第1444話 しょうが無いのでマリーナの街に買い出し
飛空艇マニアの先生方は五人、夏用の服を着せないと熱中症で死んでしまうな。
まあ、主に船内で研究しているから冷房は効いているだろうけど、食事とかは厨房テント脇で取って貰わないといけないし。
大雑把に五人の体型をメモしてヒューイに跨がった。
「どこいくのマコト?」
「マリーテに先生方の夏服を買いに行くよ」
「私も行くわ」
「わかった」
カロルをヒューイの上に引っ張り上げた。
「私も私も」
「三人だと狭いのでコリンヌさんは駄目でーす。海で遊んでなさいよ」
「ちえー」
「ヒューイ行くよ」
《わかった》
ヒューイは白い翼を広げて空に舞い上がった。
ヨットが出ていて、子供達が空中の私たちを見て手を振った。
シルビアさんとドリン君が付いているから大丈夫だろう。
一日、山での観光を挟んだから、みんな水着に着替えて海で遊んでいるね。
というか夏空をヒューイで飛ぶのはなかなか気持ちが良い。
日差しがあっついけど我慢じゃ。
高度を上げると大陸が見えて、マリーテ港も見えた。
意外に近いんだよね。
バッサバッサとヒューイが羽ばたいて速力を上げていく。
程なくしてマリーテに着いたのでヒューイの高度を下げて道に着地させて走らせた。
空から陸へ、素早く切り替える事ができるのも竜馬の魅力よね。
中央通りの古着屋さんの前の馬繋ぎ柵にヒューイをつなぎ、カロルが下りるのを手伝った。
「古着を買うの」
「研究者の人は、まあ、何を着ても気にしないからさ」
「ふふ、そうかもね」
この世界、まだ紡績の大量生産工場は無いので安売りの新品つるし衣料があまりない。
メイドさんとか子供向けには少々あるんだけど、大人用になると男女共古着屋さんになるわけだ。
布は自動紡績機が無いと手間が掛かる品物だからねえ。
とりあえず、おっちゃん五人分のシャツとズボン、あと下着を二着ずつ買った。
「下着も?」
「研究者のずぼらさを舐めてはいけないというか、あいつら研究旅行で夏の海岸行くってのに衣服の荷物持って来てないしさ」
「そうね、専門書とか羊皮紙とかは持ってたわ」
下着の用意とかある人間ならば、古着を買いに行く事自体が無いはずなのだ。
うんうん。
私はお養父様で良く知っているのだ。
荷物を収納袋に入れて、マリーテの街をカロルとうろうろする。
ジューススタンドで冷え冷えのオレンジジュースを飲んで一息ついた。
「暑いから美味しいわね」
「市場でジュースを買っておこうか、子供達が欲しがるし」
「そうね、ジュースと果物を買いましょう」
市場に行ったら、大きなラグビーボール型の西瓜があったので買った。
浜辺で西瓜割りをしようではないか。
夏だからな。
オレンジジュースの方もでかい缶で買った。
プラスティックの無い世界だから、液体を運ぶには缶になるんだな。
飲み終わって空になったらお店に持って行くと買い取ってくれる。
そうやって、缶をリサイクルしているんだな。
いや、リサイクルじゃないけどさ。
収納袋が五十五号になって、時間停止も入ったので、冷たいままのジュース缶を入れて運べるな。
さて、マリーテでの買い出しデートも済んだので、ヒューイに乗って島に帰る。
途中、沖合でヨットを見た。
結構釣れているみたいだね。
ドリン君が海竜モードでヨットの廻りで泳いでいた。
ヤクシム島に戻り、ヒューイを蒼穹の覇者号の甲板に着陸させた。
そのままラウンジを通り、螺旋階段を下りてエンジンルームへと入った。
「夏服を買ってきましたから、これに着替えてください」
私は収納袋から、先生方の着替えを出した。
「おお、これはすまないね」
「ああ、これは涼しそうだ」
「三等船室を先生方に割り当てますので、着替えはそちらで」
慌て者の先生がズボンを脱ぎ始めたのできつめの声を出して言った。
「ああ、そうだね、すまないすまない」
先生方はどやどやとエンジンルームを出ていった。
エバンズだけが残った。
「ちゃんと寝かしたり、食事させたりしなさいよ。食事は厨房テントで出せるから」
「解った、でも、ホルボス基地のカタパルトも見たいと言い出したよ」
「げー、まあ、聞いたら見たくなるわね」
「世界でも有数の飛空艇研究者だから、恩を売っておくと、後々何か手伝ってくれるかもしれない」
「まあ、研究者さんとは後で何か良いこととか考えないでやりたいようにやらせるのが良いよね」
「おお、さすがキンボール博士の養女だ、解っているね」
まあなあ。
学者の人達は浮世離れしているけど、なんか純粋な感じで好きなんだよね。
「高名な研究者の人だったのね」
カロルが感心したように言った。
「全員研究書を出版しているよ。飛空艇研究となれば彼らと名前が出る人達だ」
そんな凄い先生方だったのか。
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