第1499話 王都大祭で食べ歩き
巨匠に別れを告げて礼拝堂から外に出た。
薄暗い礼拝堂から東回廊に出ると光が差し込んで天国みたいな雰囲気になるんだよね。
よく出来た設計だな。
「おや、マコトさま、お久しぶりです」
「やあ、主よ、元気そうだな」
「ゴブ蔵、オガ太郎、久しぶりね、これ、お土産、食べなさい」
私は従魔の二人に、バッファローの干し肉をどさどさと渡した。
「これはありがとうございます、こちらの大陸の物ではありませんな」
「ザニア大陸の都市で買ったんだ」
「暗黒大陸までバカンスに行ったのか、すごいな主は」
「ありがたく頂きます」
従魔の二人と立ち話をしていたら、信者の人が笑ってゴブ蔵とオガ太郎に頭を下げて去っていく。
意外に親しまれているんだな。
うんうん、良いね。
従魔たちとも別れ、私たちは大階段を下りて大神殿を後にした。
アンドレとルイゾンが頭を下げて見送ってくれた。
「さてと、そろそろお昼だからどうしようか」
「大祭だったら決まっている、中央広場で屋台をハシゴだ」
「それだよなあ」
「王都っ子は大祭でそういう事をするのね」
「コリンヌさんはベロナ先輩の領で育ったの?」
「父も母もベントゥラ領の館の使用人ですからね、ベロナさまが魔導学園に入学したので、一家で移住してきたんですよう」
なるほどなあ。
「私は王都っ子ですから、当然、屋台のハシゴですわあ」
マリリンは胸を張った。
「よし、みんなで屋台だ」
《おう》
ヒューイも返事をした。
「懐かしいなあ、去年までは母ちゃんに銀貨を貰って三日間うろうろしていたよ」
コリンナちゃんがしみじみと言った。
「私は金貨だったな」
「くそう聖女さまめ」
まあ、教会からお浄財がたんまり出ていたからね。
「私も銀貨でしたわね。お金を使い果たさないように、三日間、美味しい物を計算して買うのは楽しゅうございました」
「そうだよなあ、金貨は邪道だ」
「うるせい、こちとら孤児に奢らないといけないんだよっ」
「「「ああっ」」」
三人はなるほどという顔をした。
なにしろ私は慈愛の聖女さまだからな。
うんうん。
たわいの無い事を話しながらぷらぷら歩いていると、中央広場に着いた。
今年も凄い人出で、屋台も繁盛しているなあ。
「まずは、何を食べよう」
「初手は串焼きだな」
「そうですわね、屋台によって味と大きさが違うので、選定がむずかしゅうございますが、私が秘蔵の屋台にご案内いたしますわ」
「さすが王都っ子」
「さすが王都っ子」
「そんなに味変わる?」
「はい、ぼったくりから優良店までいろいろですわ。ぼったくり店は何の肉なのか解ったものじゃあありませんのよ」
私たちはマリリンの案内で広場の真ん中辺りの屋台に行った。
結構並んでるなあ。
意外に安くて、お肉が大きいね。
さすがはマリリン推薦のお店だ。
「いただきまーす」
「「「日々の粮を女神に感謝します」」」
王都っ子の得意技、歩き食いだ。
パクパク。
「おお、これは美味しい、安っぽい味なんだけど、妙に調和していて、面白い味だ」
「さすがはマリリンオススメのお店だ」
《うまいうまい》
「ああ、ヒューイやめろー」
ヒューイがパクリと私の肉串を食べおった。
マメちゃんも出て来て、私のスネをこすっておねだりをしているな。
「マメちゃんには私がやろう」
「わんわんっ」
マメちゃんはコリンナちゃんにお肉を貰って大喜びだ。
「喉が渇いたからジューススタンドで一杯やろう」
「そうしようそうしよう」
王都大祭はワイワイとしていて楽しいね。
沢山の人混みの中をすり抜けるようにして、食べ歩きをする。
売ってる軽食は肉串、調理パン、ミートパイ、焼き菓子に、砂糖菓子、色々な屋台で色々なお料理を売っている。
おっちゃん用に飲み屋のスタンドも出て、エールを売っているね。
肉串をつまみによく冷えたエールは美味そうだ。
近くの舞台では、郷土音楽が奏でられて気分が高揚するね。
舞台前では郷土衣装に身を包んだ男女が音楽に合わせて踊りを踊っている。
なかなか楽しそうだなあ。
「あら、聖女さま」
「あら、タビサさん、ジュリーくん、こんにちわ」
「こんにちわーっ」
「ジュリー君、郷土衣装が良く似合っているわよ」
「ありがとーっ」
どうやら、東部地方の踊りの催しのようで、ガスコインさんとか、オレーリアさんも綺麗な郷土衣装を着て踊っていた。
私が手を振ると、踊りながら笑顔で手を振り返してくれた。
やあ、ジュリー君もダンスができるぐらい元気になって何よりだなあ。
タビサさんとジュリーくんは踊りの輪に戻って楽しそうにおどっていた。
「郷土舞踊はいいねえ」
「素敵ですわあ」
「東部地方の衣装いいなあ」
同じアップルトンと言っても、ちょっと前までは別の国で別の文化を持った地方が沢山あるわけで、こういうお祭りでアイデンティティを確かめるのは良いねえ。
「東部は特に仲間意識が強いんだよねえ」
「割と頑固なんだよな」
「そうそうーっ」
その後も私たちは満腹するまで屋台を食べ歩いた。
いやあ、楽しいねえ。
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