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第162話 敵諜報メイド、アンジェリカ強襲

 不良達を聖堂騎士団に連行してもらう。

 とりあえず、今晩の酒場に身なりの良い紳士が現れたら確保する感じで。


 さて、学園に向かって歩こう。

 今日は良く晴れてるなあ、観劇日和だぜい。

 うっふっふ。


 ひよこ堂が見えてきた。

 お昼ご飯に何個か買っておくかな。

 カロルとコリンナちゃんの分も買うか。

 あまったら、備蓄に回せば良いし。

 乙女のチェストの中のパンはいつの間にかなくなっているのだ。

 まあ、私が食べてるんだけどさ。


「お兄ちゃんおはよー」

「おはようマコト、男爵家からか」

「そうだよー」


 店の前のクリフ兄ちゃんに朝の挨拶をして中に入る。

 お父ちゃんに言って、三人分のパンを選ぶ。

 まあ、六個だな。

 女子は三つも四つもパンは食べないのだよ。


 錬金室で食べれば、アンヌさんがハーブティを入れてくれるだろうし、ソーダはいらないな。

 お金を払うと、ダルシーが現れてパンを亜麻袋に入れてくれた。


「ダルシーの分を忘れていたよ、何がいい?」

「え、その、あの、聖女パンとホットドックを……」

「はいよう、いつもマコトが世話になってるね、ダルシーちゃん」

「いえ、お世話になってるのは私のほうで……」

「何を言ってるの、私の方が世話になってるわよ」


 私は伸び上がって、ダルシーの頭を撫でた。

 彼女は目を細めてじっとしている。


 ダルシーの分も亜麻袋に入れると、彼女は姿を消した。


「お、おおっ? 消えたぞ」

「そういうメイドなんだよ、父ちゃん」


 お父ちゃんにお金を払って、ひよこ堂を出た。

 なんかちょくちょく寄ってるから、実家を出た感がぜんぜん無いよな。

 たまにはひよこ堂でご飯も食べたいのだが、なかなかタイミングが合わないなあ。

 お母ちゃんの料理は素朴だが美味しいのに。


 ひよこ堂まで来れば、学園はすぐそこに見えてくる。

 日曜の午前なんで、街に繰り出す生徒の方が多い。

 二年生がいないから、ちょと人波が少なめか。


 校門をくぐり、女子寮方向へと足を向ける。

 ふと気がつくと、私の隣に、ダルシーとアンヌさんが居た。


「アンヌさん、どうしたの?」

「敵です。脅威度A 呪殺のアンジェリカ。ポッティンジャー公爵家の諜報メイドです」


 前方に生意気そうな顔をした、メイドの格好をした少女がこちらを睨んでいる。


「これはこれは、聖女候補のマコト様、私はポッティンジャー公爵家所属の諜報メイド、アンジェリカと申します、お見知りおきを」

「助かるわ」

「は?」

「助かるわ、ちゃんと情報を取ってデボラさんを止めてちょうだい」

「……え?」


 アンジェリカさんの顔に疑問の色が浮かぶ。


「あなたは、今のポッティンジャー公爵家第二公邸の状態は解る?」

「わ、わかりますが、どうして敵対派閥の聖女さまが、デボラさまの心配を?」

「諜報系がちゃんとしてないから、馬鹿な手ばかり打ってこられて、こっちも困るのよ」

「……ば、馬鹿な手?」


 なんだよ、ちゃんと調べておきなさいよ。


「諜報の手が足りないから、私を害そうとマイケル・ピッカリンを送り込んで来たのね」

「は、はい、それは抗争しているのでしょうがないかと」

「うん、別に送り込むのはいいの、その時、私はリンダさんと廃教会を見に行ってたのね」

「えーーーーっ!! 狂乱の聖天使が居る所にっ!!」

「急いで、マイクーは逃がしたけどさ、危ないって解るよね」

「は、はいっ、それは危機一髪でしたね。に、逃がしてくださってありがとうございます……」


 アンジェリカさんの額にびっしりと脂汗が浮かんだ。


「あんまり危ないから、剣弓毒はお互い使わないと、国王派、公爵家派、聖女派で条約を結んだけど、デボラさん素人だから、何するか解らなくてさ、正直、アンジェリカさんが来てくれて助かるわ」

「……」


 アンジェリカさんは地面を凝視して固まっている。


「報告書は読んで無いの?」

「な、なんだか、聞こえの良い事ばかり書いてありまして、おかしいなあとは思っておりました……」

「髑髏団のグレンさんとか、マイクーに話を聞きなさい、現場と残してある書類と食い違ってるはずだから」

「わ、わかりました、ありがとうございます。……、じゃないわっ、私はあなたに挑戦にきたのよっ、れ、礼はいいますけどねっ!」


 アンヌさんとダルシーが前に出た。


「二対一で勝てると思って居るのか、アンジュ?」

「ふ、ふんっ、アンヌと半端物のダルシーなんか、ふ、二人がかりで来ても、その、それは卑怯だから、い、一対一でやらない?」

「ふっ、今すぐ追い出してやる」


 アンヌさんが短刀を腰から抜いた。

 アンジェリカさんも長い鞭を腰から取って構える。


「ストップ、アンジェリカさんを追い出さないで」

「しかし、マコト様」

「またデボラさん一人になると何をするか解らないわよ、ポッティンジャー公爵家第二公邸にも諜報力が必要だわ」


 アンジェリカさんはなんだか困った顔で私を見た。


「諜報メイドはこうやって、雌雄を決するのですけど」

「あなたが居ないと、ポッティンジャー公爵家第二公邸は駄目になっちゃうわ。来年にヴィクターが参戦するまで、あなたが頼りよ」

「な、なんで、ヴィクターさまの事を!」


 あ、いかん、ゲームの情報だった。


「と、当然、聖女候補ですからー」

「……、恐るべき存在ですね、聖女候補とは……。わかりました、ここはあなた様の顔を立てて引きましょう。でも、覚えておきなさいっ、アンヌ、ダルシー、メイドの里の頃とは違うのよっ、この学園に君臨するのは私よっ!」

「無理だ」

「……無理」

「ど、どうしてよっ!!」

「マルゴットがいるから……」


 マルゴットさんの名前を聞いた瞬間、アンジェリカは目を見開き恐怖の表情を浮かべた。


「なななな、なんで、なんでマルゴットが、こ、ここはアップルトン王国、諜報メイド頂上決戦会場なのっ!!」

「なんで、あの無精メイドがウィルキンソン領じゃなく、ここに居るのかはしらないが、いるのだ」

「いるのだ……、おとなしくしていなさいアンジェリカ」

「わ、わかったわ……」


 アンジェリカさんは肩を落として、ふらふらと学園を出て行った。

 あれっと思ったが、ポッティンジャー公爵家第二公邸へ行くのか。


 しかし、マルゴットさんはそんなに凄いのかあ。

 いつも眠い眠いと言ってる気さくな、ねーちゃんだけどなあ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 何だか中々面白いだと思いますw 公爵側に諜報メイドが来たのに、助かるのかよ!?しかし諜報メイドですら事情を把握していないとは、ちょっとヤバいですね。。。 ア…
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