第1436話 観光に行くのでテント類に障壁を掛ける
目を覚ますと暖かった。
うりゃあ、どけよライ一郎!
隙あればキャンプベッドに寄り添ってきてやがる。
今朝はちょっと肌寒いのでちょっとありがたいのだが、うっとうしいのは確かなので奴を蹴りあげた。
パタパタとテントの屋根を雨が叩く音がした。
外を覗いてみると、しとしと雨が降っているね。
「雨ねえ」
「やった、ランニングは無しだ」
うひゃほうという感じにコリンナちゃんが喜んだ。
こいつはー。
雨の海ってのはあまり見ないので味わい深いな。
そうか、海にも雨は降るんだな。
空を見上げると、結構な速度で雲が動いていた。
ハリケーンが近づいているね。
パジャマを脱ぎ捨てサマードレスに着替えてサンダルを履く。
脱ぎ捨てたパジャマはダルシーが回収してくれた。
きっと洗濯してくれる事であろう。
厨房テント近くのテーブルはテント屋根が張ってあるので雨はしのげた。
が、ちょっと降り込んで不快であったので障壁で囲った。
「障壁で囲うと快適ね」
「ふっふ~ん」
テーブルテントと厨房テントを繋ぐ回廊を作り、厨房テントも障壁で囲った。
「ありがとうございますマコトさま、助かりますよ」
マリオンさんにお礼を言われた。
なんのなんの。
厨房テントで朝食をトレイに入れて貰ってテーブルに運ぶ。
きょうは丸パントースト、スクランブルエッグ、ソーセージ、カップスープであった。
雨模様の海を見ながら朝ご飯を食べる。
「マコト、テントは畳むのか?」
「面倒だから障壁で囲って行こう」
「大丈夫かね、吹っ飛ばされないか?」
「騎獣レースの大嵐の時ぐらいの障壁で囲うから大丈夫だよ」
「ああ、そうか」
あれぐらいの構造ならば吹っ飛ばされる事はないだろう。
テントを畳んでも良いんだけど、厨房テントは調理器具が重そうだし、おトイレテントをまた掘るのは面倒だしね。
大嵐でもビクともしないぐらいの障壁で囲って、魔導都市に観光に向かおう。
「テントは畳まないのか、それは良いな」
「アダベルのテントの中、散らかってそうね」
「散らかりまくりだ。メイドが入って片付けてくれている」
「自分でもお片付けしなさいよ」
「めんどうだー」
アダベルのテントは、孤児の女の子達との共同テントだから、そんなには散らからないはずなんだが。
「アダちゃんは散らかし魔」
「大変なの、パンツも落ちてる」
「こ、こら、バラすな~」
あはは、さもありなん。
朝ご飯をモシャモシャ食べる。
ダルシーが暖かいお茶を入れてくれてありがたく飲む。
マメちゃんも煮こごりをワシワシ食べているね。
ヒューイもお肉をバクバク食べている。
《うまいうまい》
ヒューイは肉食竜だからのう。
「すぐ魔導都市に行くの?」
「テントを障壁で囲ってから、行くよ」
「楽しみだ……」
魔法系の人間にとっては憧れの都市だからね。
エルマーとかカロルとかは将来、魔導大学へ留学するかもね。
朝ご飯を食べて元気がでた。
頭の上に障壁の傘をはって、あちこちのテントを障壁で囲った。
派閥員は荷物を持って蒼穹の覇者号へと乗り込ませる。
「収納袋があると荷物を考え無くて良くていいな」
「そうでしょ」
コリンナちゃんが喜んでいるので、収納袋をゆずってあげて良かったなと思ったな。
あちこち障壁で囲って、最後はおトイレテントと厨房テントを囲って終了である。
ヨットも浜辺に上げて障壁で厳重に囲った。
地面の深くまで障壁を伸ばしたので、かなりの大風でも大丈夫だろう。
私はヒューイと一緒にテント群をチェックしてから、後部ハッチから彼を入れた。
「それじゃ、またね」
《うむ》
ヒューイは貨物室でごろんと横になった。
私は螺旋階段を上がって二層目に上がり、廊下を歩いてメイン操縦室へと入った。
「みんな船に乗ったね」
【みなさん乗船いたしました】
エイダさんが言うなら全員だね。
メイン操縦室には子供達が群れていて、お洒落組は第一船室、王家主従や剣術組はラウンジへと、ばらけている。
結構人数が多いから、どこかにまとまると混み混みになるからね。
「今日は私が操縦するわ」
「お願いねカロル」
「まかせて」
マメちゃんが影からでてきて袖机ですっくと立った。
うんうん、というか、君は、だんだん大きくなってきて、そろそろ袖机が手狭になりそうだね。
カロルが出力レバーを押し上げてエンジン出力をあげた。
ふわりと独特の浮遊感があって、蒼穹の覇者号は垂直に浮かんだ。
「目標、白天山脈、魔導都市」
【航路図をマップに表示します】
マップに合わせてカロルは操舵輪を回転させて船を回頭させた。
出力を上げて、前進速度を上げて、高度をあげ、雨雲から抜け出した。
雲の上の空は快晴で太陽が出ていてせいせいするね。
魔導都市までは距離があるので、高高度飛行をして速度を稼ぐのである。
さて、知らない街に行くのは、楽しみね。
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