第1411話 港街マリーテでランチを食べよう
港街をうろうろと歩く。
店のショーウインドウや店頭に並べられた品物を冷やかして歩くだけで楽しいね。
外国のキラキラ光るガラス細工や、赤や黄色の香辛料の香ばしい匂い、色とりどりのどっしりした絨毯、ああ、貿易港って感じだね。
ヒューイの手綱を引き、マメちゃんを足下にまとわりつかせて私は歩く。
コリンナちゃんもジェラルドの隣ではにかみながら歩いている。
初々しくていいねえ。
私も隣のカロルに目で合図して笑い合う。
んで、こういう事をすると、ゆりゆり先輩が眼光を爛々と光らせてガン見してくるのであった。
ふと後を振り返る。
「エバンズがいないな」
「さっき、覇者号のエンジンルームにいたよ」
まったく、飛空艇オタクは困るな。
あとでサンドイッチでも買って持っていくか。
小洒落たカフェがあったので、お洒落組はここでお茶を飲んで一休みのようだ。
孤児達はまだ街を見たいようなので、隊を分けた。
残ったのは、私とカロルとコリンナ、コリンヌの執行部と、王家主従、あと、ブリス先輩、それと孤児の女子組だな。
「僕は市庁舎に行って、行政組織を視察に行きたいのだが」
「オッケー、行ってらっしゃい、そっちは、ジェラルドと、あと」
「私も行ってくるよ」
コリンナちゃんは行政組織視察のようだ。
ブリス先輩も関心があるようで、そちらに入った。
内政組だね。
行ってらっしゃい~。
ぶらぶらと港街を散策する。
「なんだか大きい建物がありますね」
「市場みたいね、コリンヌさん」
昼近くの市場はわりと閑散としていたが、それでも地元の魚や海産物を卸売りしていた。
ウニとかも売ってたが、食べ方が解らないな。
「知らないお魚が一杯だよ」
そう言えばメイド部隊さんたちは市場で買い物と言ってたね。
もう終わって帰ったのかな。
魚市場には誰も居なかった。
市場の近くには漁師さんが食べるのか、大きめの食堂があった。
お昼はここでみんなで食べるかな。
ぶらぶら歩いていたら、お昼前になった。
道を引き返して第三桟橋まで戻る。
行政視察組が帰っていて甲板から手を振ってきた。
お洒落組も私たちの後で戻って来た。
とりあえず、甲板に集合である。
メイドさんたちも帰っていて、食材をあちこちに収納していた。
「マコト様、牛乳と卵、パンを補給しておきました。あと、エバンズ博士から、水を補給するため湖か川に移動してほしい、との事」
ああ、そうか、シャワーとかに水タンクの中身を使うからね。
何日に一度ぐらい補充したらいいのか、後でエバンズに聞こう。
蒼穹の覇者号での長めの旅行は初めてだからね。
いろいろと知らないといけない事が多い。
「お昼はどうしようか、市場の近くに漁師さん相手の安食堂があるけど?」
「リシュエール本島のような市場食堂か、食べ比べるのもたのしそうだね、キンボールさん」
「王子さまなのに、大丈夫なの?」
「別に王族だからといって、毎日ご馳走を食べているわけじゃないんだよ」
「そう、子供も居るから、あまり高い所だとね、迷惑になるかもだし」
「私たちは男の子とか、アダちゃんじゃないから、お店で暴れないよ」
「そうね、孤児院の女子はみんな大人しいわね」
暴れるのはアダベルぐらいなのか。
第三桟橋から、みんなで歩いて市場へと向かう。
閑散とした市場をつっきって、簡素な建物の食堂へと入った。
「二十人ほど、食事はできますか」
「おや、学生さんかね、出来ますよ、いま、良いシマアジが入ってるからソテーにしてあげようね」
「お願いします」
「あいよう」
太ったおばちゃんたちがキビキビと働いてランチを作ってくれた。
今日のランチは、シマアジの檸檬バターソテー、クラムチャウダー、タマネギサラダ、黒パンであった。
結構量がどーんとあるね。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
おおっ、なんという深みのある味わいか。
シマアジ侮りがたし、だなあ。
うまうま。
「お魚、大好き~!」
「チャウダーおいしいねえっ」
クラムチャウダーも、大きいアサリがごろごろ入って美味しいね。
やっぱり地元の物を食べるとテンションがあがるね。
美味い美味い。
沢山食べて充実した。
薄いお茶を飲みながら食後のまったり時間を過ごす。
昼になって気温があがったけど、屋根の下で風にふかれていると存外に涼しかった。
「じゃあ、二時頃まで一時間、自由時間ね。二時になったら第三桟橋に来てちょうだい」
「「「「はーい」」」」
ジェラルドが寄ってきた。
「行政府で話をしたのだが、一週間ほどヤクシム島に滞在すると言ったら、第三桟橋を蒼穹の覇者号用に一週間空けておいてくれるそうだ」
「おお、いつ来ても良いってわけか」
「港の責任者がケビン王子の訪問をいたく喜んでな、そうしてくれるそうだ」
うむ、駐められる桟橋を確保してくれるのはありがたいな。
買い出しが楽になるぞ。
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