第1477話 キルギスと再会、あと魔族たち
教会への道を、子供満載のヒューイと一緒にシタシタと歩く。
ああ、天気の良いガドラガはなかなか素敵だな。
高原だから景色も良いし。
教会の近くからだと、マルコアス修道院も遠くに見える。
「これは聖女さまっ!」
「おかえりなさいませっ」
「お、おまいら、トーマスとジョーイ、聖騎士になったのか?」
「はいっ、聖女様のお役に立ちたくて頑張りましたっ!」
「先輩達に凄くしごかれましたが、聖女さまの事を思ってがんばりましたっ!」
「そうかそうか、偉いぞ」
ベルモント旗下の偽聖騎士の二人であった。
教会地下を案内してもらって何だか懐かれたのだなあ。
そうかそうか、正式に聖騎士になれたのか。
それはめでたくて偉い。
「「ありがとうございますっ!」」
「二人とも、がんばりなさいよ」
「「はいっ!」」
私たちはガドラガ教会へと入った。
庭で聖騎士たちが訓練してるね。
お、端っこの小さな聖騎士はキルギスじゃないか?
「おーい、キルギス!」
キルギスがこちらを見つけて、監督の聖騎士に断ってから走ってきた。
「キルギス、久しぶり~」
「「「「キルギスくんっ!」」」」
「アダベル、聖女さん、みんなっ!」
「バカンスのついでに顔を出してみたよ、どう、調子は」
「うん、ガドラガは楽しいよ」
一ヶ月ぶりぐらいに見るキルギスはちょっと日に焼けて大きくなった感じがするな。
元気にやってるようで何よりだ。
久々に会うお友達に、もみくちゃにされているな。
「教会はどうよ」
「良い感じに回ってる、マシュー師がやり手で良いな」
「そうかそうか、ちょっと教会と療養所を見てくるから案内してよ」
「解った、ちょっとまて」
キルギスは監督の所に走って行って交渉していた。
監督はにっこり笑ってうなずいた。
そしてパタパタ駆けてきた。
「よし、どこから行く?」
「魔族どもはどう?」
「あー、大人しいけど、態度わりいよ」
「そうか、そろそろ魔国へうっちゃるかな」
「処刑して良いんじゃね?」
「こちとら慈愛の聖女様だからなあ」
「そんな玉じゃねえだろうよ」
うるせい、ほっとけ。
「あら、聖女さま、お帰りなさいませ」
シスターさんがにこやかに声を掛けてきた。
「私は、これから地下牢に行くから、子供達になんかお茶でも出しといて」
「はい、わかりました、みなさん、お茶を飲みましょうねえ」
「「「「わーいっ」」」」
まあ、子供に魔族を見せても良い事は無いからな。
私とカロル、コリンヌさんでキルギスの後について地下に下りた。
「おお、聖女だー、ここから出してくれー」
黒手のダーキンが声を掛けてきた。
無敵の影人も能力封じの首輪を掛けられているから今は只の姉ちゃんだな。
「牢屋はどうよ」
「暇だ、ここから出してくれ」
「お前は厄介だからなあ、考えておくよ」
「ちきしょー」
地下牢には黒手のダーキンと白手のリッツオ、あと沢山のドッペルゲンガーとゴブリンのパットミル博士がいた。
「おお、聖女、なんじゃ今日は」
「いや、バカンスの途中で寄った、どうしてるかなって」
「牢屋の中で何もしておらんわい」
「そうだよなあ」
パットミル博士も元気そうだな。
「まあ、夏の終わりぐらいに魔王国の国境にでも捨てに行くからさ、我慢してろ」
「しゃ、釈放する、というのか?」
「魔族を飼っていても、別にありがたがらないし、暇そうだからな、放り出す」
「儂らは言ってはなんだが、魔王国でも有数の厄介な勢力ぞ、処刑するのが筋ではないのか?」
「しらねえ、魔王国の事情もなにもわからないし、関係無いから好きにしろ。魔王が攻めて来たら懲らしめるし、こなきゃ別にこっちからは何もしない、という事を偉いさんに伝えてくれ」
「あ、ああ、わかった」
白手のリッツオがこちらを向いた。
「そんな事で、われわれがありがたがり、借りを作ったと思うとでも思ってるのか」
「馬鹿じゃねえのか、話ができるからありがたがるに決まってんだろ、社会を形成する生き物なんだから」
「い、いやだが、人間は敵で……」
「慈愛ってのはよう、お前の考えなんか関係無い、傲慢なもんなんだ。私が優しくしたいからするだけだ、それに乗じて甘えて悪さしてくるなら、そういう奴としてまた懲らしめるだけだよ」
「……」
リッツオは悔しそうに唇を噛んだ。
「まったく、おまえさんは嫌な生き物だのう」
「悪かったな」
さて、気持ちも決まったので立ち去ろう。
「そいじゃ、夏の終わりに解放するから待ってろ」
牢の中の半分ぐらいのドッペルゲンガーが少し頭を下げた。
キルギスがニコニコしていた。
「なんだよ」
「いや、聖女っぽいなと思って」
「あたしゃ、聖女候補だよ」
子供達と合流して、キルギスの案内で、ガドラガ教会と、治療院を視察した。
特に問題は起こって無くて、順調に回っている感じだね。
平和だ平和。
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