第1481話 ガドラガ基地へ蒼穹の覇者号が入る
ファンファンとプロペラを鳴らしながら蒼穹の覇者号がガドラガ基地に入ってきた。
どうも山の中腹に出入り口があって、そこからトンネルを飛んでくるようだ。
蒼穹の覇者号は、夕焼けの疾風号の隣の乾ドックへすぽりとはまり込んだ。
あつらえたような乾ドックと思ったが、まあ、蒼穹の覇者号用にあつらえた乾ドックなのだろうなあ。
ハッチが開いて、エバンズと学者さん達が走り出てきた。
「うわああ、なんだここは」
「ドワーフ山の飛空艇乾ドックよりも豪華じゃないかっ」
「メンテナンスクレーン、魔導溶接機、大型塗料吹き付け機、なんでもあるじゃないかっ」
「なんだ、あの飛空艇は、見た事も無い中型艇だっ!」
思った通り、エバンズと学者さんたちはガドラガ基地を見て発狂しているな。
「聖女さん、聖女さん、あの飛空艇はなんだ、光エンジンか、火風魔石エンジンか、飛ぶのか飛ぶのか」
「ポンコツ魔導駆逐戦艦のエンジンと魔導頭脳をくっつける台で、いまは皮だけだってさ」
「おお! ジャックポッドから奪ってくれば良いのか、これは凄いこれは凄い、中を見てもいいかね、エイダさん」
【内部魔力を起動しました、中の見学は可能です】
夕焼けの疾風号の脇にタラップが出た。
この船のハッチは甲板にあるっぽい。
興奮気味の学者さんたちと、引き気味の聖女派閥の執行部で階段を上がって行く。
甲板の後部に艦橋があって、そこが操縦室のようだ。
ハッチから中に入ってみる。
「これは凄い、新品同様の内装だ」
「調度は蒼穹の覇者号の方が良いが、こちらもなかなかの内装だな」
操縦室は広い窓と魔導ディスプレイを混在させたタイプのもので、蒼穹の覇者号とよく似ていた。
「武装、武装はどうなってるのかね、エイダくん」
「メイン武装は艦首魔導機関銃が二門、マジックミサイル発射管が左右に三つ、計六門となっています。他に音速魔導バリスタが二門、甲板の脇にあります」
あ、そうか、光魔法エンジンじゃないから、あの馬鹿げた光魔法ビーム砲は着いてないんだな。
だが、その音速魔導バリスタってなんだよ。
物騒な感じだな。
「蒼穹の覇者号よりは居住性に落ちるが、速度と戦闘力は夕焼けの疾風号が上か」
「定員は十名ほどの中型戦闘艇じゃな、いやいやすばらしい」
船体の真ん中には居住区があって、十人ほどが生活できそうだ。
キッチンや食堂もあるね。
「ああ、動かしたいのう、動かしたいのう、そのエンジンと魔導頭脳はいつ手に入るんじゃ」
「秋頃ですね、先史文明の魔導駆逐戦艦が復活するので、蒼穹の覇者号で倒す感じですな」
「エバンズくん、ものは相談じゃが、わしらもその駆逐戦艦戦と、この夕暮れの疾風号のレストアに参加したいのじゃが」
エバンズが私を見た。
「どうしますか、聖女さん」
「どうしようか」
「どうかどうか、私たちも混ぜてつかあさい、お願いですじゃ」
「大学をやめて、自費で参加してもようございます」
「どうかどうか、先史文明の駆逐戦艦戦でも、専門家のアイデアが必要ではありませんか」
学者さん達は必死だなあ。
まあ、お養父様と一緒で興味のある対象から外されるのは身を切るほど嫌なのだろうなあ。
「エバンズだけで夕焼けの疾風号を組むとどれくらいかかるかな」
「五年とか掛かりそうですよ」
「学者さんを参加させると?」
「半分ぐらいになるでしょう」
「ドワーフ山からなあ、ドワーフ山から、ワシが懇意にしているドワーフ一連隊を借りてくる、これで一年で建造可能じゃ、どうじゃっ!」
「お、それは良いですね」
「それに、ガドラガにこんな素晴らしい乾ドックがあれば、ドワーフ山のお株を奪ったメンテナンスベースを作れるぞ」
「ああ、確かに……」
ドワーフ山はアップルトン国内じゃなくて、ジーンの向こうにあるんだよな。
遠いのでメンテナンスが大変だなあ、と思っていた所だな。
ガドラガにベースが出来ると楽だなあ。
お爺ちゃん先生はドワーフさんにコネがあるっぽいな。
「わかった、ジャックポッド戦観戦と夕焼けの疾風号のレストアの方、おねがいしますよ」
「「「「やったあ、ばんざいばんざい」」」」
あれだ、学者さんって、子供と一緒な所あるよな。
「では、さっそく、ここに籠もって、ここの機材と夕焼けの疾風号を調べ尽くすぞ!」
「「「「おおっ!!」」」」
「ええと、ここはガドラガの深部なので、籠もられても困ります。秋にエンジンと魔導頭脳が出来てからにしてください。来年は私たちが二年になってガドラガ実習があるので、それにあわせてくださいね」
「「「「ええええ~」」」」
学者さんはとても不服そうだ。
「とりあえず、みなさんを生活させるには物資や食糧も要りますし、今は帰ってください。蒼穹の覇者号が帰るとエイダさんも居なくなるので、灯りも点きませんよ、ここ」
「「「「ええええ~」」」」
「まあまあ、秋までは、ホルボス山基地や、ビアンカ邸基地を私が案内しますよ、あちらにも多数の素晴らしい物が残っていますから」
「そうだな、エバンズ。カタパルト機構とか、調べなくては、ここのカタパルトを移設したのかのう」
【ガドラガ基地には二連のカタパルトが残されていましたので、一連をホルボス山基地に移設しました】
「ここにもあるのかい!」
【カタパルト射出口、一番から八番まで、解放します】
カシャンカシャンとゲートの開く音がして、すごく遠くに光点が見えた。
あそこが外なのか。
カタパルトで射出できるのかあ。
「「「「すごいすごい」」」」
学者さん達はテンションが上がって不思議な踊りを踊った。
まあ、気持ちは解るが。
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