第1451話 大シャーベット大会
子供達は満腹するまでパスタをむさぼり食い、木陰のデッキチェアでタオルケットにくるまってお昼寝をしていた。
やっぱりバカンスは年齢層の幅があると楽しいね。
学者さん達は食後のお茶を飲んですぐ蒼穹の覇者号へと入って行った。
海に来たんだから、ちょっとは遊びなさいよ、爺さんたちは。
従魔たちも木陰でのんびりである。
角兎とかにマメちゃんがじゃれついていた。
アダベルは三十分ほど昼寝をしたあと、尻尾を使ってビョンと跳ね上がり、エルマーと一緒にアイステントに入っていった。
ダルシーが大量のジュース缶を運んでいるな。
「何を買って来たの」
「葡萄ジュース、オレンジジュース、マンゴージュース、あと生イチゴを籠に一杯買ってきた」
「おお、イチゴシャーベットか」
「牛乳と攪拌してイチゴミルクアイスを作るべきでは?」
「それは良い、さすがマリオン、王城メイドだ」
「それほどでも。よろしかったらイチゴミルクの方は私どもが仕込みますけれども」
「そうか、私とエルマーは凍らせるか」
「はい、適材適所でございますわ」
イチゴの下ごしらえは厨房テントのメイドさんに外注された。
うんうん、美味しいの出来そう。
イチゴアイスが出来たら王都でも商売になりそうだなあ。
守護竜牧場アイスも普通に商売になりそうだけどね。
大神殿肝いりで企画してみるべきだろうか。
孤児院の副業でも良いね。
福祉は予算が必要だからねえ。
教会の福祉事業はだいたいが大店の商店や、大商会からの献金で執り行っているので、わりに景気で上がり下がりの幅がでかいのよ。
だから孤児院も教会によってピンキリで、最底辺の孤児院というのはスラムのゴミ溜めとそんなには変わらない訳だ。
飯があって屋根があるだけで上等だ、孤児なんだからなあ。
というのが中世あたりの人権意識だったりするな。
大神殿の孤児院は相当水準が高いのだ。
なので世界の孤児院は全部この水準になれー、と願った所で原資も無いし、無理な話なわけだ。
アダベルとエルマーはイチゴの調理をメイド軍団に任せて、買って来たジュースを凍らせに入った。
昨日オレンジシャーベットはやったので、葡萄、マンゴー、オレンジの順らしい。
イチゴミルクは最後のようだ。
エルマーとアダベルが交代交代でハンドルをぶん回し、アイスブレスと氷魔法を銅のシリンダーに掛けまくっていた。
この二人の氷結温度は丁度良いのか、わりと軽めでシャリシャリな感じに凍るんだよね。
シリンダーとか形状にもよるのかもしれないけど。
葡萄シャーベットが出来たので、カロルとコリンヌさんと並んで貰い、テーブルで食べた。
「あら、良い味ね」
「赤葡萄ジュースだねえ。酸味がほのかに残るか」
「アンドレア領でシャーベット用の葡萄ジュースの開発をしようかしらん、白葡萄のシャーベットも美味しそうですわ」
「そうですわね、ああ、とても良い味ですわ」
お洒落組も葡萄シャーベットが気に入ったようだ。
しかし、子供が野放図にシャーベットを食べまくったらお腹が痛くならないだろうか。
まあ、その時はキュアとか掛けますけどね。
万能薬箱的な聖女さまでございます。
というか、うちの派閥は錬金薬品の専門家もいるから、わりと疾病などには強いな。
コリンヌさんが頭を押さえていた。
シャーベットを一気に食べ過ぎたようだ。
手元のシャーベットをヤギ次郎がぺろぺろとなめていた。
子供の歓声が上がった、マンゴーシャーベットも出来上がったらしく、アイステントに長蛇の列ができていた。
私も並んだ。
テーブルに戻って食べると、ねっとりとした感じで美味しい。
果物系はやっぱり美味しいね。
「あ、これは好きな味かもしれない」
「マンゴーが口に合いますか、王子」
「フルーツシャーベットの王みたいな感じですね」
王家主従とコリンナちゃんがマンゴーシャーベットを食べて感想を言い合っていた。
葡萄よりも好きらしい。
王城の食事にも入るかもしれないね。
しかし、暑い浜辺の木陰でシャーベットを食べる午後は背徳的でとてもよろしいな。
うまうまである。
オレンジシャーベットも配布されたが、昨日食べたので、それほどお客様の食いつきは良く無いね。
私も半分だけお皿に盛ってもらってテーブルに持ってきた。
ちまちま食べる。
んでもオレンジシャーベットは定番なので美味しいね。
アイステントに厨房テントからイチゴアイス液が運ばれてきて、銅のシリンダーに詰め込まれた。
エルマーとアダベルがシリンダーを回しながら冷やし始める。
シャーベット大会のとりを務めるのは、イチゴミルクアイスであった。
シャーベットでは無いけどなあ。
でも、調子が違う物を食べるのは変化があっていいね。
配布が始まる前に、アダベルがシリンダーからごそっとお皿に盛って一口で食べて、とびきりの笑顔を見せた。
みんな競うように並んでアイスを盛ってもらった。
おお、なかなか良い感じのイチゴアイスになってるね。
テーブルに持ち帰って口に運ぶ。
ふわりと良い感じに溶けるね。
パクリ。
ああ、甘酸っぱくて美味しい。
ハーゲンダッツ系のイチゴアイスだなあ。
これは美味しい。
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