第1486話 海収めにバッサバッサ泳ぐ
トローリングのヨットが出航していく。
女の子達は水着に着替えて波打ち際で遊んでいるね。
ドリン君が静かに座って穏やかな表情で子供達を見守っている。
「人間の子供は可愛い物だな」
「ド、ドラゴンもそう、思いますか」
「甲蟲騎士もそうなのか」
ガラリアさんとドリン君という異色の組み合わせが子供達を監視してるね。
水遊びは不意の危険があるからちゃんと見ていないとね。
いくら私に治癒魔法があるといっても、死亡しては蘇生出来ないから気を付けないと。
私も最後なのできっちり海遊びである。
はー、バカンスが終わっちゃうねえ。
でも、夏休みはまだまだ中盤、王都大祭で楽しむぞ。
「あ、帰省する人達は王都大祭にいけないのか」
「それはまあそうね」
「ああ、それでは我が君には我が剣が鍛冶祭でグランプリを取る所を見ていただけませんのか」
「ご、ごめんなさいね、オスカー、夏休みの後に見せてもらうわ」
「うう、残念です、聖女さまは来ていただけますか」
「まあ、行くけどー、アダベルと一緒に行くよ」
オスカーはカロルにメロメロで、なんだか気に入らないが、まあ派閥員だし、鍛冶祭には行ってみたいね。
来年は王都大祭が終わってから帰省するようにスケジュールを調整しないと駄目ね。
なんだかもったい無い。
「カロルの絵の結果発表も王都大祭なんだけど」
「わあ、ごめんねマコト」
「まあ、夏休み後に結果だけ教えるよ、邸宅のダイニングにも掛けるし」
ダルシーが現れた。
「マコトさま、そろそろ飛空艇基地から私の絵も引き上げてはいかがかと」
「ああ、そうだね、貸しっぱなしだった。アレも引き上げて邸宅に飾ろう」
夏休み前はバタバタと忙しかったから、すっかり忘れていたなあ。
いかんいかん。
海に入る前に準備体操をしてたら、みんなが真似をしてきた。
わりと楽しいのよね、体操。
ラジオ体操準拠なんだけど、あの曲がこっちには無いからなあ。
みんなに障壁水中眼鏡を作ってあげて、さあ、海水浴である。
ザッパザッパ泳ぐ、ああ、やっぱり海は良いなあ。
楽しいなあ。
マメちゃんも出て来て一緒に泳ぐ。
最近は大きくなって結構早く泳げるようになったね。
偉い偉い。
冬頃にはでっかくなりそうだなあ。
泳いでいるとヒューイがやってきて遊んでくれと言ってくる。
しょうが無いので背中に乗って湾の中をザブザブ泳がせる。
「ヒューイも大分泳ぐのが上手くなったね」
《海は初めてだったが、たのしい》
そうかそうか。
マメちゃんも背中に乗って踏ん張っているな。
「マコトさま、ヒューイ号に乗せてくださいませー」
「乗せてくださいませー」
お洒落組がおねだりしてきたので二人を引っ張り上げる。
メリッサさんがマメちゃんを抱き上げた。
「ああ、ヒューイさんの上は快適ですわね」
「海の上を飛ぶように泳ぎますわ」
湾を一周してもどってくると、女の子達もヒューイに乗りたがったので、彼にお願いして、私たちは下りた。
ヒューイも結構子供の事が好きよね。
デッキチェアで海を見ながら一休み。
カロルも横に来て良い風が吹いてくる。
水平線まで真っ青で、どでかい入道雲がもくもくと立ち上がっていた。
ダルシーが檸檬ジュースをグラスに入れて持って来てくれた。
「ありがとう」
「いえいえ」
グラスには氷が入って冷たくて美味しい。
アダベルとエルマーがいるので氷を使い放題なんだよね。
助かるわ。
潮騒の音を聞きながらぼんやりしていたら、うとうとしてしまった。
お、メイドさんがバーベキューコンロを設置したり、火を熾したりしはじめたぞ。
晩ご飯は豪華にバーベキューであるな。
釣り天狗達が釣ってきた魚と、マリーテで仕入れたお肉とお野菜、そしてイチゴと牛乳でアイス液も仕込んでいる模様だ。
最後の食事だからね。
盛り上げようではないか。
必要の無い食器や調理器具を洗って仕舞いはじめてもいるね。
バーベキュー大会が終わったら、我々も色々後始末をして撤収、帰省の旅にでるわけよ。
檸檬ジュースをチュウチュウ飲んでいると湾の中にヨットが入って来た。
アダベルが満面の笑みなので、何か釣れたんだな。
「釣れたのー? アダベル」
「おう、サワラとヒラマサが釣れた~、焼いて食べよう」
「良いわね」
ヨットから降ろされた大きなお魚をメイドさんが厨房テントに運んで料理を始めた。
切り身にしてバーベキューで焼く感じだね。
釣り天狗たちは釣果の自慢話をして興奮しているな。
「あー、海釣りも今日までかあ」
「今度はホルボス渓谷でイワナを釣ろうぜ」
「あ、そうか、お金が入ったから釣り具を買えるな」
「良いね一緒に行こう行こう」
トール王子と三馬鹿たちがホルボス山での釣りの予定を立てているね。
渓谷ではイワナが釣れるのかあ。
楽しそうだね。
アダベルはメイドさんに呼ばれて、エルマーと共にアイスを作り始めた。
マリオンさんのイチゴミルクアイスは美味しいからな。
王宮の味だ。
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