第1454話 修道院でランチをいただく
子供達が修道院生活に興味津々で根掘り葉掘り聞いて回るので時間が掛かった。
終点の礼拝堂で天井画を見たら、お昼になっていた。
「さあさあ、お昼ですから皆さんで昼食にいたしましょう」
「おお、修道院ご飯、どんなの?」
「おほほ、慎ましい食事ですわよ、守護竜さま」
そりゃあまあ修道院だからね、マルコアス修道院のようなお食事もクッキーも凄い所が珍しい。
修道院は清貧でお祈りをする場所なのだ。
「慎ましいのかあ」
アダベルは残念そうだ。
食堂に通されてみんなで席に着いた。
メニューはシチューに黒パン、チーズとお茶だね。
「それでは、日々の粮を女神様に感謝いたします」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
修道院長の食事のご挨拶で昼食開始であるよ。
パクリ。
ああ、まあまあの味だね。
凄く美味しい事は無いけど、普通に食べられる水準だ。
というか大神殿の孤児院で出されている食事も、まあこんな物なので、問題は無さそう。
シチューの具は、蕪と豚肉だね、うんうん。
修道女の皆さんはおばちゃんかばあちゃんなので、子供達がパクパク食べるのを見て目を細めて微笑んでいるね。
「将来は孤児院の子供達はこんな場所に来るのかあ」
「アダちゃん失礼だよ」
「修道院に入るのも結構大変なのよ」
そうなのである、無条件に貧民を入れるとスラム化するので、じつは都市市民の縁者しか修道院には入れないんだよね。
スラムの住民とかは、あまり入れて貰えないのだ。
わりと差別的とも思えるが、社会リソースが小さいから誰でも救うということは、全ての人間を共倒れにするという事になって現実的ではないのだ。
「守護竜さまも、こういう場所があって、清貧な生活をして女神様に近づこうという者が居ることを覚えて置いてくださいね」
「わかった、なんだか大変なんだなあ」
アダベルがしみじみと言った。
まあ、奴は三ヶ月ほど前に人間の世界に分け入ってきたからしょうがないのだろうなあ。
だんだん解ってくるだろうね。
昼食は終わった。
みんなでお礼を言って、蒼穹の覇者号に乗り込む。
修道院の尼さんたちが窓に鈴なりになって手を振っていた。
「料理は美味しくなかったけど、まあまあ良い所だな」
「そうだよ、アダちゃん、お祈りをする場所なんだから」
「雰囲気が良いわよね、女神様への信仰と一緒に過ごしていけるのよ」
「おまえらはっ、子供なんだからおばちゃんみたいな達観した考え方はやめろーっ」
まあ、孤児だからいろいろと現実を知っていて子供っぽく無いのよ。
「さてと、浜辺に戻ろうか」
「そうね」
「マリーテで下りよう、果物ジュースを買って、またシャーベット大会だ」
「またですか」
「あと、スイカもいる」
「またスイカ割りするんですか」
「こんどこそ割る!」
まあ、ラグビーボールスイカは美味しいから良いんだけどさ。
子供達はぱくりと食べちゃうし。
私は操舵輪を回してマリーテ港に南側から入った。
開けてくれている桟橋に着陸して、碇を下ろす。
「よーし、またイチゴとミルクを買ってイチゴミルクアイスも作って貰おう」
「「「「「うおおおお」」」」」
子供達はアイスが好きだなあ。
子供達とヒューイを引き連れて市場へと向かった。
収納袋にいれていた空缶を返して、ジュースの詰まった缶を売ってもらう。
「アプリコットジュース? それは美味しそうだな、買った!」
アダベルが珍しいジュースを買っているなあ。
「エルマーが居ないけどどうすんの?」
「晩ご飯の後にやる、うん」
たぶんアダベル一人でもアイスは作れそうだが、エルマーが居た方が安心だろうね。
ダルシーとアンヌさんも出て来てイチゴを籠で買っていた。
産地が近いのか、わりと安いね。
牛乳缶も買っているな。
結構な人数でバカンスをしているから、食糧の消費がえげつないんだよね。
みんな沢山食べるしね。
「晩ご飯はお魚かな、買わなくて大丈夫?」
「お献立はマリオンさまが考えるので勝手に買って行くと迷惑なのですよ」
アンヌさんがそう言った。
やっぱり、王子様のメイドさんということで、おっとりマリオンさんの地位が一番高いのね。
「ヒューイは何か欲しい物ある?」
《無い、何時もの肉は美味い》
あまり食いしん坊じゃないよね、ヒューイは。
ダルシーがマメちゃん用の肉を買い込んでいた。
アレを煮て煮こごりを作って食べさせているんだよな。
コリンヌさんがライ一郎用の生肉と、ヘビ三郎用の卵を買い込んでいた。
「食費が高くて嫌になっちゃいますようっ」
「ヤギ次郎だけ、食費が低いね」
「草を食べてくれますからね、ヤギ次郎は良い子良い子」
「メエエエ」
文字通りの道草を食べていたヤギ次郎が褒められて鳴いた。
ライ一郎とヘビ三郎は申し訳なさそうだ。
子供達が巨大なラグビーボール状のスイカをわっせわっせと蒼穹の覇者号へと運び込んでいた。
アダベルが目を細めてスイカを撫でていた。
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