第1577話 カロルの告白を聞きながら抱きしめる
「私たちは宿泊地のガランの街のシンドウ教会へと向かいます、聖女さまはどういたしますか?」
ヴィヴィアンヌさまが聞いて来た。
尼さん達は隊列を組み直して整然と並んでいる。
「私はカロルとお話ししてからシンドウ教会に向かうわ、夜道になるけど大丈夫?」
「我々オルブライト騎士団が護衛いたします。ご心配無く」
イケメンの騎士団長が爽やかな笑顔で請け負ってくれた。
「ありがとう、よろしくおねがいね。カロルは後でヒューイで送って行きますよ」
「我が領主代行をよろしくお願いします、聖女マコトさま」
巡礼団と騎士団はホールから整然と退出していく。
半分の騎士は残って、この領城を制圧するようだ。
「カロルはどこかな、アンヌさん」
「こちらです」
私はヒューイを引いてアンヌさんの後を付いていった。
彼女は重厚な扉の部屋に私を案内してくれた。
扉を開けるとカロルがコマネズミのようにくるくる動いて書類を収納袋に放り込んでいた。
「あ、マコト、ちょっとまってね、もう少しで書類の押収が終わるから」
「ゆっくりやって、巡礼団の護衛に騎士団を貸してくれてありがとうね」
「いいのよ」
ひさびさのカロルは私の目をみてふんわりと笑った。
ああ、なんだか、カロルだなあ。
しばらくするとテーブルの上の書類は無くなり、彼女はこちらを向いた。
アンヌさんが無音で頭を下げて、消えた。
やべえ、怒られるか?
正座か、正座するべきか?
「どうして、マコトがこんな所にいるの?」
「えー、カロルがファルンガルドに入れてくれないので、徒歩でこっそり忍び込もうと巡礼団に混ざって王都から歩いてきました」
「……、は?」
「だって、入れてくれないんだもん」
「蒼穹の覇者号でアイアンリンド城まで来たんじゃ無いの?」
「せっかくだから、王都から二週間かけて歩いてきたよ」
「そ、そう、凄いわね」
楽しい旅だったけどね、色々な思い出が出来たよ。
「歩きの旅は、まあ、くっきりと風景が刻み混まれて良いね、来年はコリンナちゃんとカロルと三人で歩かない?」
「コリンナが過労で死んじゃうわよ」
カロルはふふふと笑った。
「どうしてもカロルがファルンガルドに私を呼びたくないなら、蒼穹の覇者号を呼んで王都に帰るよ」
「……」
カロルは口をつぐんだ。
視線は外を見ている。
あっちがオルブライト領の方向なのかな。
「どうしてもマコトをファルンガルドに呼びたくなかったのはね……」
「うん」
「私は悪漢にさらわれて陵辱されたあと、監禁された監獄の鎖でチェーンゴーレムを作って逃げ出したのよ。その後ね……」
「うん」
そうか、過去の辛い記憶関係なのか。
チェーン君はそんな前からのシモベなんだな。
「私を罠にはめた、叔母と従姉妹をね、絞首刑にした後、騎士団と一緒に領内の売春業者たちを逮捕して大量に処刑したのよ」
「あっ……」
思ったよりヘビーな話だった。
カロルは辛そうに笑った。
「私の暗い過去をマコトに見せたくなかったのよ、私が大好きなマコトに過去の私が怒り狂って処刑をし続けた場所を見られたくなかったのよ……」
私はうつむいたカロルを抱きしめた。
カロルの肩は細かく震えていた。
「問題ないよ、カロルがどんな非道な罪を過去に重ねていても、カロルは私が大好きなカロルだよ」
カロルはほろほろと涙を流した。
「ありがとう、マコト。それとごめんなさい、あなたを信じてあげられなくて」
「いいよ、大丈夫だよ、私こそ気が付いてあげられなくてごめんね」
「ああ、マコト、大好きだわ」
カロルが抱きしめ返してきた。
ああ、そうだったんだなあ、カロルは怖かったんだ。
復讐の炎に焼かれて狂ったように暴れた過去が恥ずかしかったんだ。
あたりまえだよ、カロルを不幸な目に合わせた奴らはしかるべき報いを受けて当然なんだ。
それが、叔母でも、年若い従姉妹でもね。
もう、言葉は要らない。
取り繕い慰めの言葉とかは、もう無駄なんだ。
ただ抱きしめて、キスをした。
二人で泣きながら。
ああ、本当のカロルと出会ったような気がする。
二人で震えながら黙って抱き合った。
言葉は不要だとわかり合った。
抱き合った体と体の間に発生した熱だけが二人の絆だ。
「ファルンガルドへようこそ、マコト、私はあなたを歓迎するわ」
「うん、一晩、ガランの街のシンドウ教会に泊まって、巡礼団みんなでファルンガルドに入って、ファルンガルド大聖堂に参拝するよ」
「ええ、その後は?」
「カロルの所の領城で一泊して、蒼穹の覇者号で派閥のみんなを拾いながら王都に帰ろう」
「そうね、もうすぐ二学期だわ、コリンナにも会いたいわね」
カロルは微笑んで涙を拭った。
「まずは、オルブライト騎士団の所まで送るよ」
「ありがとう、私ね、マコトに会えない二週間、すごくさびしかったわ」
「わたしも、カロル成分がたりなかったよ」
私たちは顔を見あわせて笑い合った。
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