第1502話 孤児院で発表会を見る
講堂に行くと巡礼のお客さんがいっぱいで、ぎりぎり一家で席を取れた感じだった。
壇上には孤児院発表会との幕が掛かっているね。
「本日は巡礼の皆さんを夏の王都大祭にお迎えして孤児院の子供一同とても嬉しく思っています。みなさまの御浄財で私たちはすくすく育ち、将来は善良なアップルトン市民となります。この発表会は募金していただいた皆様への感謝の気持ちです、是非お楽しみくださいませ」
今年の口上を言うのはナンシーちゃんだったね。
大体来年卒園する年長の孤児でよく出来る子が開始の口上を発表するのだ。
「しっかりしているわねえ」
「あの子はカロルのお弟子さんで、将来はファルンガルドで錬金技師となりますよ」
「おお、それは凄いね、オルブライト商会に入れば将来安泰だ」
カロルの実家は凄い製薬会社なんだよねえ。
前世の一流製薬会社規模なのであるよ。
武田武田武田~、な感じ、古いけど。
幕が開くと、孤児院の子がみな並んでスモックを着て立っていて、手に楽譜を持っていた。
「それでは、一番最初は女神様のご慈愛に感謝して御詠歌を合唱します」
大神殿楽団の人が後に居て、荘厳な御詠歌の前奏が始まった。
ああ、綺麗な歌声だなあ。
みんな一年間頑張って練習したんだなあ。
偉いぞ。
あ、アダベルも孤児じゃないけどいるな。
声が綺麗だなあ。
まあ、アダベルは大まかに言うと孤児みたいな物だからいいか。
御詠歌は終わった。
みな拍手を送った。
「いやいや、みんな上手だねえ」
「アダベルちゃんも上手になったわね」
「真面目に練習をしたんですね」
みな頬を紅潮させてペコリと頭を下げて舞台裏に降りていった。
「次はお芝居です、『聖女マリアさま』から、四天王ボウギャンを黒縄城で追い詰めた三段目の下りをやります」
また、ナンシーちゃんが出て来て、そう宣言するとペコリと頭を下げた。
マリアさまの魔王討伐の旅は幾つも盛り上がりポイントがあるんだけど、このボウギャンとの激闘も観客に喜ばれるお芝居の題材であるのだな。
するすると幕が上がると、遠くに黒い城が見えるセットが現れた。
舞台の下手から、マリアさま役の子、第三王子役の子、盗賊役の子、魔法使い役の子が現れた。
「聖女さま、あれが黒縄城ですかい、おっかねえよう」
「ヨハンは泣き言ばかりね、正義は私たちにあります、ボウギャンなにするものですか」
盗賊ヨハンはお芝居上、コメディリリーフみたいな感じで、聖女様に惚れていて、良い所を見せようとして毎回失敗するんだな。
ヒーローは第三王子で、剣の達人でよく出来た兄に気後れしておどおどしているけど、聖女さまの信頼も厚く、やるときはやる好漢だ。
魔法使いはマチルダさんと言って、クールビューティ。
後にクレイトン家に嫁ぐ、エルマーの曽祖母ちゃんだね。
四人は魔法学園で知り合って、パーティを組み、どんどん戦って魔王軍を撃退したわけさ。
「ぎゃーはっはっ、お前達が噂の聖女パーティか、お前達の首をボウギャンさまにお届けすれば、お褒め頂けるぞ」
「ジッジッ」
いきなりのゴブ蔵の腰蓑姿で、カマ吉と一緒に出て来たのでお客さんから悲鳴があがった。
そりゃ、現役の魔物さんたちだからなあ。
そうするとボウギャンはオガ太郎か。
「なんと生意気な、女神の威光を恐れぬ汚れた魔物たちめ、骸をさらし、昇天し、女神の罰を受けるがいい」
で、戦闘シーンだ。
なにげに、王子君の剣が上手いな。
リンダさんの演技指導が入ったかな。
しかし、島で時々なんかやっていたのは劇の練習かあ。
なるほどね。
「くらいなさい、聖女ビィィィム!!」
「ぐわあ、やられたー」
「ジッジィー」
ゴブ蔵とカマ吉は胸を押さえて倒れた。
マリアさまのお芝居の良い所は、最後は聖女ビームで収拾を付けることができる所だね。
何と言うか、話が早い。
黄門さまの印籠みたいなもんだよ、聖女ビーム。
しかし、聖女ビームの仕組みはどうなってるのかね。
蒼穹の覇者号の主砲とエッケザックスが聖女ビームの仕掛けを元に作られているらしいけどね。
というか、蒼穹の覇者号もエッケも聖女マリアさまより前の時代だから、光ビーム攻撃の魔法はもう出来ていたのだろうなあ。
魔力を馬鹿食いするから、マリア様でもなければ使いにくいだけでさ。
そう考えると、ビアンカ様も、マリア様も、魔力量が半端ないな。
どんだけあったのだろうか。
私も大きくなったら魔力量が増えて、ボインになれるだろうか。
うむ、胸囲は関係なさそうだが、なんか大人の聖女はみんなボインという気がするのだ、というか、ゲームの中のマコト・キンボールの胸のサイズに追いついて無い感じがするのだ。
ぐぬぬ。
聖女マリアさま、ご一行は黒縄城に攻め込み、魔王軍四天王ボウギャンを聖女ビームで倒してめでたしめでたしである。
やっぱりボウギャンはオガ太郎であったな。
実際のボウギャンもハイオーガなので、はまり役かもしれないね。
幕が下りて、みなさん大喝采である。
いやあ、良かった良かった。
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