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第1498話 大神殿で良い知らせを聞く

 キンボール家から大神殿までは目と鼻の先の距離だ。

 ヒューイの手綱を引きながら、みんなとおしゃべりしながら歩く。

 夏真っ盛りだから日向は暑いね。

 アダベルかエルマーは居ないかなあ。

 あの二人は夏場に恋しくなるね、冷房的な意味で。


 大神殿の正面階段では、アンドレとルイゾンが掃き掃除をしていた。


「聖女さん、こんちゃーす」

「毎日暑いですよねえ」

「暑いねえ」


 階段をとことこ上って聖者回廊を行く。

 ここは結構風が通るし、日陰なので涼しいな。


 カマ吉が回廊でうろうろしているな。


「カマ吉、久しぶりー」

「ヂッヂッ」

「そうか、元気だったか、ゴブ蔵とオガ太郎はどっかで仕事か」

「ヂッヂッ」


 そうらしい、奥でなんかしているそうだ。


「カマ吉の言う事が解るんだな」

「従魔の言う事は解るんだよ、『ナ』」

「そうかそうか」


 カマ吉のスベスベの背中を撫でた。


「これはお土産だ、たべなさい」

「ヂッヂッ」


 カマ吉にガフサの街で買って来たバッファローの干し肉を上げた。

 なにげに美味いから食べたまえ。


 回廊の奥にある女神像の前でお参りする。


――みんなが体調を崩さず、夏を過ごしますように。


 もちろんよ、とか女神さまが言ってる気がするが、気のせいであろう。


 さて、リンダさんはどこだ、と、キョロキョロしていたら、当の本人が階段を駆け下りてきおった。


「マコト様、お久しぶりです」

「たった二週間のバカンスなのに」

「二週間が永遠のように感じましたよ」

「はいこれ、お土産よ」


 私はカタロニア公国のスパークリングワインを渡した。

 メリッサさんが褒めていた銘柄だから美味しいであろう。


「わあ、ありがとうございます、美味しい銘柄のワインだ、これは嬉しいですね」

「いつもお世話になっているからね」

「いえいえ、たいした事はしておりませんよ、マコトさま」


 そう言ってリンダさんはにかんで笑った。

 こうして見るとバーサーク癖のある暴れん坊には見えないのだがなあ。


 孤児院の方からドドドとちびっ子達とアダベルが駆けてきた。


「ああ、マコトマコト、巨匠が探していたぞ」

「あれ、なんだろう」

「コンテストですわよ、マコトさま」

「あの絵すごかったからねえ」


 そうなんだろうか。


「マルモッタン巨匠はどこよ」

「礼拝堂の天井絵を直してるよ」


 礼拝堂か、行って見るか。


「アダベルはどうするの?」

「今日か? 今日はお祭りだから、ホルボス村で、トールとティルダと三人を連れてきて、みんなで広場で楽しむ」

「ああ、それは良いわね」

「じゃあ、行ってくるよ」


 どうやら空荷で行って、ホルボス山で子供達を乗せて、戻って来てみんなで楽しむようだ。

 いいねえ。


「五人は孤児院でまたお泊まりできるように、女官さんに頼んだんだ」

「ちゃんと準備できてえらいな」

「おうよ、コリンナ、私は偉い、じゃあな」


 そう言ってアダベルは練兵場に駆け下りて、テントの中で竜化して背中に籠を背負って、空に舞い上がった。


 すっかり、アダベルは孤児院の子や、ホルボス山の子供達と仲良くなったなあ。

 だんだんと性格も円くなってきている感じがするね。

 良い事だ。


 さて、マルモッタン師の所にいかねば。


「ヒューイはここで待ってて」

《わかった》


 ヒューイの手綱を馬繋ぎ柵につないだ。


 カマ吉はどこかに行ってしまった。

 孤児達も孤児院に戻ったね。


 私たちは礼拝堂に向かった。


 マルモッタン師は脚立に立って天井絵の補修をしていた。

 お弟子さんが絵の具を調合とかして手伝っているね。

 というか、天井に描くから背中が大変そうだなあ。


 フレスコ画というのは、時間で結構傷むから時々補修しないと色が抜けてくすんだ感じになっちゃうのよね。

 礼拝堂は蝋燭とかを使うから特にね。


「おお、おおっ、聖女さん、ずっと探してたんだ、居ないと思ったらバカンスだっていうじゃないか」

「ごめんなさいね、先に言っておけばよかったわね」

「あんたの絵、特選に入選だ、明日、表彰式があって、賞金授与と立食パーティがあるぞ」

「わ、本当? 凄い」


 おお、まさか入選して賞金出るとは思わなかったな。

 なんだか、嬉しいぞ。


「いやあ、本当は大賞をやりたかったんだけどさ、アカデミーの作家なんか頭が固いからよ、絵の本質とかわからねえのよ」


 そう言ってマルモッタン師はカカと笑った。


「素敵ですわ、私も見に行きますわ」

「王立絵画アカデミーで表彰式はあるぜ、暇な奴は来い来い、俺の名前で席を取ってやるからよ」

「ありがとうございます、マルモッタン師」

「明日はパーティか、制服で良いかな」

「コリンナさまもドレスを作ったですのに」

「マコトの付き添いだからドレスはなあ」

「みんなも連れて行っては駄目?」

「さすがにライオンと魔導山羊とヘビはねえ」

《《《しゅーん》》》


 カルテットの連中の沈んだ気持ちが伝わってきて、おもわず笑ってしまった。

 あはは、ごめんごめん。

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― 新着の感想 ―
「従魔だからなあ」(ヒューイ号)とか言ってそうな
カマ吉達もたぶん来れないし?でもアダベルは来そう、まあ従魔じゃないと言ってるしな。
これはマコトの名前で出してたら忖度して優勝してたな。 そういえばセンセーショナルなイベントだったけど誰も女神降臨を描いてないんだろうか…?
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