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第1421話 観光勢と合流して開陳亭へいくぞ

 ダルシーが観光勢に連絡しにひとっ走り行った。

 私たちはアリエルさんと怪しい名前の飲み屋さんへと移動する。

 ヒューイとライ一郎が一緒に移動している。


「大丈夫なの、その酷い名前の飲み屋さん」

「午前零時を過ぎると酷い事になりますが、昼間は大丈夫ですよ、聖女さま」

「俺は今度、夜に飲みに行きたいな」

「カーチス、やめろう」

「殿の豪傑踊り……」

「すてきみょん……」

「目を覚ませ、コイシちゃん、カトレアさんっ」


 オルゲートの街の広場にやってきた。

 観光勢の人達と合流である。


「ランチの良い店が見つかったんだね」

「まあ、地元の人が足繁く通う店らしいので」

「それは期待が持てるね」


 まあ、ケビン王子が絶対に入りそうも無いお店だろうけどね。


 街の西側に開陳亭はあった。

 わりとボロいけど、結構広いね。

 ランチの客が結構入っている。


 店の前の馬繋ぎ柵に、ヒューイの手綱と、ライ一郎の引き綱を掛けた。


「おーい、親父、上客連れて来たよ、サービスをしてくれ」

「なんだよ、生臭尼め、教会の司祭でも連れてきた……か」


 大男のハゲの店主はケビン王子を見て顔色を変えた。


「アリエル、おまえ、こいつあっ」

「馬鹿、その優男じゃねえよ、こっちこっち聖女さまだ、本物だぞっ」

「え、聖女……、うあ、本当だ、じゃあ、あんたはっ」

「僕はただのちりめんの産地のボンボンだ、決して王族関係者ではない、いいね」

「は、はああっ」


 店主はケビン王子に土下座する勢いだが、アリエルさんはピンと来て無いようだ。


「王家? 公爵家のボンなのかえ、あんた?」

「まあ、そんな所だよ、尼僧さん」

「やっぱり聖女さまは偉い貴族としりあいで凄いなあ」


 ううん、まあ、彼女は聖女至上主義者なのだな。


「は、はい、その小汚い我が店なんかでランチでよろしいのですか?」

「かまわないよ、出来る物を人数分作ってくれたまえ」

「ははあっ!」

「なんだよ、オヤジ、王子様にかしづくみたいによう」


 開陳亭の大将はアリエルさんをお盆でボカリと殴った。


「いってー」

「黙ってろ馬鹿、斬首になるぞ」

「??」


 大将はお客さんを移動させて我々の席を作ってくれた。


「大将、ランチは何が出るの?」

「へい、聖女さん、ここらはオルゲート牛ってえ美味い牛肉が特産でね、それの串焼きランチでさあ」

「わ、美味しそうね」

「全力で作らせていただきやす」


 店はくすんでいて汚いけど、こういう所の料理は美味しいんだよね。


「それで、迷宮の情報は取れたのかい、キンボールさん」

「ええ、現地のパーティのアリエルさんと知り合いまして、午後は一緒にちょっと潜ってきますよ」

「迷宮は良いなあ、収納袋も欲しいよ」

「いけませんよ、王子」


 護衛のディックさんがケビン王子を止めた。


「あんたは倉庫に収納袋ぐらいあるでしょうに」

「そりゃあ、二百号って国内最大の袋もあるけどさ、僕のじゃないし」

「お小遣いで買って行きますか?」

「自分で掘り出したいけどなあ」


 王家の護衛衆は、絶対に駄目という雰囲気でケビン王子を見ていた。


「聖女さま、聖女さま、もしかして、あの優男くんは、その、王子さまですか」

「そうですよ、あとで頭をさげときなさい」


 事実を告げられて、アリエルさんはぐっと詰まった。


「いやいや、尼僧さん、僕はそういう立場の人じゃ無いから、謝らなくて大丈夫」

「は、はは~」


 大将と、ウエイトレスさんたちが、ランチプレートを持って来てくれた。

 お皿の上には、でっかい牛肉の串焼きと、ポテト、トマトスープに黒パンが付いていた。

 おお、良い匂いだなあ。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」


 パクリ。

 おー、ちょっと堅いが滋味のある良い味わいの牛肉だね。

 歯ごたえがあって良いな。

 もっしゃもっしゃ。


「たしかにこれは美味しいね」

「うん、オルゲート牛も美味いな」


 カーチス兄ちゃんの領は肉の産地だから味が気になるようだね。


「ここではどれくらいの収納袋が取れますの?」

「十号から十五号の、小さいリュック程度の物を日帰りで、派閥員の人数分掘り出すつもりだよ」

「あの、冒険しない私たちも、いただけますの?」

「うん、二年生のガドラガ実習用にね、収納袋は荷物の重さが無くなるから移動が楽になるのよ」

「ああ、確かにリュックしょって移動すると割と辛い、遠足で実感した」


 コリンナちゃんが実感のこもった意見を吐いた。

 遠足は迷宮実習の準備みたいな所もあるんだよね。


「素材の人食い樹の胃袋を私が収納袋に加工するわ」

「ふむ、鞄や袋の部分はマーラー領にお任せください、センスの良い物を仕立てましょう」

「ポシェットとか、ウエストポーチとかにすると良いかもね」

「ウエストポーチ?」

「腰に巻く鞄みたいな、ええと、こんなやつ」


 私はノートを出してウエストポーチの絵を描いた。


「……これは斬新な鞄ですね。ちょっと領で作らせましょう」


 ウエストポーチは無かったのか、この世界。

 変な物があって、妙な物が無いよなあ。


「教会の備品を借りたという事にできないかな?」

「なんでよ、コリンナちゃん」

「あたしみたいな身分の低い者が収納袋を持ってたら盗られる。教会のマークが付いてたら、馬鹿でも、おいそれとは手が出ないだろう」

「ああ、分捕られる恐れもあるのかあ」


 身分制は困ったもんだね。

 教会の紋が入った袋は良いかもしれないね。

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確かに遠足の時も回復薬強奪されていたな。まあ教会のモノってしなくても聖女派閥のモノって言う焼き印とか取れない印を付ければいいかね?
見た目はふつうのリュックにして内ポケットに収納袋の加工するか、聖女印のシリアルナンバー付き貸収納袋ぽくする?
下層貴族もお辛いもんだね。収納袋が貴重過ぎるのか。 アリエルさんはそのままの君でいて。貴重なお馬鹿役ですよ。
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