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第1415話 夕食が済んでお風呂に行きたくなる

 なんだか、ひとっ風呂浴びたい気分である。

 泳いだ後に、水着でシャワーは浴びたので必要無いといえば無いんだけど、その後、汗をかいたのでお風呂には入りたい。


「シルビアさん、近所でお風呂に入れる施設は無い?」

「本島には公衆浴場あるけどな、ヨットで行くか?」


 私は食後のお茶を楽しんでいるみんなを振り返った。


「お風呂に入りたい人!」


 すかさず、沢山の派閥員の手が上がった。

 ちょっとヨットでは運べない感じだな。


「風呂に入るのに飛空艇を使うのか、豪毅だな、わはは」

「まあ、しょうが無い」


 エバンズが蒼穹の覇者号の本体から繋がる温水パイプと水パイプの接続を外していた。


「だったら火山島の温泉施設に行こうぜ、船だと遠いけど、飛空艇ならすぐそこだろうよ」

「いいね、温泉!」


 温泉に行こうぜ、という事になった。


 入浴希望者は船に乗れ、と言ったら、大体の人が船に乗り込んだ。

 エバンズと、子供の何人かがキャンプ地に残る感じになったが、とりあえず、一喝して船に乗せた。


「私は温泉に興味は無いのだが」

「エバンズは強制入浴だよ、海にも入ってないし、不潔だ」

「シャワーはたまに浴びているが」

「毎日入れ」

「俺らは昼に海に入ったから、いいよ」

「そうだそうだ」

「あんまり少人数を残していくのも不安だからね、一緒に来なさい」


 村の三馬鹿とかは不満顔だが、アダベルが行こうぜと強く推したのでしぶしぶ船に乗った。


 これで全員参加であるな。


「火山島はどこ?」

「南西のクラッツエル島だよ、温泉施設もあるよ」

【了解しました。マップに航路を表示いたします】


 エルマーが出力レバーを押し上げてエンジン出力を上げた。

 飛空艇はふわりと離陸して、夕日の中を回頭し、クラッツエル島を目指して飛び始めた。


 いやあ、夕暮れの飛行も雰囲気があって良いね。


 しばらく海上を飛ぶと、もくもくと煙を噴き上げる山のある島が見えて来た。

 あれがクラッツエル島のようだ。


「二百年前に大爆発を起こして、島の人間は一度全滅してる火山島だぜ」

「大丈夫なの、その火山」

「まあ、小噴火はたまにあるけど、それほどの被害は無いよ」


 火山の麓に村ぐらいの大きさの集落があった。

 エルマーは、村の広場にふわりと蒼穹の覇者号を着陸させた。


 シルビアさんと、私が最初に下りると、その横にヒューイがすたりと着地した。

 甲板から飛び降りてきたっぽい。


《温泉に入るぜ》

「ヒューイが入れる所が在るかな?」


 ヒューイは首を振って山腹あたりを差した。

 建物の向こうに、お湯の沸いた池っぽい物があるな。

 源泉かな。

 ヒューイが入って良い物か、島の人に聞いて見よう。


 大きな建物の中から、かけ足で若い男が出て来た。


「ハウエル家のお嬢さん、どうしましたか、いきなり、凄い飛空艇で」

「知り合いが風呂に入りたいって言うから連れて来たよ」

「それはそれはありがとうございます」

「マコト・キンボールです。聖心教の司祭をやっています」

「……、せ、聖女さまじゃあ無いですかっ!! クラッツエル温泉にようこそっ!! 歓迎いたしますよっ!! どうぞどうぞ」


 我々は温泉施設に案内された。


「支配人さん、あそこに見える源泉に、うちの竜馬が入りたいって言ってるんだけど、いいかな?」

「え、八十度はある熱湯ですよ、大丈夫ですか?」

「竜馬は熱に強いから。ホルボス山でもぐらぐら煮立った源泉に浸かってるよ」

「そ、そうですか、それならば問題ありませんが」

「ヒューイ、良いって」

《入ってくるぜ》


 ヒューイは羽を伸ばしてばさりと飛び上がり、飛行してばちゃんと源泉に飛びこんだ。


《うん、丁度良い》


 温泉施設はひなびた感じの建物で、良い雰囲気だった。

 地元のお爺ちゃんお婆ちゃんがロビーでくつろいでいて、入って来た私たちも見て目を丸くしていた。


「あら、若い人があんなに」

「聖女さまの団体らしいぞよ」

「ケビン王子さまによく似てらっしゃる生徒さんもいるわね」

「聖女さまの団体ですからなあ、ほんに王子さまかもしれんぞ」

「まさかまさか、わはは」


 田舎の人はのんびりしていて良いな。


 男女に分かれて脱衣所に入る。

 ここはロッカー式だね。

 鍵をゴム紐で手首に付ける感じのロッカーが並んでいる。


 ちゃっちゃと服を脱ぎ、裸ん坊で浴室に入る。

 清潔なタイル張りの湯船と洗い場で良い感じだね。

 軽く硫黄臭がするけど、それほど強いお湯じゃないっぽい。


 かけ湯をして湯船に体を浸ける。

 ああ、しっとりとした良い湯だなあ。

 色は薄い茶褐色だね。


「おお、あったかいな」

「あ、マメちゃんが出た」


 影からマメちゃんが出て来て、お湯の中を犬かきで泳ぎはじめた。


 ライ一郎がのっそり湯船に入ってきて、とても邪魔であるな。


「お前はでかいんだよ」

「がうがう」


 すんません、という感じにライ一郎は鳴いた。


 わりと広めの浴室だけど、女子の多い聖女派閥の人員がはいると、結構狭い感じね。

 とりあえず交代でお湯に浸かり、体を洗った。


 ヒューイの、熱々の源泉に浸かって上機嫌なイメージが、脳内に伝わってきた。

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ライ一郎くん、君は男湯じゃないのかい?
ライ一郎は熱いのダメなんかな?
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