第1490話 邪獣山で友鳴り草摘み
さて、エルマーの操縦でやってきました邪獣山。
「友鳴り草の群生地はどこ?」
【標高の高い場所となります】
エイダさんがモインと音を立てて山の精細地図を出した。
【ビアンカさまの時代の植生となりますが、こう生えておりました】
「行ってみよう……」
まあ、人も通わぬ深山、邪獣付きだから群生地が荒らされて無くなっているという事は無いでしょう。
頂上近くで空から見ると、お花畑のように友鳴り草が咲き誇っていた。
「うわあ、高級薬草があんなに!」
「いや、カロルさん、最初は綺麗ではないかと」
「そ、そうだけど、あの花は高いのよ」
まったく私の嫁はCEOで困るぜ。
ちょっと離れた平たい岩場に蒼穹の覇者号を着陸させた。
というか山だから足場が悪いな。
子供が崖からおっこちるぞ。
「うおー、友鳴り草~~!!」
岩場をドドドと走って行く馬鹿ドラゴンもいるしな。
「危ないからちょっとまってね」
「「「「わかったー」」」」
足場の悪い所は障壁を詰めてなるべく平らに歩きやすくして、崖とかあぶない所の前には障壁で柵を作るぞ、腰ぐらいの高さの半透明な柵だ。
よしよし。
道を作りながらみんなで友鳴り草のお花畑まで行くとアダベルが山ほど摘んでいた。
「ああもう、ちゃんと摘んでね」
「そ、そうなのか、カロル」
アダベルは友鳴り草をカロルに差し出した。
カロルは片方を持った。
リンリンリン。
鈴を鳴らすような音が鳴った。
「鳴ったぞ、カロルとは仲良しだ!」
「そうね、こんな音で鳴るんだ」
「カロルも初めてなの?」
「ええ、調合するのは干した物だから」
現物は初めてか。
アダベルは同じ草を私に向けてきた。
一度なった草でも良いのか?
端っこを持った。
リンリンリン。
「おお、マコトとも鳴った、鳴った、これは楽しい」
「いいねえ」
「ぎゃあ、アダちゃん、次は私、私」
「ティルダか、それい」
リンリンリン。
「鳴った鳴ったあ!! ワーイワーイ!!」
カロルがしゃがんで友鳴り草を採り始めた。
「アダベルが採った分でみんな鳴らしてね、貴重な薬草だから、無茶苦茶に採らないでね」
「はあい、カロリーヌ先生」
「ナンシーは来なさい、採取の仕方と保存の仕方を教えるわ」
「はい、先生っ」
というかさあ、というか。
「私とならそうよ、カロル」
「え、あ、うん、そうね」
カロルははにかみながら今採った友鳴り草をこちらに向けた。
片方の葉っぱを持つ。
りんりんりんりん。
わあ、鳴ったなあ。
思いの他、大きく鳴ったような気がしますね。
うん。
「ぎゃあ、殿と鳴ったぞ、やったあ」
「わっちも鳴ったみょんな、これで妾は確定みょんな」
あっちこっちで、みんながリンリン鳴らして楽しんでいた。
「というか、これ、友だちで無くても鳴る?」
カロルはふふふと笑って口に人差し指を当てた。
ああ、そうなのね、まあ、うん、黙っとこう。
「ああでも、このお花畑、飛空艇リンスの匂いがしますわね」
「ああ、そうですわねえ、これが原料なんですわ」
「一杯摘んで飛空艇アメニティを自作しようよ」
「……、いや、ガドラガ基地に一杯あったじゃない」
「それはそうだが」
「元々、アメニティにして良い薬草じゃないのよ、まったく、ビアンカ様ったら」
あの人、頭がおかしいからな。
山の岩場から、巨大な獣の姿がゆらゆらと揺れながらこちらへと近づいてきていた。
「むむっ」
「敵か! あれが邪獣かっ!!」
大きさは大体三クレイドぐらいのゴリラみたいな体型であった。
そして肌が金属で目がライトだった。
「もしやとは思ったが、ロボだったか」
『ロボ言うな、こっちの世界ではゴーレムだ、マシンゴーレムだな』
「しかも、自我があって事情をしってそうだ、やだやだ」
『良いじゃ無いか、ジャックポッド戦では力になるぞ』
ちくしょう、ビアンカさまにはめられた感じだな。
友鳴り草が群生している山ならカロルは来たがるだろうしな。
しかし、ポセイドンなんかいらん。
「先史時代のゴーレムなの」
『そうだ、魔導ゴーレムだ、強いぞ』
派閥員がポセイドンを見て、どうすんだこれ、という感じで私を見ている。
「どうする、倒すか、マコト」
「いやあ」
別に敵対してないしなあ。
「魔導頭脳が生きているのか……」
『そうだとも、活動休止状態が長かったから、知性もおかしくはなって居ない。魔導ゴーレム二千三百五十六号だ』
「通称は?」
『ビアンカは、マコトなら私の名を当てられると言った。当ててみろ』
「ポセイドン」
『当たりだ』
まったく、制作者に転生者がいるな。
くそう、邪魔くせえ。
先史ロボなんかいらねえっ。
「「「「うおおおおっ」」」」
あ、学者たちがポセイドンを見つけおった。
奇声を上げて走り寄ってきたぞ。
「ゴーレム、ゴーレム、先史時代の貴重なゴーレム!!」
「か、稼働して、思考して動いているっ!!」
「なんという事だ、素晴らしい研究材料かあ!!」
ポセイドンの廻りに学者さんが取り付きおった。
私はため息を吐いた。
『ガドラガ基地の管制とかもできるぞ』
「「「「うおおおおおっ!!」」」」
学者さんた感動の余り吠えだした。
「採用」
「いいのか、マコト」
基地の管理ロボは必要なのだ、コリンナちゃん。
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