第1462話 晩餐を食べて相談して寝よう
「ご飯ですよ~~」
厨房テントからマリオンさんの元気な声が聞こえた。
さあ、今日の晩ご飯は何かなあ。
テントに並んで今日のトレイを受け取る。
今日はビーフのカツレツ、トマトスープ、オニオンサラダ、白パンであった。
あと、カフェ・ブーリエンヌのクッキーが付いた。
美味しそうだなあ。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
もぎゅもぎゅ。
わあ、ほろりと口の中でほどけるビーフのカツレツが美味しいな。
ブラウンソースが美味し美味し。
「料理美味い」
海竜のドリン君は海パン男に人化してお料理を食べているな。
「うん、人化すると、人間のご飯がんまい」
「うむ、美味いなアダベル」
ドラゴンたちの不思議な交流だな。
やっぱりこの島の浜辺の夕暮れの風景は良いなあ。
絵になるねえ。
風が吹いて、パラソルをパタパタ鳴らして波がドドンと砕けて行く。
このまま一生バカンスなら良いのになあ。
「バカンスの終わりまであと五日ほどね」
「そうですね」
半分は海遊びを続けるとして、あと一回はどっかに観光に行こうかな。
「対岸の暗黒大陸を見てくるかなあ」
「勝手に入国して叱られませんか?」
「港街なら良いんじゃ無い?」
「対岸は獣人連合国だなあ」
「獣人さんばっかりの国かあ、アシル親方みたいな感じかな」
アシル親方たちは、先祖が暗黒大陸から奴隷として連れて来られて、こっちの大陸で解放されて居着いた感じだからなあ。
本場の獣人王国の人達とは違うかもなあ。
「一回見に行くのも良いな、せっかくの蒼穹の覇者号だしよ」
「良いね、僕もちょっと暗黒大陸を見たいよ」
カーチス兄ちゃんの意見にケビン王子もうなずいた。
王族は気軽に旅行ができないからなあ。
暗黒大陸と言っても、偽チェネジアとかだからな。
ピラミッドがあって迷宮化してるとか聞いたな。
アンデッドの巣窟らしい。
「ピラミッド迷宮をちょっと覗いて、街を観光して帰ろうか」
もう少し人数が少なかったら、蒼穹の覇者号で一泊するんだけど、今回人数が多いからなあ。
日帰りで島に戻ってこないとね。
「じゃあ、明日はガフサの街観光で。剣術組は迷宮に行くのね」
「まあさわりだけな、そう簡単に攻略はできないだろう」
中規模迷宮だと、日帰りで攻略とかもできるけどね、大迷宮だと、何ヶ月掛けても底まで着かない所も結構あるしな。
「暗黒大陸、楽しみですわ」
「獣人の国ですわ、どんな所かしら」
わりとエキゾチックな需要があって、暗黒大陸旅行って結構流行ってるんだよな。
ダルシーにお茶を入れてもらって、食後のデザートに、カフェ・ブーリエンヌのクッキーを頂く。
うまうま。
はー、今日も暮れて行くなあ。
あと五日かあ、長いようで短かったなあ。
アダベルみたいにジタバタと泣き出したい衝動が湧くなあ。
お、一番星発見。
不意にカロルが腕に抱きついて来た。
「へ、え?」
「寂しそうな顔をしていたから」
「あ、うん、バカンスが終わっちゃうなって思った」
「うん、だけど大丈夫、バカンスが終わっても、楽しい事は永遠に続くから」
「うんっ」
心がふわっと軽くなった。
やっぱりカロルは好きだなあ。
そうだそうだ、バカンスが終わっても、なにかきっと良い事が続くから大丈夫なんだよね。
楽天主義が聖女の持ち味だしね。
うんうん。
温泉は昨日行ったので、今日は船のシャワーでお茶を濁すのである。
というか、他の子は毎日入らなくても平気というか、海入ってシャワー浴びているから良いじゃんという感じである。
まったく、外人めっ。
前世日本人は、意味無く毎日入るんだよ。
と言うことで船内シャワーである。
ショワー。
新しい下着とサマードレスに着替えて、メイン操縦室へ。
艇長席に座って航路図を見る。
ここから近所は偽アルジェリアの都市だね。
偽エジプトはビタリの向こうで結構遠いな。
大ピラミッド迷宮は当然偽エジプトで、偽アルジェリアには無さそうだ。
「対岸だと、迷宮は」
【ガフサの街近郊に中規模のピラミッド迷宮があります】
ガフサの街は港湾都市だな。
暗黒大陸の獣人連合国とは、どんな所なんだろうなあ。
というか、偽エジプトまで行って大ピラミッド、とも考えたが、宿泊の関係で無理だな。
来年の夏とか考えようか。
「明日の計画?」
カロルが何時もの副艇長席によじ登って来て、聞いてきた。
「そうそう、朝からガフサの街で観光するよ」
「獣人連合国は初めて行くわ、楽しみね」
「本当は、ヨールト公爵閣下に連絡を取って、公式訪問しても良いんだけど、なんか堅苦しくてね」
「只の観光旅行だしね」
「そうそう、こっそりガフサの街に行ってこっそり帰ってくるよ」
ああ、明日も楽しみだなあ。
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