第144話 お風呂に入って晩餐にいくぜー
ショワー。
マコトです、現在また地下大浴場でダルシーに洗われている最中でございます。
ああもう、気持ちがいいなあ。
極楽極楽。
「たかが、男爵令嬢なのに、これみよがしにメイドに体を洗わせるなんて」
「思い上がってますわね、偽聖女のくせに」
ダルシーの動きが止まって、ごごごと殺気が出てきた。
やめれー、ご令嬢は武道のたしなみとか無いから殺気は利かないぞ~。
見てみると、裸ん坊のご令嬢が二人自分で体を洗っていた。
「なにか?」
「い、いえ、何も、こちらの事ですわ」
「そ、そうですわ、おほほ、お気になさらずに」
「あ、そうだ、お近づきの印に、ダルシー、お二人を洗ってさしあげて」
「はい、うふふふふ」
お二人の令嬢は、ぎょっとした顔をした。
ダルシーは無慈悲に近づき、ご令嬢方をウオッシュしはじめる。
「ああ、おやめになって~~」
「そんな、そこは自分で洗えますわ~~」
二人のご令嬢は悲鳴を上げていたが、髪を洗われる頃には、そろって、うっとりした顔になった。
ふふん、メスの顔だぜっ。
「あ、ありがとうございます……」
「なんてつやつやに……」
よし、勝った。
ざまあっ。
ダルシーと二人で、意気揚々と大浴場を後にした。
バスタオルで挟み込むようにして髪を乾かしてもらう。
あー、鍛冶部にドライヤーを作ってもらうかなあ。
金属で骨組みを作って、木で囲めば頑丈だろう。
前世にあった丸いやつじゃなくて、四角なら加工も楽だろうし。
魔法陣は、エルマーとジョン叔父さんにおねがいすれば凄いの作ってくれそうだしな。
明日にでも、鍛冶部に頼んでみようかな。
下着を履いて、ブラをして、制服を着込んで、さっぱりきっぱりであるよっ。
脱衣場を出て、廊下を歩き、階段をあがる。
外はもう真っ暗で雨がしとしと降ってるなあ。
205号室に戻るとコリンナちゃんが魔導灯を点けて勉強をしていた。
いつもがんばるなあ。
「お、マコト、お風呂上がり?」
「うん、コリンナちゃんは夜に行くの?」
「そうだね、夜が良いよ、よく眠れるし」
それはあるなあ。
でも夜は結構混むんだよね。
夕方の大浴場は人があまり居ないからいいんだよなあ。
「晩餐を食べに行こう」
「うむ、そうだな」
パタリと本を締めてコリンナちゃんは立ち上がる。
「そういえば、なんでマルゴットさんは学園にいるんだろう」
「え、ああ、そうか、ヘザー先輩も迷宮に行ってるはずだな」
「マルゴットは学園内で諜報活動をするために残っております」
ダルシーが現れてそう言った。
「そうなんだ」
「ポッティンジャー公爵家に新しく諜報メイドが、公爵領から来るとの噂がありますので、それを見るために残ったのでしょう」
「ああ、確かに、暗闘家が居なくなったのは派閥として辛いわな。諜報メイドが補強されるのか」
まあ、迷宮に諜報メイドの用がないのもあるんだろうね。
マルゴットさんなら索敵とか、そつなくこなしそうだけど、それよりも巣である学園を防衛するのか。
ふむふむ。
「新しい敵諜報メイドの情報はアンヌが集めております。なにか解りましたらお知らせします」
「ありがとう、ダルシー」
とりあえず、ダルシーの頭をなでて上げた。
髪が細くて気持ちがいいなあ。
「あ、それから、雨の中悪いけど、大神殿に行って、明日宝物庫に入って良いか問い合わせて来て、聖女派閥の大人数で行くとも伝えてね」
「かしこまりました」
ダルシーはにっこり笑って姿を消した。
「さて、私らはごはんごはん」
「そうだなー」
コリンナちゃんと廊下に出てドアを施錠する。
ジュリエット嬢とメイドさんがはたはたと足音を立てて近づいてきた。
「マコトさま~、一緒に晩餐をいたしましょう~」
「うん、いいよ、ジュリエットさん」
「まあ、ジュリちゃんとお呼び下さいましな~、わたくしたち、親友でしょう」
「あはは、ごめんよ、ジュリちゃん」
「ほんとにお前はたらしだよなあ」
「ちがわいっ」
しかし、いつの間に親友認定されたのだろうか。
まあ、ジュリエット嬢は、友人少なそうだしな。
ジュリエット嬢がいつも連れているメイドさんは姿勢もぴしりとしているし、良くできそうだ。
「ジュリちゃんのメイドさんはハウスメイド?」
「ちがいますわっ、ハウスメイドなんてとんでもない、メイドの王、グランドメイドですわっ」
「お嬢様、はずかしゅうございますよ」
「いいじゃないのー、クレアは凄いんだから~。ハウスメイドの家事の腕を持ち、護衛メイドの武力を持ち、諜報メイドの情報力を持つ、統合された超一流メイド、それがグランドメイドですわ~~」
また新しいメイドの種類が出てきたよ。
グランドメイドって、総合職的な高級メイドなのかな。
「お給金が高そうだなあ」
「それはもう、でも侯爵家ともなると、このクラスのメイドを連れてないと恥ずかしいですわ~」
やっぱり、メイドの質も貴族の見栄と意地になるんだろうなあ。
貴族生活はお金が掛かってしょうが無いね。
クレアさんはジュリエット嬢の褒め言葉に顔を赤くして照れていた。
いい人みたいね。




