第1497話 キンボール家でくつろぐ
マリリンはカタロニアで買ったスパークリングワインと、ガフサの街で買った怪しい木彫りの置物をマッチョ父さんに渡した。
「スパークリングワインは親友のワインの里の子と選んだからきっと美味しいわよ」
「この奇っ怪な人形は何か?」
「ザニア大陸で買ってきた、幸運のお人形よ、家に飾っておくと良いわよ」
マッチョの三人は気味悪そうに木彫りの置物を見た。
うん、あれだ、呪われアイテムっぽいよな。
私は収納袋から聖水が入った水差しを出して、呪いの置物に垂らして聖別した。
「これで、呪いとかはだいじょう……」
置物は、うぎょーと悲鳴を上げながら、ぐねぐね身もだえして苦しんでいる。
「「「……」」」
「大神殿に奉納しましょう」
「よろしくおねがいします、聖女さま。マリリンのお土産の気持ちだけいただくよ」
「まあ、幸運のお人形だという触れ込みだったのに、騙されたわ」
薄気味が悪いので障壁で置物を囲って時間を停止した。
これでどんな呪いも大丈夫。
なので、収納袋に放り込んだ。
大神殿の解呪課の坊さんに渡しておこう。
「マリリンは大祭の間は実家に居ないか? トレーニングがはかどるぞ」
「今日はみなさんの実家に行くので、後でね」
「解った、今日はご馳走を用意しておくぞ」
「うむ」
「うむ」
ゴーゴリー家は暑苦しいな。
「さて、キンボール家に行きますか」
「派閥の皆様のご実家に行くと色々解る感じがして良いですわね」
「メリッサさんちのお城とか凄かったね」
「アイアンリンド城も凄うございましたわ」
「色々見ると楽しいな、ヒルダさんのマーラー家とかはやっぱやばそうなのだろうか」
「私も行ったことないからなあ」
私は、コリンナちゃんの疑問にあいまいに答えた。
マーラー家のタウンハウスは割と大きいんだが、諜報員が沢山居そうで遊びに行くのがはばかられるね。
「聖女派閥は色々な階層の生徒達が普通に平等に接しているからいいよねえ、なんか開放的」
「それはありますわね、コリンヌさま。普通の派閥は身分の上下がとてもうるさくてなかなか窮屈でしたわ」
マリリンはポッティンジャー派閥だったからねえ。
あそこは身分差にうるさそうであるよ。
などと話ながら歩いて行くとキンボール家である。
ちなみに私が手綱を引いて歩き、コリンナちゃんはヒューイの上、あとの二人は徒歩である。
キンボール家に入ると家令さんがお出迎えしてくれて、ヒューイの手綱を取って厩舎につれて行ってくれた。
「あらあら、マコトちゃん、お帰りなさい。まあ、真っ黒になったわね、バカンスは楽しかった?」
「はい、お養母様、とても楽しかったですよ」
「それは良かったわ、さあ、入って入って、みなさまもどうぞどうぞ」
「お邪魔します」
「ありがとうございます」
「こんにちわあ」
みんなでキンボール邸に上がり込んだ。
書斎にいたお養父様も出てきて、やあやあと歓迎してくれた。
私はバカンス中にあったことをお茶をのみながら、かいつまんで報告した。
「そうかね、ザニアの光の使者と会ったのか、それは良かったね」
「はい、なかなか魅力的な青年でしたよ」
「まあ、暗黒大陸やカタロニア、学術都市まで見てきたのね、大冒険だわ」
「飛空艇があると行動範囲が広がりますね」
「気軽に距離を行けると、世界はそんなに狭くなるのだねえ、先史古代文明の頃の人間はそうやって旅をしていたのだろうね」
「そう思います、あと飛空艇の先生方が学術都市からくっついてきましたので、王都にも来るかも知れません、その時にはご接待おねがいできませんか」
「ああ、良いとも、飛空艇の世界的権威の先生じゃないか、彼らは今はホルボス基地か、早く会って話したいね」
お養父様は歴史学者だから好奇心が旺盛だよなあ。
私は収納袋から、十号の収納鞄を二つ出して両親に渡した。
「これ、オルゲートで獲ってきた収納袋です。大きさは十号ですからそんなには大きく無いですが、あると便利ですよ」
「これはこれは、とても洒落た鞄だね」
「あら、私も貰えるの、嬉しいわ、マコトちゃん」
「鞄はマーラー家のヒルダさんが作ってくれました。良い出来でしょ」
「気に入ったよ、十号だと大きめの鞄ぐらいのサイズか」
「晩ご飯のお買い物に使いたいわね」
お養母様の収納袋の使い方は地に足がついている感じでいいね。
「ありがとう、素晴らしいお土産だ」
「収納袋が手に入るとは夢にも思ってなかったわ」
王都民にとって収納袋は高価なお宝なんだよね。
あると生活がすごく便利になるからね。
私は両親に別れを告げて、キンボール家から出ようとした。
「これから大神殿なの?」
「そうですね、リンダさんにもお土産を渡さないと」
「きっとよろこぶわ、リンダさん」
まあ、そうだろうな。
「大祭の間はこちらに帰ってこない? お祭りの間、マコトちゃんと生活したいわ」
「そうですね、特に学園に用事はないので、そうしますか」
「マコトちゃんの好きな物を作って待っているわ。また夕方に帰ってらっしゃいな」
「はい、お養母様」
私たちはヒューイの手綱を家令さんから受け取ってキンボール邸を後にした。
さて、次は大神殿だ。
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