第1567話 アイアンリンド教会の晩ご飯
「日々の粮を女神に感謝します」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
アイアンリンド教会の食堂で晩ご飯だ。
宿坊のお客さんは私たちの巡礼団だけみたいね。
教会の神父さんや尼さんも別のテーブルで夕食を食べている。
リンデン司祭さんも食事を取ってるね。
メニューはチキンシチューにミートローフ、グリーンサラダに黒パンであった。
なかなかミートローフもでかい。
さすがはアイアンリンドである。
パクリ。
うまうま。
やっぱり味が良いねえ。
「チキンシチューに肉がゴロゴロ入ってるなあ」
「おいしいですわね」
そうよね。
サラダもシャクシャクして美味しいな。
そういやジョルジュは来なかったな、明日かな?
明日は西隣のハンネス伯爵領に入って、一日歩いて、領境の街で一泊、そして明後日にファルンガルドだ。
もうちょっとだな。
「おばちゃん、ハンネス伯爵領ってどんなん、山?」
「うんにゃ、わりと平たくてここらの穀倉地だで」
「おお、良いなあ、金持ち?」
「ああ、割とな、それよりも領境のガランの街が流行っていてな、良い所だよ」
「ファルンガルドよりもですの」
「ああ、まあ、オルブライト領でできねえ遊びがあるんでな」
ん? なんだろうか。
カジノでもあるのか?
カロルは博打とか好きそうじゃないしな。
ファルンガルドは悪い噂とか聞かないから都市の暗部とかは根絶して、隣領に追い出したのかもね。
私の嫁はそこらへん寛容じゃないしな。
うーん、早く会いたいなああああっ。
食事が終わり、お茶を飲みながらまったりと雑談をする。
やっぱり、ファルンガルドでは売春窟や博打場などを禁止しているので、領境ガランの街が歓楽街として流行っているらしい。
なるほどなるほど。
ありそうな話だ。
お茶を飲み終わったので食器を返却し、部屋に入ってパジャマに着替え、ベッドに潜り込んだ。
マメちゃんが飛び乗って来て毛布の中に入ってくる。
「もう、お前は暑いのじゃ」
「じゃあ、ちょうだい」
「だあめ」
マメちゃんを抱いて毛布にくるまっておやすみなさい。
すやあ……。
マメちゃんがごそごそするので目を覚ました。
鎧戸の外はまだ暗くて、深夜なのが判った。
おろ、ミラナのベッドも空だな。
マメちゃんを抱いて部屋の外に出てトイレに行く。
あんたはトイレの前で待っててね、とマメちゃんを置いて入る。
ふう。
今何時かな。
前世と違って暗くなるとやる事無いから早寝なんだよね。
たまに深夜に起きて、なんかしている人も良く見る。
こっちの世界だと、一気に全部寝るのではなくて、睡眠を二度に分ける人も多いようだ。
人種的体質なのかはしらん。
マメちゃんを連れて部屋に戻る。
途中、露台に出るドアが開いていて、ミラナが居るのが見えた。
私も出てみる。
アイアンリンドの人は早寝なのかあまり灯りは点いてないね。
「あっちだな、目的地」
「そうだね、ファルンガルドだよ」
「もうすぐ私は死ぬのかあ」
「死ぬだろうね、悔いの無いようにしなさいよ」
「アントニアさんと……、もっと一緒に居たかったな」
「仲良いわよね」
「私さ、友達って初めてなんだ。強い頃は誰も他に要らない、愛するのは自分だけで好きな事をしていれば良いと思っててさ。弱くなったからかなあ、なんか、あの子の気持ちが良くわかるんだよ。後悔とか苛立ちとかをお腹に抱えて煮詰まりそうになってるんだよ」
「そうか」
私には何としてやる事もできないなあ。
「私が居なくなったら、ちょっとでいいからアントニアさんに優しくしてあげてよ」
「……まあ、考えておくよ」
「うん」
そう言ってミラナは花のように笑った。
私は露台から戻り、ベッドに潜り込んだ。
マメちゃんも潜ってきた。
ミラナも戻って来て、パタリとドアを閉めた。
コケコッコーと鶏が鳴いた。
アクビをして起き上がると鎧戸の隙間から朝日が差し込んでいる。
ああ、良く寝た。
修道服に着替えてダルシーと共に洗濯室へと入る。
乾いた洗濯物を畳んで鞄に入れる。
ミラナとアントンもやってきて、洗濯物を取り込んで小袋に分けて運んでいるね。
食堂に入るとみなさんテーブルに着いていて、私たちも急いで座る。
「日々の粮を女神に感謝します」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
朝ご飯はマフィンみたいな丸パンに目玉焼きとハムを挟んである物と、スープにミニサラダだ。
パクリ。
うまうま。
「本日はハンネス伯爵領に入り、領都のケラミス教会で昼食をいただき、午後にガランの街のシンドウ教会で泊まります。明後日にはファルンガルドに着きます。この巡礼旅行ももう一息で目的地です。気を抜かないで歩きましょう」
ああ、もうすぐファルンガルドだなあ。
カロルに会えるね。
楽しみだなあ。
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