第1500話 皆と別れてキンボール邸へ
屋台を食べ歩いてお腹もいっぱいになりました。
やっぱB級グルメにはB級の楽しさがあるね。
ワイエス領の卵料理の出店とか、ツバメ食堂のテントとかあったね、両方とも、お客さんが凄く並んでいた。
「さて、お腹もいっぱいになったし寮に帰るか。マコト、明日は夕方からか」
「午後から絵画アカデミーで、らしい、明日寮に行くからみんなで行こうよ」
「そうですわね、楽しみですわ」
「いこういこう」
私たちは王都大通りで二手に分かれた。
三人は学園へ、私はキンボール邸へと行く。
王都大祭なので、けっこうみんな浮かれているね。
お酒が入ってる人も多い。
私はヒューイに乗ってシタシタと裏通りを行く。
大神殿の方にアダベルが降りてくるのが見えた。
ホルボス村から着いたのか。
子供達も大祭を楽しんでくれ。
キンボール邸に着いたので、家令さんにヒューイの手綱をわたす。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ヒューイをお願いね」
「かしこまりました」
といってもヒューイのお世話は馬丁さんがするんだけどね。
中世は職に関わる人数が多いよなあ。
これはこれで贅沢な感じがして良いね。
「ただいまー」
「おかえりなさい、マコトちゃん」
「大祭はどうかね、盛りあがってたかい?」
「はい、王都広場は人でごった返してましたね」
「今年は守護竜さまも来たから盛りあがるでしょうね」
そういや、アダベルはなにか王都から仕事を言いつかってないのだろうか。
なにげに奴は王都から給料を貰っているから、大祭だとパレードに参加とかしてないのかな?
後で誰かに聞いてみよう。
「ひさびさにマコトちゃんが帰ってきたから、お母さん、お料理をがんばっちゃうわ」
「お養母様のお料理は美味しいので楽しみです」
「ダルシーちゃんも楽しみにしていてね」
「は、はい……」
ダルシーが姿を現して気落ちした感じに答えた。
彼女はお養母様のお料理は好きなのだが、娘扱いされるので、面はゆいらしい。
ひさびさにキンボール邸の自室に入ってくつろいだ。
「やれやれ」
ベッドでのたのたしていると、だんだんと日が暮れていく。
魔導灯のスイッチを入れて灯りを点ける。
収納袋から夏の課題を出して、せっせとやっていると、台所の方から良い匂いが漂ってきた。
お養母様のお料理美味しいんだよなあ。
「ごはんですよ~」
「はーい」
ダイニングに行くと、私の大好物ばかりが並んでいて、なんか胸があったかくなるね。
ダルシーもお料理を手伝っていたようで、エプロンをしていた。
マメちゃんが出て来て、ダルシーに煮こごりを貰って、わふわふと食べていた。
「まあ、マメちゃん、大きくなったわねえ」
「本当だ、子犬はすぐ大きくなるね」
「まだまだやんちゃで、困ってますよ」
「わんわんっ」
マメちゃんは心外だというように鳴いた。
あはは、ごめんごめん。
「「「いただきます」」」
「日々の粮を女神に感謝します」
キンボール家には、いただきますが移ったのである。
ほかほかのシチューをぱくつく。
うまーーい。
やっぱり家庭の味って感じで良いよねえ。
お養母様のお料理。
ダルシーも姉妹のように並んで食べている。
「ダルシーちゃんはいつもどこで何を食べているの?」
「ええと、早朝に食堂でポリッジを頂き、日中はメイド丸です。夜の食堂の最後の時間で下級貴族食を食べてますよ」
「ああ、そうだったの、私と、だいたい同じ物を食べているんだ」
「はい、マコト様。食堂が美味しくなって大助かりだと、メイド仲間たちと噂しています」
「今年の食堂は当たりだったのね、私の頃は酷かったわねえ」
「僕の頃はまあまあだったよ」
お養父様も、お養母様も魔法学園の卒業生なんだよね。
というか、まあ、王都の王府役人とか、貴族の高官や官僚は、だいたい魔法学園卒だけどねえ。
ダルシーと並んで食べるのは楽しい。
バカンス中も、ずっと一緒だったのに、あまり顔を見なかったしなあ。
いや、毎日見てたけどさ。
「夏休みの後半はどうするんだね」
「教会の仕事で、巡礼の旅に同行しますよ」
「ほほう、歩いてかね」
「主に歩きですね」
《おれもいくぜ》
(つれていくけど、馬に変装ね)
《うまに!》
「危ないわねえ、巡礼の旅って危険なんでしょう?」
「私が護衛しますから大丈夫です」
「まあ、お願いねダルシーちゃん」
「はい、おかあさま」
ダルシーは力強く宣言した。
彼女も変装だなあ。
「巡礼は、どれくらいの期間かね?」
「二週間ぐらいですよ。帰って来たら、夏はだいたい終わりですね。帰省に行っていた派閥員を蒼穹の覇者号で迎えに行って学校再開です」
「マコトちゃんの夏は楽しかったかしら?」
「ええ、これまでに無く、やっぱりお友達が増えると良いですね」
「まあ、いいわね」
お養母様はふんわりと笑った。
私は、この笑顔が好きなんだよなあ。
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