第1487話 撤収作業をみんなで行う
みんなに収納袋が行き渡り始めているので撤収作業がラクチンである。
「本当に便利ですわあ」
「もう無い時代にもどれませんわあ」
お洒落組にも好評だね。
彼女達はヒルダさん謹製の可愛らしいポシェット型収納袋、教会マーク入りである。
下級貴族ということでメリッサさんが悪漢上流貴族に収納袋をカツアゲされそうになったら、リンダさんを派遣して教会の物なので、と暴力で懲らしめたあと回収してくれるサービス付きなわけだよ。
何しろ収納袋は高いからね。
お洒落組に渡した十五号あたりで三百万ドランクとかするから。
基本的には持っている事を知られない、人前で使わないですな。
黙っていれば只の鞄とか只の袋なんで。
カロルが暇な時間を使って頑張って作っているので、収納袋は派閥員の半分ぐらいが持っているね。
二学期までには揃えちゃうわとカロルは張り切っているよ。
派閥員と関係者四十人が生活した浜辺のトイレは、下水道局のお嬢さんがアバカスでちゃちゃっと計算したので、大分余裕があるかんじ。
障壁で微生物は入れるようにして六面体に固めてその上に土をかける。
三ヶ月ほどしたら障壁は壊れるように時限式にしてみた。
前世の科学番組で、空気を圧縮すると火が付く、というのを思いだして、汚物を障壁で囲って圧縮焼却、というのがやりたかったのだが、なにせ、障壁は強化硝子ぐらいの強度しかない。
圧縮中にバリンと割れて辺り中に散乱すると大惨事なので、やめておいた。
厨房テントも畳まれ、バーベキューコンロも海でザブザブ洗われた、後で真水で洗い直して油をささないと錆がやばそうね。
カロルとコリンナちゃんとコリンヌさんでテントを畳み、デッキチェアを片付け、タオルケットや枕をダルシーに渡す。
いやあ、強者共が夢の後だね。
更地になった浜辺で感慨深くなったり。
だんだん辺りが暗くなってきたので光球を打ち上げて浜辺を照らす。
撤収作業で事故があると厭だからね。
子供達もテントを畳んだり、キャンプベットをバラしたりしている。
「うーん、後片付けしてると、なんだか寂しいな、マコト」
「また来年来ましょうよ」
「そうだな、来年はアイス液をもっと持って来て、あとスイカ割りを毎日しよう」
アダベルの野望はなんだか小さくて笑ってしまった。
「しかし、楽しかった、ありがとうマコト」
「どういたしまして」
マメちゃんが影から出て来てひょこひょこ私の後を付いてまわるね。
可愛いけど邪魔じゃ。
大きい荷物はカロルが収納袋に入れて、蒼穹の覇者号の後部ハッチの中にどさどさと出した。
この大忙しの時に、ヒューイやらライ一郎やらがうろうろして大層邪魔である。
「ヒューイは甲板、コリンヌカルテットはメイン操縦室へ行け、あ、コリンヌさんは普通に働け」
《わかった》
「がうがう」
「めえめえ」
「しゃーしゃー」
「了解ですっ」
こいつらがいなければ、ゴブ蔵やカマ吉、オガ太郎をバカンスにつれてきたのだが、従魔が多すぎていかんのだ。
奴らへの埋め合わせは、また今度だな。
なんだかんだ頑張って、日が沈むぐらいの頃には元の浜辺に復旧させた。
「おー、綺麗にしてくれたな、ありがとう。私らはヨットで帰省するから、また二学期にな。ガキ共は、まあ、また来年来いよ」
「「「「シルビア師匠、ありがとうございましたっ」」」」
釣り天狗組が一斉に頭を下げた。
「あはは、大げさだお前ら」
「また来年、ヨットに乗りに来ます」
「楽しかったです、ドリン君も元気でね」
「おうよ、またな、子供ども」
シルビアさんはドリン君と一緒にヨットに乗って、本島の方へ帰っていった。
いやあ、子供好きで良い人だったなあ。
みんなぞろぞろと蒼穹の覇者号に乗り込む。
この浜に来た時より、みんなぐっと日焼けして黒くなったなあ。
夏の子供、ってえ感じでいいぞいいぞ。
さて、今日の操縦は艇長たる私である。
うひひ。
各種計器をチェック。
「エイダさん、飛行目標、アップルビー領都」
【了解しました】
ボヨンと音がしてマップに航路図が描かれた。
大体、三十分という所だね。
「あ、夜ではカフェでケーキが食べられない」
「おほほ、カフェでケーキを買って積み込みますから、道中お茶を飲みながら食べればよろしいのよ、アダベルさま」
「おお、ユリーシャ、それだ!」
アダベルは食い意地が張っているなあ。
結構長い夜間飛行になるから、ケーキを食べながらの道中はいいな。
蒼穹の覇者号を離陸させて、高空へと駆け上がらせる。
夕暮れの空の上はまだ明るいね。
すいっと飛んでアップルビー領都へと着陸である。
「ありがとうございました、とても素晴らしいバカンスでしたわ、領袖とカロリーヌさまの色々な初々しい反応を見られて、お腹いっぱいでございます」
「んもう、観察してないでよ」
「おほほ、では二学期にお会いいたしましょう
ゆりゆり先輩はミーシャさんと一緒に船を下りて行った。
ミーシャさんがカフェに駆け込んで、大きなケーキの包みを運んで来た、ダルシーとアンヌさんが手伝って搬入し、ミーシャさんは手を振って去っていった。
「ケーキケーキ」
「お茶を入れてもらってからね」
「私はホールでもいいぞ」
「私たちが食べれないのでホールでは上げません」
「くそう」
蒼穹の覇者号は離陸した。
次は、王都で王家主従を下ろし、ブロウライトのリチャードさんとモンチーを積んでアンドレア領をめざすのだ。
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