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第155話 対決! リンダさん対聖女派閥剣術部②

「ちょっとまったあああっ!!」


 私の制止の声に、一同姿勢を崩した。


「な、なんだよマコトっ」

「ちょと思いついた」


 私は聖女派閥剣術部の方へ歩み寄った。

 コイシちゃんに子狐丸を抜いて渡す。


「い、いいのかみょん?」

「これで聖剣四本、で……」


 コイシちゃんの耳に、リンダさんがしらない子狐丸の能力を吹き込む。


「あ、それはいいみょんねっ」

「いしし、万に一つぐらいはリンダさんを出し抜けるでしょう。がんばってね」

「わかった、ありがとうみょん、マコトしゃま」


 コイシちゃんの持っていた木刀を肩に担ぐように乗せて、私はカロルの方へ帰った。


「聖剣が四本ですか、豪華な仕合ですね」

「絶対に、俺たちはあんたに一発入れて、聖剣を持たせてもらうっ」

「その意気やよしっ、掛かってきなさいっ」


 剣術組が陣形を組んだ。

 トップにカーチス、左後ろにエルザさん、右後ろにコイシちゃん、最後尾がカトレアさんだ。

 リンダさんはニヤニヤしながら、木剣を構える。


「いくぞっ!! リンダ・クレイブルッ!!」

「応っ!!」


 カーチスは大上段に構えたまま、駈け寄りリンダさんの間合いに入る。

 先ほどとは段違いの足運びだ。

 堅さが抜けている。


 カンカンと、高速でホウズが振られ、リンダさんが木剣でそれを弾く。

 リンダさんが踏み込もうとしたところに、エルザさんがリジンで斬りかかる。

 カーチスは一歩引き、ホウズで突きを放つ。


「よしよし、良い連携だ」


 リンダさんはサメのように笑って、リジンの攻撃を弾き、ホウズの突きを柄で押さえる。


「貰ったーっ!!」


 カトレアさんが最後尾から、まっすぐ突っ込んでいき、リンダさんへエッケザックスの突きを放つ。

 ガシャンと刃が左右に割れて、白光が根元からほとばしる。

 おお、こんな初手にビームを一発撃つのか。


「攻撃のタイミングを声にださないっ!」


 リンダさんは地を這うように姿勢を低くして、ビームを避ける。


「くっ!」


 大きく回ったコイシちゃんが、子狐丸をすくい上げるように振る。

 踊るように回りリンダさんがコイシちゃんと背中合わせのように旋回し、木剣が首を刈ろうとする。

 コイシちゃんは思いきりよく前に前転してそれを防ぐ。


「まじかよー」

『一を四つ掛けたところで、三十の実力には届かぬという事だっ!』


「戦闘中に声をだすな」


 リンダさんは低い声を出すと、カーチス目がけて木剣を振る。

 エルザさんが、その斬撃をリジンで防ぐ。

 その下をくぐり抜けて地面を這うようなカトレアさんの突きが土を巻き上げながらリンダさんに迫る。


「ねじりながら突け」


 リンダさんは掌底でエッケザックスの剣の腹をかち上げてするりと避ける。

 カトレアさんはうなずきながら足を引く。


 なんだろうなあ。

 四人がかりなのに、リンダさんにぜんぜん触れてない。

 というか、どう見ても全部の攻撃が読まれている。


 これは、みんなの技量不足なんだろうね。

 技に冴えが無いから、簡単にリンダさんに読まれてしまう。

 読まれてるから、必殺の光魔法攻撃も使う決心が付かない。

 悪循環だなあ。

 というかリンダさんは反則級の強さだなあ。


『いけっ! カーチス』

「おうっ!!」


 お? いきなりカーチスの動きが変わった。

 何段か上がったような滑らかな足運び、隙の無い体の動き。


「くくくっ! これは面白い、勇者イヴォンの亡霊か!」


 リンダさんは獰猛に笑って、カーチスの剣を受けた。


「あ、なるほどっ!」

「え、急にみんな動きが良くなったよ、どうしたの、あれ?」

「聖剣の中には元の持ち主の動きの記憶が眠ってるんだ。あれらは昔の勇者の動きだよ」

「じゃあ、勝てる?」

「いやそのね、背丈も違うし、鍛え方も違うから、勇者そのままとはいかない」


 すごいな、カトレアさんも、エルザさんも、良い感じに動けている。

 勇者の動きサポートすげえ。


 だがまだ、リンダさんに四人はさばかれている。

 すこし、余裕がなくなった感じだけど、それだけだ。


「やあ、勇者三人と聖女一人に囲まれるとは、豪勢じゃあないかっ!!」


 ああもう、リンダさん嬉しそうだな。

