第1468話 ピリンチ氏、大いに語る
「なんということかー、なんということなのかーっ!! 五年、五年掛けた俺様の計画があああっ!!」
ピリンチ氏がクネクネしながら泣きわめいていた。
障壁を解くと彼の近くに何やら黒くて怪しい盾が落ちてきた。
「スガクの光の槍対策に、光武器を弾く漆黒の盾を手に入れ、アヌビスさまに献上し、確実に奴らを倒せると思ったのにいいいいっ!!」
はっはっは、それは残念だったな。
「なんて事だ、正直者で通っていたピリンチ、お前が人類を裏切っていたとは!」
「なんて事なのっ!」
「馬鹿め、お前達も私がイタチ獣人と知って、内心は軽蔑し、裏切ると思って居たはずだっ!! 伝説の裏切り者イタチ獣人のユダのようにと!」
「そんな事は無い、それは種族差別だ、我々はそんな事はしない!!」
「私たちは疑っていた」
「外国人は黙っていてくれないかっ!!」
スガクさんに怒られたよ。
なんだか、イタチ獣人は伝説の裏切り者が居てそのせいで差別されていたらしい。
そんな存在が光の使者を裏切ったらいかんだろう。
「だまれだまれえっ!! ザニア大陸に広がるイタチ獣人差別を俺はゆるさーんっ!!」
「あんたが裏切ったら、その差別を助長する事にならない?」
「「外国人は黙っていてくれないかっ!!」」
なんだよう。
「くそう、光の使者め、今日は不覚を取ったが次回は必ずお前を倒し、イタチ獣人差別を撤回してやるのだっ!」
「してねえって、イタチ獣人差別!!」
言うだけ言うとピリンチ氏は漆黒の盾をかざして出口に向けて駆け始めた。
「あ、逃がすか!」
スガクさんは光の槍を投げるが、吸い込まれるように漆黒の盾に向けて軌道が曲がり、打ち当たり跳ね返った。
「ぎゃはは、光の攻撃は全て跳ね返す、聖女のビームも同じだっ!」
「あっそう、『障壁』」
正六面体にピリンチ氏を閉じ込めた。
「なんだこんなものーっ!!」
ピリンチ氏が障壁に漆黒の盾を打ち当てた。
バイーン!
と、ピリンチ氏は跳ね返った。
そして後ろ側の障壁に向けて盾が自動に動き、かざされる。
バイン!
そして私はだんだんと障壁の箱を小さくしていく。
バインバインバインバインバイン!!
「ぐあぐあぐあぐあぐあ!」
バンバンバンバンババババババババ!
「あがあがあがあがががががが!!」
ピリンチ氏は高速で障壁の壁に激突しまくり、そして気を失った。
「ヨシッ!!」
「ヨシッじゃねえよっ!!」
カーチス兄ちゃんが突っ込んでくるなあ。
「いやまあ、なんというか、その、ありがとう聖女、あんたがいなかったら大変な事になる所だった」
「スガクさんは光武器に頼りすぎだなあ、やっぱ時代は障壁よ」
「そうか、障壁か、確かに便利だった、覚えるよ!」
よし、これでまた一人障壁マニアの光魔法使いが増えた。
やっぱ最終的に地球上の光魔法使いを八人集めて大障壁合戦をしたいところだな。
気絶したピリンチ氏は捕まり、漆黒の盾は光の使者の手に入った。
というか、光魔法特効の盾とか、敵に回すと厄介だな。
大悪霊アヌビスがエッケビームをこの盾で受けなかったのは障壁があったので動けなかったからであるな。
光の槍だけだったら危ない所だった。
ホウズとかも跳ね返されそう、だがリジンなら加速攻撃なので倒せそう。
やっぱ、色々な聖剣を持って無いと危ないよな。
ぐらりと、ワニ獣人ミイラが動きはじめた。
「がおおおお!」
「くっそ、やるかおまえっ!!」
良い所の無かったスガクチームが苛立ったようにワニ獣人ミイラに襲いかかり、あっというまにバラバラにしてしまった。
ドロップ品は鰐皮ポーチでパキラさんが貰ってニマニマしていた。
「まあ、面白かったが、マコトが参加すると趣が無くなるのがなあ」
「てっとりばやすぎる……」
いいじゃんかよう、効率第一だぞ。
「おまえら、すぐ帰るの? 晩ご飯食わねえか」
「いやあ、ちょっと見るだけのつもりだったからなあ」
二食続けてザニア大陸料理はなあ。
ピラミッドを出て駐機場に行くと、観光組が色々とお土産を持って待っていた。
メイドさんたちもザニア食材を山ほど買い込んだみたいだね。
「ピラミッド探検おわりましたの?」
「終わったよ~、面白かった」
スガクさんが私の前に立って手を差し出した。
その手を握った。
「今回はありがとうな、恩に着る、何かあったら呼んでくれ、光の使者仲間だし手伝うよ」
「気にすんなよ、また秋頃来るからさ、その時はまた会おうよ」
「ヨールト閣下のところだな、大ピラミッドもあるから楽しいぜ」
「おお、次回は大ピラミッドを案内してくれよ」
「ああ、良いぜカーチス」
スガクさんの手は肉球があってぷにぷにしているな。
気の良い兄ちゃんと知り合えて良かった。
その後、テイガネンに学者さんを引き取りに行き、蒼穹の覇者号に乗り込んで私たちはガフサの街を後にした。
楽しかったなあ、初偽アフリカ。
また行きたいね。
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