンとしておる。


 バッテン先生が膝をパンパンと叩き、そのあとダンダンとジャンプした。

 よし、完治したようだね。


「キンボール」

「はい」

「私はもう、二度とジャンプしたりは出来ないと思っていた」

「よかったですね」

「それがどうだ、膝が治った、治ったんだっ、キンボール!!」


 うわ、バッテン先生に抱きつかれて持ち上げられたっ。

 ひゃあ、やめてくださいよっ!


「ありがとうありがとうっ!! キンボールっ!! 本当にありがとうっ!!」


 バッテン先生にぎゅうぎゅう抱きしめられて、振り回された。

 先生は泣いていた。

 ああ、そんなに喜んでくれるなら、もっと早くに治してあげれば良かったな。

 ごめんね先生。


 いつの間にか生徒達も歓声を上げて、金的令嬢コールが始まっていた。

 やめろー、おまいらっ!


「ありがとう、キンボール、これで、またリンダの奴に勝負をいどめるぞっ」

「し、知り合いなんですか?」

「王都の武道系女子でリンダを倒す事を夢見ない奴はいないんだっ、やったぞっ、待っていろリンダっ!!」


 うはあ、リンダさんとバッテン先生はどっちが強いのだろう。

 二人の仕合はちょっと見たいね。


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