第1473話 お昼寝の後再出発
昼食を済ませてお腹がくちくなったので、木陰のデッキチェアで一眠りである。
すやあ。
だらんとしたお昼寝も良いね。
木陰は良く風が通って涼しくて良い感じ。
湿度が低いので日が当たらなければそんなに暑くは無い。
「うりゃあ、出航出航~~!」
ちょっと寝たら、アダベルの出航コールで起こされた。
お昼寝していた釣り天狗たちが起き出して準備を始める。
「午後の釣りか」
「そうそう、午後はトローリングで大物狙い、シイラとか、カジキとか」
「おお、漁法が違うのか」
「大物を狙うから午前の釣りとまた違うんだ」
それは楽しみだなあ。
カロルとコリンヌさんと一緒にヨットに乗り込んだ。
従魔達も乗り込んで、わりと邪魔だな。
子供達がきびきび動いて、ヨットは波を割って走り出す。
帆が風をはらんでパンパンになって快速だな。
「よし、トロール開始」
「オッケー」
シルビアさんの号令で子供達が船尾から四本のルアー付きの釣り糸を垂らした。
これをヨット全体で引っ張ってトローリングしていくのが午後の漁法だ。
わりとお客さんは見てるだけだな。
操舵のシルビアさんと、帆を操作する子供達だけが忙しそうであるよ。
ギャアギャアと海猫が騒ぐスポットの近くをトローリングしていく。
ドカン!
という感じに太い釣り糸の一本がピンと張られた。
トール王子が大きいリールを着けた釣り竿に取り付いた。
ぐぐっと引き、リールを巻き取り、またぐぐっと引く。
なんだかヨットの後方に銀色に輝くデカイヘビのような魚が姿をあらわした。
「おおっ」
「シイラだ、大きいぞ、気を抜くな、トール」
「がってんだ」
トール王子は大きいシイラと三十分ほどバトルして船へ引き上げた。
おお、銀色にピカピカして、とてもデカイ魚だ。
トール王子は満足そうに笑うと、またルアー付きの釣り糸を船尾に投げた。
「四本、それぞれ担当が違うんだ」
「そうそう、私の竿もあるぞ」
「大物掛かると良いね」
「まあねえ」
しばらく帆走したら、アダベルの竿にガツンとヒットした。
彼女はうおうと言って竿に取り付き、リールを巻き始める。
がんばれアダベル。
というか、トローリングは勇壮でオモロイな。
アダベルはギャリギャリと引き上げていき、カジキの姿が見えたらブレスを発射して敵を弱らせた。
「ブレス有りなの」
「早く弱るから便利」
聖氷ブレスだから、まあ、良いかもしれない。
かなり大型のカジキマグロが引き揚げられた。
シイラとカジキがちょっと邪魔なので、一旦浜辺に戻った。
こら、ライ一郎、カジキを囓るんじゃありません。
くそう、シイラにカジキを、お刺身で食べたいなあ。
なぜにお醤油とワサビを持って来なかったか。
来年は必ず収納袋に入れておこう。
寄生虫はアダベルの冷凍ブレスと障壁とサーチで根絶しようではないか。
お刺身を白米の上にのっけて海鮮丼が食べたいなあ。
ああ、食べたい食べたい。
ガドラガにお醤油は売っていないだろうか。
まあ無いよな。
航路上の港街で探してみるか。
バカンスの最初の方に気が付くべきだったなあ。
ヨットは一度浜辺に乗り上げ、カジキとシイラを下ろした。
「うわうわ、大漁ですねえ、午前中のマグロもありますし」
「なんだったらカロルの収納袋にいれたら?時間停止入ってるでしょ」
「そうね、一時的に入れておきましょうか」
「カジキとシイラか」
「シイラはソテーにして出しましょう、カジキがマグロマグロなので被りましたね」
「なんだったら漁港に売りに行くか」
「だめだ、ライオンが囓った」
ドリン君がカジキの囓り痕を指摘した。
ライ一郎が申し訳ないという感じに前足で顔を隠した。
「いつもはこんなに獲れないの?」
「いつもはトローリングして一匹とかだな、あまり困らなかったが、今回はマコトがいるからか大漁だ」
そうだったのか。
とりあえず、カジキはカロルの袋に入った。
バカンスが終わるまで残ってたら、ツバメ食堂に卸して海鮮丼を作ってもらおうかな。
「またトローリングをするの?」
「そうだな、今度釣れたら本島の漁港に売りに行こう、ライオンは噛まないように」
「がうがう」
すまんすまんという感じにライ一郎は謝った。
これで大物が獲れても安心だね。
というか、まあ、漁港に卸すほど獲らなくても良い感じはするが、釣り天狗の本能だから仕方が無いのかもしれない。
再びヨットは外洋に向けて帆走しはじめた。
トローリングトローリング。
しばらく流しているとガツンとまたヒット、ひゃあ、良く獲れるね。
今度は村の三馬鹿のセルジュの竿であったよ。
ガンガン引いて、ガシガシリールを巻く。
だんだんと魚が近寄って来て姿を見せる。
なんだか……、でかくね?
船体の二倍ぐらいの巨大魚が船を飲み込む勢いで寄ってきて大きな口を開けた。
剣山のように牙が沢山生えていた。
ドリン君とアダベルがどぼんどぼんと海に飛びこみ、竜化して巨大魚と戦い始めた。
船が揺れる揺れる揺れる。
大怪魚といえど、ドラゴン二匹には敵わず、腹を空に向けてぷかりと浮いた。
倒したは良いが、船の二倍の大きさの魚はどうしよう。
『我とドリンで引いて漁港へ行こう』
「ああ、そうだな、この大怪魚メダリンは食べると美味いから高く売れるぞ」
美味いのか、この大怪魚。
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