 カトレアさんが、三段突きを放つ。

 エルザさんが、勇者の華麗な動きのまま、加速し始めた。


「ホウズ光臨!!」

『よし、たたみかけるぞ、カーチスッ!!』


 ホウズの剣身が光り輝く。

 一度でも木剣に接触すれば終わりだが、リンダさんはすり抜けるようにしてかわして、木剣を振る。

 一度でも剣身が接触すれば……。

 だが、水銀のようにするするとリンダさんは避ける。


 加速したエルザさんの切り込みがリンダさんの避けた方向から怒濤のように襲ってくる。

 高速の連続技もリンダさんの足運びを止められない。

 あまりの早さに、カーチスは介入できない。


 そのカーチスの背を蹴って、カトレアさんが空中に跳び上がり、きりもみをしながらリンダさんへ落ちながら突きを放つ。

 エルザさんは素早く半円を描くようにして、想定されるリンダさんの退路を塞ぐ。


 リンダさんはカトレアさんを見ていない。

 コイシちゃんを探している。

 大きく回ってすり足で動いていたコイシちゃんが、リンダさんへ子狐丸を振り回すように切りつける。


 ダン!!


 地面を強く蹴って、リンダさんは二クレイドも飛び退き、カトレアさんの落下突きと、コイシちゃんの斬撃をかわした。


 コイシちゃんはそのまますり足でリンダさんを追撃した。

 軽い小刀の斬撃が何発も飛ぶ。


 リンダさんが、斬撃を受けるのに、木剣を前に出した。


――今だっ、コイシちゃん!


 子狐丸が光を帯びて、木剣をすり抜けた。


――よしっ!


 と、思ったら、リンダさんは腰を回して斬撃を避けた。

 どんだけの反射神経かっ!


 だめだー、こんだけ聖剣の奥義を繰り出したのに、一発も入らないのかーっ。


「よし、私の負けです」


 リンダさんの神官服のお腹が切り裂かれ、白いお腹が出ていた。


「と、届いたみょん……」


 コイシちゃんは脱力して、地面に倒れ伏した。

 カーチスとカトレアさんも大の字になって地面に倒れた。

 エルザさんも膝を付く。


「やあ、物をすり抜ける能力とは、思いもよりませんでしたな」


 リンダさんがニコニコしながらお腹を撫でている。


「しかも刃先が皮膚に達したはずなのですが、傷がありませんよ」

「ああ、治療刀という能力で、木剣をすり抜けて、お腹に当たったんだけど、切り裂く端から治療していくので、人体には傷がのこらないのよ」

「斬れない斬撃ですか、面白いですね」


 私が使うと特定部位とか、神経だけとか、いろいろ切断出来るんだけど、属性が合ってないと治療刀しか使えないみたいだね。


「ど、どんだけ強いんだよ、リンダ師匠は」

『馬鹿め、コイシ嬢が届いたのは奇跡のような物だ、恐るべきはリンダ殿だ』

「ありがとうございましたっ、リンダ師匠っ!!」


 カーチスが立ち上がり、リンダさんに頭を下げた。


「うむ、ホウズと一緒にがんばりたまえ」


 リンダさんはニマニマしてるね。


 カトレア嬢も立ち上がり、リンダさんに頭を下げる。


「とても勉強になりました、これからも励みます、リンダ先生」

「うむ、カトレア嬢は愚鈍だが、愚鈍こそ騎士、励みたまえ」


 なんだか、すごくリンダさんは上機嫌だなあ。

 ドワーフメイドさんがリンダさんのお腹を裁縫セットで縫い合わせている。


 エルザさんが立ち上がり、リンダさんに深く深く頭を下げた。


「すばらしかったです、リンダ師」

「ああ、ありがとう、エルザ嬢も励みたまえ」

「はいっ、がんばりますっ」


 最後にリンダさんは倒れたコイシちゃんの元に行き、頭をもしゃもしゃと撫でた。


「良くやった、コイシ嬢」

「あ、ありがとうみょん、またリンダ先生に指導を付けてほしいみょん」

「ああ、いつでもきなさい」


 うーん、良かったねえ、みんな。


「すげえ、すげえなあ、聖剣の戦いも、リンダ師の動きも、こいつらのガッツも、ああ、なんだかすげえ剣を打ちてえっ」

「部長、急いで帰って、打ちましょうや」

「すげえ剣が打てそうな気がしますぜ」


 鍛冶部もなにか得る物があったようだね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 剣に使い手の動きが宿るって事はマコト専用の聖なる武器には金的が宿るってコト…!?
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