第1451話 イザラス山洞へお迎えにいく
三時になったので、蒼穹の覇者号に乗り込んだ。
エバンズが入れ替わりのように船を下りて温水パイプを外していた。
さて、行くかあと思ったらエバンズはタラップを上がって船内に入ってきた。
エンジンルームで飛空艇研究者の集いを継続させるようだ。
ほんとうにもう。
カロルがクスクス笑いながら離陸準備をしていた。
そういや、今日のエルマーはシャーベット大会の方に居たから迷宮には行って無いのか。
魔法なしで剣術組は大丈夫だったかな。
というか、エルマーを斥候替わりにも使っているから、居ないと困らないのかな。
コイシちゃんとか、カトレアさんとかが斥候やるのかな。
イザラス山洞の場所はマリーテの向こうだから、わりと近い、サクッと門前街へと到着して広場に着陸させた。
広場のベンチで待っていた剣術組が手を振って寄ってきた。
タラップを下ろすと、剣術組はどやどやとメイン操縦室に上がって来た。
「おつかれ、どうだった?」
「まあまあだな、案内人が見つけられなかったから中で迷ったし、狩りの上がりも良く無かったよ」
「あれま、それは残念ね」
「なので明日も行くぜ」
なるほど、明日もイザラス山洞か。
なんだったら、子供を連れてベルトゥ女子修道院に行ってもいいかもしれないなあ。
いやまあ、礼拝堂の天井絵ぐらいしか見る物は無いけど、実際の修道院を見学するのも孤児院の子供たちに良いかもしれない。
実際に修道院の尼さん坊さんになる子供も多いだろうからさ。
まあ、晩餐の席で聞いて見よう、厭だって言われて誰も行きたがらないかもしれないしね。
剣術組を全員乗せたので、カロルは出力を上げて離陸した。
「アダベルのシャーベット祭り、どうだった?」
「すごい美味しかった。メイドさんたちがイチゴミルクアイスを作ってくれて絶品だったよ」
「うわー、食べたいみょんなあ、残ってるみょんかー?」
「アダベル主催だ、残っているわけがない、夢を見るなコイシ」
「ううう、切ないみょんな」
たしかに、残っていたら、アダベルが食べるからな。
彼女は大食いだから。
船は一路、ヤクシム島に向けて飛んだ。
島に近づくと、浜辺でスイカ割りをしている子供達が見えた。
もう砕いてしまって、スライム防水シートの上で種を飛ばしながらスイカ食べているな。
「剣術部もスイカ割りするか」
「いや、本職はやめろよ、一撃だろうが」
「やっぱ見えないのがなあ、あと、子供のスイカ割りに入るのが悪くてなあ」
「あれは子供がやるもんで、大きいお兄さんお姉さんがやる事じゃないよ」
「それはそうだが、やってみたいのだ」
「やりたいぞ」
「同上だみょんぞ」
まったくもう、剣術組なんざ、どでかい子供なんだからなあ。
やれやれだ。
蒼穹の覇者号が浜辺に着陸すると、後部ハッチからエバンズが出て来て温水パイプを繋いだ。
なんかいつもごめんね。
とはいえ、レンチを使って繋げるので、気軽に私らで接続させるとはいかないのだな。
機械類は面倒くさいね。
「おお、マコト、カーチス、スイカ食べろスイカ」
アダベルが砕けたスイカをこっちに差し出した。
「ありがとう、アダベル、あんた割れたの?」
「また失敗した、でもトールが見事に両断したぞ」
「おお、トール王子、お手柄ですね」
「いやいや」
「お兄ちゃんすごかったのよっ」
照れているトール王子の横で、ティルダ王女がはしゃいで言った。
ラクビーボールみたいな大型スイカはわりと水っぽいけど、結構美味しい。
でも、日本の甘いスイカが食べたいね。
砕けたスイカは飢えた剣術組が平らげてくれた。
西洋スイカはでかいから、女子の集団だったら持て余す恐れがあるんだよな。
まあ、腹ぺこドラゴンと腹ぺこ剣術組がいるから聖女派閥では大丈夫だろうけどね。
剣術組は水着に着替えて海で一泳ぎしているな。
私は面倒臭いのでサマードレスでデッキチェアに寝転ぶ。
サンダルを蹴り飛ばす。
ヒューイがのっそりやってきてデッキチェアの横で座り込んだ。
ああ、昨日源泉で泳いだから、ヒューイがほのかに硫黄臭い。
マッチの匂いがするぞ、君。
マメちゃんも影からでてきて、私のお腹の上で丸くなった。
従魔は可愛いけど、夏がなあ、暑いんだよなあ。
もふもふだから。
カロルが厨房テントから葡萄ジュースを入れたグラスを二つもってきて、テーブルに置いてくれた。
「はい、これ、マコトの分ね」
「ありがとう」
ありがたく受け取って、ストローをチーウと啜って葡萄ジュースを飲む。
ストローはプラスティックではなく、植物由来のなんかの管だ。
わりと味もしないし、口触りも良いので、こっちの世界のストローは結構好きなのである。
ドリンくんが海竜モードで子供を背中に乗せて湾の中を走り回っている。
子供がキャーキャー言って騒いでいるなあ。
とても良い夕暮れ時だな。
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