第1478話 キルギスと別れてマルコアス修道院へ
治療院も綺麗で、良い感じに回っているようだ。
喫茶室でお茶を飲みながらキルギスに話を聞く。
「姉ちゃんとはよく会ってるの?」
「ああ、特別に寮で一緒に住ませてもらってるから、何時も一緒だ」
「それは良かったなあ、キルギス」
アダベルがニコニコしていた。
「お前がいないのでバカンスがつまらないけど、おねえちゃんと一緒ならそっちが大事かもなあ」
「バカンスはどうだよ?」
「すげえ楽しい」
子供達が口々にバカンスであった出来事をキルギスに伝えて笑いあった。
「来年は五本指も交えてバカンスに行こうぜ」
「良いなあ」
うへ、飛空艇がますます混み合うな。
まあ、五本指ももう身内だから良いんだけどさ。
マルコアス修道院のランチにキルギスを誘ったが、訓練があるからと断られた。
ちゃんと新米聖騎士してるね。
さて、治療院に別れを告げて、駐機場へと戻る。
各班が戻って、蒼穹の覇者号の中でワイワイやっているようだ。
私たちもメイン操縦室に入り、操縦席によじ登った。
「さてさて、マルコアス修道院に向かいますか、コリンナちゃん、みんな乗ってるよね」
「全員帰ってきてるよ」
よしよし、ガドラガで置いてけぼりは可哀想だしね。
徒歩だと王都まで帰るのに一ヶ月ぐらい掛かるからな。
「蒼穹の覇者号、発進……」
エルマーが出力レバーを押し上げた。
プロペラが高速回転してファンファンと独特の音を立てた。
で、ついっと上昇して、ついっとマルコアス修道院の中庭に着陸である。
馬車で半日ぐらいかかるけど、空を行けば一瞬なのだよな。
尼さんが建物から、わっと出て来てタラップを下りる私たちを歓迎してくれた。
今日は大所帯だから、修道院の大ホールで食事を提供してくれるようだ。
「聖女さまご一行をお迎えして、マルコアス修道院の修道女一堂、喜びに震えておりますのよ。本日はランチという事ですのであまり量はありませんが、心づくしのお料理を取りそろえました。どうぞお楽しみくださいませね」
院長先生の宣言が出て、尼さん達が座っている私たちに給仕を始めてくれた。
メニューは、猪のソテー、テールスープ、菜園の気まぐれサラダ、白パンであった。
猪のソテーは分厚くて柔らかくて良い味付けであった。
テールスープは牛のテールのスープで、尻尾肉と香草が入って味わい深い。
菜園のサラダも新鮮野菜でパリパリシャクシャクで美味しいね。
やっぱりマルコアス修道院はお料理自慢の修道院だけあって美味しいな。
「ガドラガのお土産物屋さん、あまり良い物はありませんでしたわ」
「マルコアス修道院のクッキーはこちらで買えばよろしいですしね」
「迷宮は稼ぎに来るところで、観光客はあまり相手にしてないのさ」
「レストランも美味しくないわよ」
「え、美味しい所は一カ所ぐらい……」
「地域で一番美味しいのがここよ」
お洒落組は目を見開いた。
ショックであったようだ。
「二年生の実習は……、黄金の暁号の食事は美味しいのですわよね」
「いやあ」
一年生で唯一、黄金の暁号の食事を経験したカーチス兄ちゃんが目をそらした。
「食えなくも無い、ですわよ」
二年生のヒルダさんが笑いを含んだ声で言った。
「迷宮実習だからね、美食はあまり、でもここは美味しいね、馬車で半日かあ」
「休日に一日掛けてくる感じになるね」
「お金がかかりそうだ」
オスカーとライアンが語り合っていた。
やっぱ、ガドラガのご飯事情は厳しいらしいなあ。
「ガドラガ実習が怖くなりましたわ」
「ご飯が美味しくないのは悲しいですわね」
「マコトがなんとかしてくれるよっ」
「しねえっ」
そのアダベルの私への信頼はなんだ。
そして、お洒落組よ、目をうるうるさせるな。
私も来年は黄金の暁号で不味い飯だ。
……。
嫌だなあ。
「蒼穹の覇者号で泊まって食事もしたい……」
「それは理想だけど、駄目よ、学校行事だからね」
「しくしく」
黄金の暁号では三等船室の狭い六人部屋で食事も大ホールでぞんざいな飯だ。
それが一週間か、うん……。
確かに嫌だな。
教会の治療院にたかるかな。
こちとら聖女さまだから、食事の抜け道は結構多いのだ。
お食事が終わった。
美味しかったなあ。
デザートにケーキとコーヒーが出た。
ケーキが良い塩梅の甘さで美味しいな。
そうだ、黄金の暁号にツバメ食堂を誘致してはどうか。
美味しい異世界料理でガドラガ実習も捗りそうだ。
カツ丼牛丼うな丼カレー、うひい。
ちょっとカマラさんに聞いて見よう。
まあ、人手が無いので無理かもしれんが、あの子もヒカソラファンだから学園にいっちょ噛みできると嬉しいだろう。
わはは、二年の実習も食堂改革すればええのだ。
うんっ。
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