第1459話 レオンシャトー訪問
レオンシャトーは広くて重厚な建物だった。
良く掃除が行き届いて清潔な感じだね。
食品を作る場所だから清潔は大事である。
ワイン職人たちがせっせと働いているね。
「荒醗酵が終わりましたので、樽詰めをして熟成させる工程です」
「酵母を入れて発泡させるのですね」
「はい、一年すると素敵なカヴァができあがります」
わりと簡単にできるのだな。
まだ保存料が発達してないから、ワインは一年で作って、次の一年で飲み干すんだよね。
古いワインは安売りされてお祭りなんかで消費される事が多い。
良い出来のワインだけが樽詰めをされて長期間熟成されてビンテージワインとなるのだ。
ワインの製造工程をシャトーの主人さんは惜しげ無く見せてくれた。
ルイ市長も初めてなのか、興味深そうに聞いているね。
このシャトーは標高がそこそこある山の中腹に建っていて気温が低めのようだ。
シャトーを一周見学してお昼ぐらいになった。
「それでは、レオンシャトー自慢のランチを皆様にお振る舞いしましょう」
「ありがとうございます」
「いえいえ、アップルトンからの大事なお客さんですから、ご遠慮なさらずに」
支配人さんに大きな食堂に案内された。
隅っこで職人さんも食事をしているから社員食堂っぽいね。
ランチはプレートで豚のローストとサラダ、白パンであった。
タコを喰いたかったが山の中だしな。
ワインがグラスに二つ付いた。
「シャトーで今年出来た白ワインとカヴァです、お楽しみください」
わしらは学生なのだが、まあ、堅いことを言うまい。
アップルトンは伝統的に水が良く無いので、みな、ワインを薄めた水とかを飲んで育つからな。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
あ、良く脂がのって美味い豚のローストだね。
白ワインに良く合うな。
美味い美味い。
カヴァも飲んで見よう。
こくりこくり。
シュワアアア。
おお、結構泡立つな。
シャンパンの一種だね。
味が濃くて美味しいね。
「繊細で美味しいワインね」
「そうね、美味しいわ」
というか、カーチス兄ちゃんがガブガブ飲んでおかわりしてやがるな。
飲み助め。
なかなか良い社会見学の日になったな。
提案してくれたメリッサさんに感謝だな。
ケビン王子とジェラルドも大人しく飲んでいるね。
「結構美味しいね」
「アンドレアワインと遜色無いぐらいの出来ですな」
それはどうだろうかなあ。
アンドレア領のワインは老舗だからな。
メリッサさんも目をつぶってワイングラスを振ってテイスティングしながら飲んでいるね。
プロっぽい。
というか、お酒の専門家はメリッサさんぐらいなんだっけ。
みんな食べ終わって席を立った。
カーチス兄ちゃんがふらついていたので後ろ頭をはたいて『ヒール』を掛けた。
「うおっ、おお、ヒールは便利だな」
「あんま飲みなさんな」
「いや、美味かったからさ」
まったく飲兵衛だなあ。
コリンナちゃんがシャトーのご主人にお礼を言って精算していた。
「市長さんもありがとうございました、市庁舎まで送りますよ」
「ありがとうございます、午後の観光は如何でしょうか? 名所旧跡が沢山ありますぞ」
「心引かれますが、午後にはアップルトンで用事がありますので、申し訳ありません」
特に用事とか無いけどな。
あまりカタロニアの旧跡に惹かれる物が無いのであった。
「ざんねんです」
とぼやくルイ市長とメガネ秘書さんを乗せて、蒼穹の覇者号は市庁舎前の広場へと降り立った。
「今日はありがとうございました、とても良い見学になりましたよ」
「何時でもいらっしゃってくださいね、聖女様、派閥の皆様、秋にはワイン祭りもございますよ」
「あら、良いですね」
「それでは、またお会い出来る事を願ってお別れいたしますぞ」
ルイ市長は市庁舎の中に去っていった。
「ワイン祭りかあ」
「アンドレア領でもワイン祭りがありましてよ、是非いらっしゃってくださいませ」
「派閥のみんなで泊まりがけで行くのも良いね」
「是非是非」
蒼穹の覇者号は空に舞い上がった。
「ワイン祭りは良いなあ、行きたいぜ」
「殿は無茶のみするからいけませんぞ」
「ほどほどにするみょんよ」
「うへえ、やぶ蛇だ」
カーチス兄ちゃんが突っ込まれていた。
エルザさんが満足そうに見ているね。
なんか、賢夫人って感じで良いな。
「時間がちょっと余ったな、どこかでお茶でもしていこうかな」
「それでは、我が領都でお茶にしましょうよ」
ゆりゆり先輩が声を上げた。
「ユリーシャ先輩の実家が近いですっけ」
「アップルトン南部ですからね、寄り道して行きましょう」
「小麦の産地だから、美味しいケーキとかクッキーとかありそうですね」
「ありますわ、お茶にいたしましょう」
ゆりゆり先輩のアップルビー領都に寄り道する事に決まったのであった。
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