第1556話 峠の山賊現る
食事を終えて、ちょっと食休みである。
マメちゃんがおばちゃん修道女に可愛がられてハムとか貰ってるな。
さて、ヴィヴィアンヌさまが立ち上がったので出発である。
私とダルシーはヒューイとクリスティーナを引いて最後尾に付く。
しかし、山また山だなあ。
尾根に乗り、峠を乗り越し、谷筋を行く。
わりと交通量が減ってきて、私たち巡礼団だけが街道にいる時間が増える。
手掘りの暗いトンネルを抜けて、隣の山塊に入った。
谷筋だが、渓流がドウドウと音を立ててながれているね。
道は岩盤をくりぬいて、高めの場所に通っている。
もちろん、ガードレールどころか、柵も無いので気を付けないと五十ドランクほど下の渓流に真っ逆さまであるよ。
「ちょっと怖いね」
「落ちたら大変ですわ」
「こけるなら山側にむけてにしてね」
「こけませんわよ、失礼ねっ」
どうだかね。
まあ、落ちたらヒューイで飛んで救助するけどな。
《飛ぶか!》
(今じゃないわよ)
《残念》
というか、飛ぶには荷物を全部下ろさないとだめか。
《振り下ろす!》
やめれ。
しばらく行くと岩盤に掘られた回廊は終わった。
割と低い山の麓を渓流沿いに街道は行く。
地図を開く。
ふむふむ、カホク村までは結構あるな。
ミラナとアントンが地図をのぞき込んでいた。
「地図良いなあ、どこで売ってる?」
「本屋、しばらく売ってる街はなさそうだよ」
「そうかー」
「というか、あんたお金ないじゃん」
「うっ、あれだな、旅をしていると、色々と欲しくなるから困るな」
「そうですわね、オヤツにも困るのは悲しいですわ」
「雨具も無いし、マリーは持ってるの?」
「あるよ、もちろんだよ」
「くそう、雨が降ったら、私とアントニアさんは寒いままか」
「そうだな」
教会で貰える巡礼基本セットは、まあ、基本なので、快適に旅をしたいなら買い足さないとね。
ミラナとアントンは、おばちゃん修道女さんたちに洗濯代行の営業をしていた。
が、洗濯機があるのは明日の鉱山都市の教会のようでしょんぼりして戻って来た。
「マリー、お金を貸してくれ」
「やなこった」
「くそうくそう」
まあ、本当に雨が降ってきたら、収納袋の雨具をバルバラさんにでも渡して、巡礼団の装備だと二人に渡してもらおうかな。
今は夏だけど、山道で雨降りでずぶ濡れになると疲労凍死しかねないからね。
ちょっと二人が離れたので、ブローチに向けて話しかけてみる。
通じるかな。
「この地方、雨とか降るかな」
【今日明日は快晴です。ファルンガルドまで天気が崩れる事は無いでしょう】
「お、通じたね、ごぶさたです、エイダさん」
【お声を掛けていただいて、嬉しく思いますよ、マイマスター。この通信機は、大陸の端から端までぐらいなら通じます】
魔導通信機は優秀だなあ。
「何かあった時は呼べるね」
【二時間三十三分ほどで到着可能です】
さすがだぜ、蒼穹の覇者号。
最終手段に使おう。
覇者号に勝てる存在はそんなに居ないだろうし。
ドラゴンアダベルぐらいかな。
ポンコツ魔導戦艦もヤバイか。
「覇者号と通信ができるのですね、良いことです」
「帰りは覇者号で帰りますか」
ヴィヴィアンヌ巡礼団はファルンガルド大聖堂に参拝してから北海街道の本道を通って、一週間掛けて王都に戻るが、そこまで付き合うと、夏休みを過ぎてしまうしね。
わりとなだらかな渓流沿いの道が続く。
お、前の方が止まったな。
なんだろう。
近づいて行くと、厳つい男が二人、道を封鎖していた。
「なんだろ」
「なんでしょう、関所かしら」
「山賊だよ、まいったね」
ダルシーが、すっとバルバラさんと並んだ。
私は年少組とおばちゃんを守るかな。
無言でサーチ。
カアアアン。
お、あっちの森に六人、武装した奴がいるな。
だいたい雑魚だけど、一人だけ腕が立ちそうなやつがいるな。
「だから関所だよ、おばちゃん、一人頭金貨一枚出しな」
「金さえ貰えば、無事に通してやっからよ。尼さんを連れて喧嘩とかは出来ないだろお」
山賊どもは、げらげらと下品に笑った。
ヴィヴィアンヌさまは悪漢二人の前に臆さず立っていた。
「大神殿の巡礼団の行く手を阻むおつもりですか?」
「いや、だからさあ、金だよ、金、必要経費だろ、巡礼団としちゃあ」
「俺らも尼さんを殺したくはねえんだけどよう、山の豪族としての面子もあるしよう」
黙って、バルバラさんと、ダルシーがヴィヴィアン様を守るように前に出た。
(あたしも戦う?)
(やめとけ、障壁かけとくから、アントンを守ってやれ)
(了解~~)
「おう、なんだ、尼さん、やろうって……」
「「天誅!!」」
二人は一人ずつ、山賊をぶちかました。
「「ぐあっ!!」」
ヨシ、二人制圧。
マメちゃんがミラナとアントンの前に立って守るように唸っている。
森の奥の五人が動きだし、そして、強い一人はまだ動かない。
くそう、正体を隠したままだと戦えないのでやきもきするなあ。
とりあえず、ダルシーの前には障壁を掛ける。
バルバラさんには掛けない。
身バレが怖いからねえ。
《俺もやるか?》
(大人しくしてなさい)
《ざんねん》
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