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第150話 宝物庫で聖剣を抜くんだぜ

 さて、みんなが戻ってきたので、リンダさんを先導にして大神殿の奥に向かうぞ。

 教皇様の執務室の横を奥に向かう。

 突き当たりに、下に向かう階段があって、そこを降りていく。

 地下一階は牢獄、神殿諜報メイド本部だね。


 地下二階まで降りる。

 あたりは薄暗くてすこし寒い。

 

 地下二階から通路が一直線に伸びていた。


「倉庫?」

「はい、ワインとか、肉とかの食糧や、大神殿の管轄する教区の会計書類などが収められています」


 なるほど、左右に並んだドアの向こうに、いろいろと入っているのね。

 魔導灯が薄く廊下を照らしているが、暗いので私はライトを唱えて光球を浮かばせた。


「ありがとうございます」

「暗いからね」


 リンダさんは廊下をずんずん進んで、最奥の大きな金属の扉で止まった。


「でかい鉄の扉ね」

「アダマンタイト製の扉です」


 なんで、そんな希少金属で扉を作るのっ!

 ものすごい金額じゃない。


 リンダさんは懐から鍵を出して鍵穴に差し込んだ。

 魔法陣が扉一面に広がり、複雑に回っていく。

 ガチリと音がして、扉が開いた。


「お、おおげさなっ」

「それだけの価値の宝物が入っているのですよ。聖心教三千年の歴史の結晶です」


 大仰な言葉で紹介されたが、中に入ってみると木綿カバーが掛かってなんだか地味である。


「博物館じゃありませんのでね」


 どうやら、アンティーク家具やら、絵画、彫刻類も置いてあるようだ。

 木綿の布が外れて、教皇さまっぽい人がこんにちはしている絵もある。


 そのまま、リンダさんは、奥へと入っていく。

 しかし、棚になってる所もあって、沢山の宝物があるなあ。


 この手の宗教施設の宝物は盗賊の格好の獲物であるよ。

 五十年に一回ぐらい、盗られたー、宝物庫を破られたーと騒ぎになる。

 悪い坊さんが横流ししてたりもするね。


 そうやって、総本山から盗み出されて、どこかに行ってしまった聖剣が二三本あるそうだ。

 聖剣なんか売れるもんじゃ無いのになあ。

 馬鹿じゃないのかな。


「総本山では盗難が多かったですが、大神殿の宝物庫は一度も破られた事はございません」

「えーと、まさか壁にもアダマンタイト?」

「左様ですっ! 天井、壁、床にアダマンタイトを贅沢に敷き詰め、盗掘にも対処しておりますっ。難攻不落とは、大神殿の宝物庫の事なのですっ!!」


 どんだけお金を使ったのだ~。

 先々代の教皇は頭が悪いとしか思えないな。

 マリア様が存命中だったから、寄進が多かったのかねえ。

 呆れた重装備であるよ。


 まあ、教会がもしも攻められた時に、上層部が最終的な立てこもりをする場所でもあるんだろうね。

 廃教会のビアンカさまのお部屋と同じ物だ。


 リンダさんが奥の剣ダンスの鍵を開いた。

 中から、布に包まれた三本の剣を中央のテーブルに置いた。


「さ、聖女さま」

「私?」

「他に誰がおりましょうや、大神殿の宝物は全て聖女さまの物ですぞ」


 そんな事あるかーい。

 教会の物は教会の所有物だよ。


 私は古びた布を取り去り、三本の聖剣をテーブルに並べた。

 色々な形があるなあ。

 基本的な色は白を基調にして、ポイントに色んな色が使われている。


 私は中型の幅広の剣を手にとり、少し抜いた。


『やあやあ、こんにちは、何年ぶりだろうか、われは聖剣ホウズ、勇者イヴォ……』


 パチリ。


「なんで閉じるんですかーっ!! 聖剣ホウズですよーっ!!」

「しゃ、しゃべる剣なんか、気持ち悪いようっ!」


「なんでいなんでい、聖剣ホウズって言ったら、喋る剣で有名じゃあねえか、聖女さまなのにそんな事もしらねえのかっ」

「うるせーよ、バルトロ部長っ! 聖剣のスペックなんか知らねーよっ!!」


 インテリジェンスソードとかいう奴かー。


「はやくぬいてさしあげてください、可哀想ですよ」

「えー」


 気持ち悪いんですけどー。

 しょうが無いので、またすこし抜いた。


『な、なにをするだーっ! 聖剣として生まれていらい、われが、こんな扱いを受けたのは初めてだぞっ、聖女マコト!!』

「わ、わるい、びっくりして」

『まあ良いだろう、まだ幼い聖女のようだしな。われは寛容な聖剣なのだ』

「幼いとかぬかすな、ぶち折るぞ」

『くっ、今回の持ち主は凶暴なようだな、さあ、われに光魔力を流し込み聖別するのだ、それでわれはあなたの剣だ』

「やだけど?」


 しん、と宝物庫に沈黙が垂れ込めた。


『なぜだっ!! われは聖剣だぞっ! 誰もが手に入れようと切磋琢磨する至上の宝物ぞっ!! なにゆえっ!!』

「子狐丸持ってるし、聖なる武器を下げる腰がないというかー」

『はあ? われを下げずに、どんな武器を下げるというのだっ? 仲間のエッケザックスも、リジンも意思は持つが、喋ることは出来ないっ!! ピンチの時に助言できるわれが聖女の腰にふさわしい武器なのだっ!』


 子狐丸がリーンと涼しげな音を立てた。


『ぬ、ぬうううっ!! あなたは、蓬莱国作の光狐刀! なぜこんな所に? ビアンカ様と一緒に焼かれたとききますがっ。ぬうう、左様ですか、あなたが聖女マコトを主人に選んだということは、将来的には光狐が大小が揃うという事なのですか、なるほど。ぬうう、また百年、われはここで孤独に過ごして居なければなりませんのかーっ!! つらい、厳しい、悲しいっ、寂しいっ!!』


 なんというか、こいつ、うるせーな。

 鞘に納めるか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか、悪い子じゃなさそう……
[良い点] 作者さん、また投稿はありがとうございます! 盗難が多いのなら、大金を使って宝物庫を重装備させるのも合理だと思います。 聖女様の地位は物凄く偉いですね!? 喋れる聖剣か、凄いモノです。インテ…
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