第139話 エルマーとジョンおじさんにリボン魔方陣を魔改造される
みなでぞろぞろと校外に出て、ひよこ堂をめざして歩く。
あいにくの曇り空だけど、雨の心配は無さそうだね。
ひよこ堂の前には、クリフ兄ちゃんが居て、こちらを見てげんなりした顔をした。
「なんだよう、嫌な顔をするなよう」
「いや、そそそ、そんな事はないぞ、マコト。いらっしゃいませー」
兄ちゃんは気を取り直して、王子様たちににこやかに挨拶をした。
「うむ、また来てやったぞ」
「……マヨコーンのレシピを……所望する……」
「あ、エルマー、レシピは私が言って、お父ちゃんから取ってくるよ」
「こんにちわ、クリフさん」
「ここは何が美味しいんですの~、良い匂いがしますわ~」
いきなりみんなに話しかけられて、クリフ兄ちゃんが固まっておるな。
とりあえず、皆並べ~、並んで店の中に入れ~。
みんなでパンを買い、ソーダを買って、外へ出る。
ちなみにパンを入れる亜麻袋だけど、返却すると別の袋にパンを入れてくれる。
返却した袋は洗濯して再利用なのだな。
エコなのであるよ。
みなでパン袋を下げて、近くの自然公園へ行く。
敷布を引いて、座って食べるのだ。
風が渡って気持ちがいいね。
「わあ、ロイドさま~、聖女パン、甘くて美味しいですわ~、なんなのこれ~」
「美味しいよね、ジュリエット、ひよこ堂あなどりがたしだ」
バカップルが盛り上がっておるな。
うむうむ。
ジェラルドはしかめっ面でオニオンベーコンを囓っている。
別に不味いわけではないようだ。
「むう、美味いな」
「ジェラルド、もっと美味しそうな顔をしようよ」
「いえ、男たるもの、食事で顔をほころばせるなど。うむ、ですが、美味い、オニオンベーコンか、おぼえておきましょう」
「まったく、ジェラルドらしいね」
ケビン王子は笑いながらホットドックを囓った。
BLか、ケビン×ジェラルドかっ。
妄想していいのかー。
というか、ジェラルド総受けだなあ、やっぱ。
カロルは、今日も甘い物中心だね。
「新作のクリームコロネが美味しいわね、カスタードクリームかな」
「ああ、カロルが好きになりそうかなって、提案してみたよ」
「気に入ったわ、マコトありがとう」
いえいえ、なんのなんの。
そのカロルの笑顔が見れただけで、私は嬉しいよ。
チョココロネも作りたいけど、原材料のカカオがなあ。
輸入品だから馬鹿高いのだ。
あんまり高級なチョコを菓子パンにしても採算とれないからなあ。
バレンタインとかの時の特別な物でないと売れないだろうね。
派閥のみんなとわいわいと食べる、公園お昼ご飯は楽しいなあ。
もう、髑髏団は出てこないだろうしね。
ご飯を食べ終わり、皆でぞろぞろと学園に戻る。
「ケビン王子は、ビビアン様とお昼ご飯は一緒に食べないの?」
「火曜日と木曜日に一緒に食べているよ」
そうか、王子様も大変だな。
ランチで王子とビビアン様は、何を喋っているのだろうか。
A組の教室に戻り、みな、それぞれの属性に分かれて散っていく。
ぼっちの光魔法は、エルマーに引かれて魔術実験教室に行くのだ。
ジョンおじさんとエルマーに、実験される午後であるよ。
「おや、そのリボン、魔法回路が描いてあるのかい?」
「はい、新入生歓迎ダンスパーティで聖女派閥の目印にしようかと思って作った光るリボンですよ」
私はリボンの端のスイッチを起動させて光らせた。
ピカピカピカカ。
「おー、これは目立つねえ、いいねえいいねえ。回路を見せてごらん」
なんだよ、魔法省の長官に見て貰うほどの物じゃないぞ。
と、思いつつも、私はリボンを解いてジョンおじさんに渡した。
「ほほう、良く書けてるね、魔導具を作るのは初めてかね」
「はい、カロルに教えてもらいましたよ」
「オルブライト嬢もなかなかの錬金術師だからねえ。うむ、作動回路のここは迂回できるね」
「……蓄積回路図が……古いか……、今はこうだよ……」
エルマーが羊皮紙に洗練された蓄積回路を描いた。
ほほう、新型なのかー。
「初めてにしては良く出来てるね。ここの回路とここの回路は入れ替えた方が魔力効率がよいね」
魔術省長官と、その息子が、私の描いた魔法陣をどんどん魔改造していくのである。
「布の表面を光が動くと格好いいねえ」
「どうするんですか?」
というか、そんな事できるのか?
「表面を……区切る回路を作る……、そして、光らせる命令回路を入れる……」
「小型にするにはと、これは難しい、あ、そうだ、新式の発令リレー回路を使ってだな」
なんか無茶苦茶専門的になって、私の知識では理解ができないなあ。
錬金インクで書かれた羊皮紙の上の回路がどんどん複雑化していく。
光魔法を注入すると、ぴらぴらと光の列が動いていく。
これは、発展させるとコンピュータのディスプレイができちまうぞ。
「こんな細かい物、一枚一枚描いてられませんよっ」
「銅版画で錬金インクを印刷すればいいよ」
「そんな事ができるんですか?」
「最近サーヴィス先生が開発したんだよ。魔法塔に帰ったら先生に聞いてみてあげよう」
印刷できるなら、どんな細かい魔法回路もぺったんぺったん刷れるなあ。
それは良いかもしれない。
おお、光る布地の量産計画が立てられそうだ。
元の回路でも一枚一枚手書きだとすごい手間なんだよね。
とりあえず、エルマーとジョンおじさんのハンカチに超細かい回路を描いてもらって、光魔力を流し込んだ。
回路を描いたのがエルマーだったので、光り方は弱いけど、そのぶん複雑に動くので目立つねこれは。
「これはすばらしいねっ」
「聖女派閥……、らしい目印だ……、ダンスパーティでも……非常に目立つ……」
ふたりは、胸ポケットに光るハンカチを入れたりして具合を確かめている。
魔術馬鹿二人にも大好評のようだ。
よし、サーヴィス先生も巻き込んで光布を増産するぞっ!




