第143話 集会場で、剣術コンビとお洒落コンビが盛り上がる
鍛冶部の皆さんに別れを告げて、鍛冶実習準備室を出る。
おおー、外は雨、ざんざん降ってるなあ。
渡り廊下をつたって集会棟へむかう。
気温も下がって肌寒いね。
「私は集会室によるけど、カロルは?」
「私は錬金しないと、また晩餐で」
「解った、またねー」
「またねー」
カロルは校舎に向かう渡り廊下を歩いて去る。
校舎から女子寮までは屋根無いんだよね。
大丈夫かなカロル。
集会棟は155室のドアを開ける。
施錠はされてなかったから誰かがいるな。
「あ、マコトさま、こんにちは~」
「こんにちはですわ」
「お昼ご飯以来だみょん」
「領袖、ごきげんはいかがか」
「みな、こんちわー」
集会室には、メリッサさんと、マリリンと、コイシちゃんと、カトレアさんがいた。
テーブルを囲んで、お菓子を食べながら談笑していた模様だ。
「コイシちゃんとカトレアさんは剣術部は?」
「二年生がいないから、女子は今週はおやすみみょん」
「男子はやってるんだ」
「男子は三年生がいるからやっているな」
「剣術部は女子が少ないみょんよ」
なるほどね。
女騎士を目指す女生徒は少ないもんな。
私はチョークを持って、作り付けの黒板へ板書する。
『今週の土曜日午後に大神殿へ聖剣を見に行く会をやります』
「「聖剣っ!!」」
うお、剣術娘二人が食いついた。
「や、やっぱり見たい?」
「見たいみょん、見たいみょんっ!! 聖剣なんか一生に一度も見れないものみょんっ」
「すばらしい、大神殿の聖剣が見られるとはっ」
「鍛冶部の人が見たいって言うから、派閥の人も見たいかなって、特にカーチス」
「カーチスさまは食い付くみょんよっ!」
「エルザさまも誘おうっ、そうしよう」
嬉しそうであるなあ。
「マコトさま、マコトさま、大神殿に行かれますの?」
「毎土曜日の午後は大神殿に行ってるよ」
「あら、わたくしも行ってみたいですわ~」
「大神殿は荘厳な建物に、素敵な彫刻が沢山ありますのよね。聖夜祭ぐらいでしか行きませんから、皆さんで行ってみるのは楽しそうですわね」
意外な事に、メリッサさんと、マリリンも食い付いたなあ。
これは、聖女派閥総出で大神殿行きかな。
まあ、聖女派閥だしな、信徒の人も多いか。
「マコトさま、その白いおリボン、清楚で素敵ですわね、カロルさまとおそろいでしたわね」
お、メリッサさん、めざといね。
マリリンも食い付き気味だ。
「新入生歓迎ダンスパーティで聖女派閥の目印にしようかと思ってるんだよ」
「まあ、素敵なアイデアですわ」
「すこし、地味かもしれませんわね」
「いや、マリリン、これ、光るから」
リボンに指を置いてスイッチ回路に魔力を入れる。
ピカピカピカカと光るぜー。
「うわああっ、素敵ですわ、素敵ですわっ」
「光るとは、このマリリンの目は節穴でしたわあっ、なんて素敵~~」
「おー、綺麗ぴょんなあ」
「ふむ、薄暗いダンスパーティで敵味方がはっきりわかるなっ」
おい、カトレアさん、お前はダンパで何をする気だ。
「私たちも買えますの、おいくら万ドランクですのっ?」
「光るリボンなんか、何十万ドランクでも買いますわあ~」
「ただであげるよ、手作りだしさ」
「「まあああっ」」
「そりゃ嬉しいみょん」
「他家預かりの私としてもありがたい」
光るリボンは、皆に大好評だな。
「ありがたいですわー、みんなで光るリボンで参加できますのね」
「楽しみですわね、他の派閥の女子たちに自慢ができますわ」
「男子はどうするみょん?」
「ハンカチを光らせるつもりだよ」
「わかった、光っていない者を切ればいいのだな」
「そういう印じゃあないぞ、カトレアさん」
なんという脳筋だ、カトレアさん。
「このリボンの魔法陣は手書きなんだけど、エルマーに協力してもらって、もっと凄いのを量産するから、みんなにはそれから配るね」
「もっと凄いのですのっ?」
「なんか光が動いたりする奴作ってるよ」
マリリンがなんだか思案顔だ。
「これ、売れるんじゃないですかしら?」
「そうねっ、絶対欲しい人はいるわっ、光る装飾具なんて素晴らしいですわよっ」
「ヒルダさんが帰ってきたら相談するかなあ。確かに売れそうではあるね」
「マリリン、王都の光る装飾具の流行は私たちから始まるのよ!」
「コーデとか考えないとー、素敵素敵っ!」
お洒落コンビが盛り上がってるなあ。
たしかに、新入生歓迎ダンスパーティが終わったら売り出してもいいか。
次の聖女派閥のは、別の色合いの光にすればいいし。
もしくは、白い光は聖女派閥限定にするとかね。
うんうん。
ヒルダさんが帰って来たら相談しよう。
布地の専門領地だから、販売路も持ってるだろう。
私のリボンを外して、メリッサさんに付けたり、マリリンに付けたりした。
「マリリンは頭よりも、首に付けて、チョーカー風味の方がいいですわね」
「まあ、素敵ねえ」
うん、マリリンはゴツいから、頭よりも、首に巻いた方が格好いい。
「コイシさまは頭ですわね、可愛くなりますわ」
「うっひゃあ、照れるみょん」
頭にちょこんとリボンを付けたコイシちゃんはコケシのように可愛らしいな。
「私は腕に巻くかな」
「駄目ですわ、カトレアさま、あなたは、お綺麗なのですから、サイドにつけると、あら素敵ですわー」
「お、おう、な、なかなかだな、うむ」
カトレアさんも、鏡に映った姿を見て、まんざらではないようだ。