第1408話 夜はテントでぐっすり
夜はテント泊である。
本当ならカロルと二人きりでただれたテン泊と行きたいところなのだが、コリン姉妹がいるので不埒な真似はできないのだ。
で、コリン『ヌ』のライオンやらヤギやらヘビやらが同衾しようとベッドに上がってくるのでうっとうしくてならない。
邪魔で暑苦しいぞおまえら。
ヘビ三郎はヒンヤリしているが肌触りがぬめぬめで安眠の邪魔だ。
三匹に起こされて、しょうが無いのでトイレに行くことにした。
遠く潮騒が聞こえて雰囲気があるよなあ。
テントの外にでると、月が海に反射して良い雰囲気である。
みんな寝てしまったのか、誰も居ないね。
簡易トイレで用を足して、手を洗った。
タンク式で海水を出しているっぽい。
なかなか考えられているね。
厨房テントに行くと、ブリキのウォータージャグがあって『水』とラベルが貼ってあった。
手前には皮コップも置いてある。
コックをひねって水を飲む。
ああ、ほのかに冷たくて美味しいね。
エルマーが氷を作って入れてたな、これは。
夜の海って怖いけど綺麗で良いよねえ。
満天の星で降ってきそうであるよ。
テントに戻ってベッドに転がって夏掛けを掛けて寝る。
すやあ……。
うーん暑苦しい。
暑いっ!!
がばりと起きるとテント越しに明るい空が見えた。
それは良いのだが、やっぱりライ一郎が同衾しておった。
暑苦しいライオンめっ!
蹴飛ばして転がしてやった。
マメちゃんが起き出して影の中から出て来た。
おお、よしよし。
なんだよ、おまえらとマメちゃんは違うんだからな。
そんなうらやましそうな目で見んな。
マメちゃんを抱いたままテントを出る。
おお、朝の浜辺の景色も良いねえ。
まだ日の出前だけど、明るくなっている。
満ち潮なのか、けっこうテントの近くまで海が迫ってきてるね。
一応浜辺ではない所まで下がってテントを張ったんだけどな。
ギリギリであったな。
テーブルでガラリアさんがお茶を飲んでいた。
目が赤いな。
「あれ、まさか歩哨してくれていたの?」
「え、ええ、し、しましたよ。仕事なので、お気になさらずにい。アイラと交代して、ちょっと寝ますです」
「わあ、ありがとうね、ゆっくりしてね」
「な、慣れてますからー、大丈夫ですからー」
ガラリアさんはケラケラと笑った。
いやあ、仕事と言ってたけど、悪いなあ。
警備してくれて、とてもありがたいんだけどね。
あとでカーチス兄ちゃんたちと相談しよう。
夜間警備は要るからなあ。
さて、テントに戻りパジャマを脱いで体操着に着替える。
コリンナちゃんが目をすがめてこちらを厭そうに見ているな。
「着替えろ、コリンナちゃん」
「せっかくのバカンスなのに……」
「なんであっても健康第一で運動じゃ」
「ぐぬぬ」
カロルも小さくあくびをして起き出してきた。
「おはようマコト、走るの」
「走ろう」
「それは良いですね、私たちも走りますよっ」
コリンヌカルテットは付いてくんな、と言いたいのだが、なんか言えない。
なぜかは知らない。
一生懸命っぽいからかもしれない。
コリンナちゃんが渋々体操着に着替えた。
カロルも体操着に着替える。
「さて、行こうか」
「どれくらい走るんだ?」
「グラウンド三周程度かな」
「しむ」
「ガンバレガンバレ」
「わんわんっ」
マメちゃんもコリンナちゃんを元気づけた。
「では、しゅっぱーつ!」
「「おーっ!!」」
「うへえ」
わっせわっせと砂浜を走る。
乾いた砂あたりは足を取られて難だけど、波打ち際だと砂が締まって走りやすいかも。
マメちゃんも、ライ一郎も、ヤギ次郎も、ヘビ三郎は、ライ一郎にからまってるな。
《走るなら乗れ》
「いや、楽しみで走ってるからさ」
《そうか、俺も走る》
ヒューイも隣を走り始めて、大行列になったな。
テントからパジャマ姿の派閥員が顔を出して、なんだなんだという感じで見てるね。
わはは。
このヤクシム島の砂浜は島の半周ぐらいあって結構長い。
端までいくと磯になっていて、こっちは走れないね。
コリンナちゃんは背中を丸めて、ヒューヒュー言っている。
「ヒューイ、乗せて」
《良いのか、主よ》
「だめよ」
ヒューイは無情にもコリンナちゃんを振り落とした。
落下地点にはライ一郎が居て下敷きになった。
「さて、テントまで帰ろう」
「おにー、あくまー」
へろへろになったコリンナちゃんを引っ張るようにしてテントまで戻り、転がした。
コリンナちゃんがデッキチェアの上で丸くなって動かなくなったので、私とカロルとコリンヌさんは蒼穹の覇者号に乗ってシャワーを浴びた。
「船のシャワーも良いですね」
「三つしかないからねえ、順番になるから困るのよね」
「外のシャワーでも良いんだけど、水着じゃ無いと浴びれないからね」
さて、午前中は対岸の港街で買い物だ。
楽しみ楽しみ。
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