第1460話 アップルビー領に寄り道
蒼穹の覇者号は一路アップルビー領上空であります。
眼下一杯の小麦畑で黄金色に色づいているねえ。
すごいや。
「これは去年の秋に撒いた秋小麦ですわ、もうすぐ収穫ですの」
「一帯が黄金色で綺麗ですね」
風が小麦を波打たせて通っていくよ。
素晴らしいね。
アップルビー領の領都は大きかった。
小麦の大生産地だから大都会だなあ。
みんな豊かそうだ。
「広場に降りてくださいませ、カフェ・ブーリエンヌに行きましょう」
「わあ、王都にも支店のあるカフェですわね」
「クッキーとケーキが有名ですわ」
おお、お洒落組が喜ぶ感じのお店なのか。
行こう行こう。
蒼穹の覇者号をぞろぞろ下りて、みなでカフェに入る。
「いらっしゃいませ、ああ、これはお嬢様」
「派閥の者を連れて参りましたから、お茶とケーキを出してください。あと、クッキーを山ほど持ち帰りますわ」
「かしこまりました、お待ち下さいませ」
お持ち帰りクッキーはアダベル用だろうなあ。
小洒落たカフェの個室ホールに通された。
なかなか良い雰囲気の個室だなあ。
さすがはゆりゆり先輩のご実家の領都だ。
「アップルビーは小麦の産地だけはあって発展しているね」
「国内で一二の裕福領ですからな」
王家主従が領地の鑑定をしているな。
実際に足を運んで領地の感じを見るのも、将来の王としての指導力に通じるのであろうなあ。
というか、アップルビーは公爵家なので、まあ潰れることはなさそうだね。
コーヒーと美味しそうなケーキが運ばれて来た。
これは良さそうだなあ。
パクリ。
んまいっ!
口に入れただけでほどける生地といい、上品な甘さのクリームと旬のフルーツのアンサンブルが素晴らしいケーキだねえ。
さすがは小麦どころのアップルビーだ。
「さすがですわ、ユリーシャさま」
「美味しいですわ」
やっぱり土地が豊かでないと、甘い物とか、特産とかの美味しい物は出てこないのよねえ。
さすがの味だわさ。
コーヒーも南洋から運んで来たのか良い味わいであるね。
「アダちゃんにケーキの事がばれると連れていけとうるさいよう」
「甘い物に目がないからねえ」
「おほほ、アダベルさま用にここのクッキーを山ほど持っていきますわよ」
「アダちゃんはクッキーを食べて、さらにケーキも食べたくなると思う」
「その時は、帰りにでもまた来ればよろしいのですわ」
「そうですね」
「それがいいですよう」
アダベルは食いしん坊だからなあ。
ケーキを食べる機会は逃さないであろう。
「ケーキもコーヒーも美味しいね」
「うん、小麦が良いのね、すごく美味しい」
なんというか、公爵家の底力というか、エレガント力が高いよねえ。
領都も繁栄してるけど上品で良い感じの街だね。
さてと、と皆が席を立つと、なんだか大きな包みをおじさん二人が運んで来た。
クッキー詰め合わせらしい。
というか、さすがにこの量はアダベルでも食い切れまい。
カーチス兄ちゃんとエルマーが受け取って重そうに運んでいたら、ダルシーが重拳を掛けてアンヌさんと軽々運んでいた。
さすが、うちのメイドは役に立つな。
アップルビー領都は粉の匂いがするなあ。
たこ焼きとか、お好み焼きを作る時は小麦粉をお願いしよう。
粉物タウンじゃ。
マメちゃんが足にじゃれついて歩きにくいので襟首をつまみあげて抱きながら歩く。
君は暖かいねえ。
というか、暑いので下ろしたい。
生き物は可愛いが、この時期、引っ付かれると暑い。
飛空艇に乗り込んで、艇長席の袖机にマメちゃんを乗っける。
ヒューイもカタロニアの空を飛んでたりしたのだが、今は飽きて後部貨物室で大人しくしているな。
「それでは、ヤクシム島へ……」
エルマーが出力レバーを押し上げてプロペラの回転数を上げ、離陸した。
アップルビー領からヤクシム島へはそんなに遠くはない。
ついっと行く感じね。
高高度にも入らず、普通の高度を行ったぞ。
ヤクシム島の浜辺に帰ってまいりました。
湾の中でヨットが回遊しているからシルビアさんたちは釣りをしてるのだろうなあ。
ドリン君が大きくなってヨットと併走している。
浜辺のいつもの位置に着陸。
いつものようにエバンズが温水パイプを繋げた。
「カタロニア王国、楽しかったね」
「一度行ってみたいと思っていまして、夢が叶いましたわ」
「蒼穹の覇者号でもないと、王都から片道二週間とか掛かりますものね」
そういや、お義兄様とお義姉様はビタリに着いたかな。
のんびりとした時間の掛かる旅行も楽しそうなんだけどなあ。
まあ、夏休みの後半用にのんびり旅は残しておこう。
しかし、蒼穹の覇者号の機動力よ。
個人的にジェット機を持ってるのと一緒だからね。
しかも燃料代はほとんど掛からないという。
ビアンカ様、さまさまでございますぞ。
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