第166話 お昼を食べてからカロルにお化粧をしてもらう
コリンナちゃんの頑張りで、収益契約が決まった。
鍛冶部での製品販売は、鍛冶部が六割、聖女派閥が四割である。
なんにもしないで四割は取り過ぎじゃね? とか思ったが、コリンナちゃんが決めたのだからしょうがない。
こっちで販売する分は、鍛冶部に固定の制作費を払って仕入れて、売る感じ。
意外に制作費も安い。
鍛冶部の下級生に作らせるっぽいね。
「助かるぜっ、作剣コンテストで素材を購入しなきゃならないんだが、金が尽きそうでよっ、資金が増えるのはありがてえ」
「それは良かったね、作るのも簡単そうだから、儲かりそうね」
「ああ、頑張って作るぜ、魔法陣特許の方はいつ頃になりそうかい?」
「そうね、明日、魔法庁の長官と、錬金部の部長さんが来るから相談してみるよ」
「うへ、そんなお偉いさんが学園に来てるのかよ」
魔法庁の長官は、私の光魔法を実験に来てるんだな。
「じゃあ、私らはこれで」
「おう、女子用のデザインなんかは、アイーシャと相談してくれ」
「よろしくねー。あとでデザインモック作って持って行くわ」
「おねがいします、アイーシャさん」
「久々に楽しそうな仕事よ。頑張るわ」
アイーシャさんはにっこり笑った。
この人もエネルギッシュで魅力的な人だなあ。
鍛冶系の人は存在が力強い感じ。
バルトロ部長にお礼を言って、鍛冶実習室を出る。
ぷわあ。
外と温度が違いすぎるね。
寒いぐらいだぞ。
「さてと、ご飯を食べようか」
「ひよこ堂に行くのか?」
「三人分、買ってきたよ、食べるでしょ?」
「ありがたく」
コリンナちゃんが私を拝んだ。
拝むなってーの。
「お昼を食べてから劇場に行きましょうか」
「そうね、たのしみだなあ」
「デートを楽しんでこいよなあ」
「もう、コリンナったら、女性同士だからデートじゃないわよ」
「「……」」
コリンナちゃんからのアイコンタクトで「わかってねえよなカロル」と伝えてきたので、「わかってねーんだよ」とアイコンタクトで答えておいた。
まあ、いいけどさ。
カロルが、うっふーんとか言いながら、私にペタペタして来ても引くしね。
清純なのがカロルの良いところなんだから。
みんなで渡り廊下を伝って女子寮へ行く。
エレベーターに乗って五階へ。
ああ、エレベーター、エレベーター、わたしエレベーター大好き。
らくちんだからねっ。
五階に行き、錬金室の近くにいくと、アンヌさんが販売カウンターの中から笑顔で迎え入れてくれた。
カロルがドアを開き、中に招き入れてくれる。
「さ、座って座って、アンヌ、お茶をおねがい」
「かしこまりましたお嬢様」
香り高いハーブティーをアンヌさんが入れてくれた。
良い匂い。
カモミールかな?
「ダルシー、パンを」
「はい、マコトさま」
ダルシーが腰に付けた亜麻袋から、パンを取り出してテーブルの上に置く。
「聖女パンとあと一つか」
「好きに選んで、残ったのを食べるわ」
「悪いわよ、マコトが買ってきたから、マコトが選んで」
「わかったよー、じゃあ、卵サンドで」
「じゃあ、私はナッツドーナツで」
「私がクリームコロネね」
まあ、二人の好物を買って来たので、どっちにしろ選ぶ物は変わらなかったと思うけどね。
パンをもしゃもしゃ食べながらおしゃべりをして、楽しい昼食であるよ。
ああ、入学前はこんなに友達が出来るとは思わなかったなあ。
カロルとは友達になれるとは思ってたけど、派閥を作って、こんなに好きな人の輪が広がるとはねえ。
このまま、卒業まで、何も無しに平穏に持って行きたいよなあ。
パンを二つ食べ終わって、満足満足。
ハーブティを飲んでまったりする。
「お昼もすましたし、せっかくのお出かけだから、マコトにお化粧してあげる」
「え、マジ? ほんとに?」
「薄くだけどね」
「わあ、面白そうだなあ」
コリンナちゃんがにんまり笑った。
というか、私、前世でも今世でもお化粧をあまりしないんだよなあ。
カロルは化粧箱を持って来て、私の隣に座った。
距離が近くて、ちょっとドキドキする。
カロルは良い匂い。
漢方薬みたいな、そんな感じの匂い。
カロルの指が頬を撫でる。
こしょばい。
「お肌の手入れはいらないわね、ぷにぷにの肌」
「まあねえ」
毎朝、洗顔時にヒールかけてるからなあ。
ほとんど童女の肌であろうよ。
カロルは化粧箱から、ファンデーションを出して、軽く塗り始めた。
あー、なんか、なんか、カロルの指が顔を撫でるとくすぐったく嬉しい。
頬が熱くなっちゃうぞ。
「ほー、そうやって色を変えてるのかあ」
「コリンナも化粧はしたこと無いの?」
「金が無いので化粧品なんか、買えない。貧乏役人なめんな」
「威張られてもなあ。さてと、眉をちょっと描いて整えようね」
「う、うん」
ふうー、なんか心地がいいなあ。
カロルがシュッシュとブラシで眉になんかしておる。
目をつぶってるので解らないけど、カロルの体温が近くて嬉しい。
眉が終わると、頬紅を軽く軽く、私の頬に乗せていく。
手慣れてるなあ、カロルは、大人の女の人みたいだね。
「おお、なんか綺麗になってきたな、元々、マコトは綺麗だけどさ」
「でしょでしょ、もー、ずっとずっとマコトにお化粧したくって」
「どんなだー、鏡を見せろー」
「もうちょっとだから待って待って」
カロルは筆で唇にリップを塗っていく。
唇は敏感なので、こしょばいね。
こしょばい、心地よい。
「あ、やべえ、すげえ」
「わあ」
「何がなんだー、鏡-」
「まってまって」
カロルが私にのしかかるように密着して、まぶたの上にブラシをなぞらせる。
んー、んー、目の周りがこしょばいというよりも、カロルと接している膝とか、吐息とかがー、あー、あーっ。
「はい、できあがり」
「マコト、おまえ、素材がすげえな」
「なんだよう」
いつのまにかダルシーがいて、頬を赤らめながら鏡を出して、私を写した。
……。
うひー、なんだ、この美少女はー。
異様なかわいさだなあ。
これが私?
ほえー、ほえー。
「アホづらすんな、美少女の顔に悪いぞ」
「私の顔だいっ」
「はー、マコト綺麗~。凄いわね、薄く化粧しただけなのに」
「綺麗です、マコトさま……」
ダルシーも潤んだ目で見るのはやめろ。