第1404話 ペペロンとグレーテ王女がやってきたぞ
海でバチャバチャ泳いで遊んで疲れて砂浜に戻った。
ふへえ、疲れた疲れた。
テントに戻ってテーブルに付く、ダルシーが冷たいジュースを持って来てくれた。
「わあ、ありがとう、助かるよ」
「夏は水分を取っていただかないといけませんから」
ごくごく、ぷはあ、冷たくて美味しい。
氷が入ってるね。
どうして、と思ったら、エルマーがジューススタンドみたいな所でざらざら氷を出していた。
「ジュースは三樽ほど積んであるのですが、子供も多いですし、三日ほどしたら買い足さなければいけないかもしれませんね」
「島街で売ってるかなあ」
「ジュース? 島だと高いぞ、対岸のマリーテ港に行け、貿易都市だから安いよ」
シルビアさんが声を掛けてきた。
彼女は、日焼けして真っ黒だから真っ白な水着が目に眩しいな。
「そうだね、物資の買い足しもしようか」
「飛空艇が在ると便利だよなあ」
シルビアさんは目の前に注がれたオレンジジュースをがぶりとのんで、また海に駆けていった。
カーチス兄ちゃんと、ディックさん、リックさんがなにか特殊テントを立てていた。
「何これ?」
「トイレ、結構数がいるぞ、子供もいるからな」
おお、それは助かる、結構深くまで掘ってその上に仮設のテントを張っているようだ。
こんな物もあるんだねえ。
「軍隊は生活一式をもって移動するからな、他に炊事場も作るぜ」
「助かるよ、カーチス」
「気にすんな」
辺境伯令息だけど、カーチス兄ちゃんは軍人系だから腰が軽くて良いよね。
わっせわっせと土木作業をこなしていた。
蒼穹の覇者号には綺麗なおトイレがあるけど、数が少ないからね。
これだけの人数がいると確かに一杯になってしまいそうだ。
エバンズが蒼穹の覇者号からホースを出して何か配管をしていた。
というか、居たんだなエバンス。
「なにしてんの?」
「蒼穹の覇者号から水を取れるようにしている、シャワーと炊事場だな。船を動かす時は言え、接続を外す」
「わ、助かるよ」
「気にするな、仕事だ」
そう言うとエバンズは笑った。
というか、あんた夏らしい格好をしなさいよ。
白衣に野暮ったいスーツで、研究者はいかんよね。
空中でバアアン! と大きな音がして、真っ黒な竜が現れた。
「ペペロン!!」
『ぎゃあ、海! 夏!』
「聖女さま、来ましたわよ」
ペペロンは着水してこちらに泳いで来た。
背中にはグレーテ王女が乗っている。
「そういや、夏祭りに来るって言ってたのに来なかったね」
「行きたかったのですけれども、お父様にとめられましたのよ」
『残念だった』
そりゃあ、とんぼ帰りしてアップルトンに戻りたいと言っても予定とかあるだろうしね。
「バカンスも三日しか許可されませんわ、明後日には帰りますの」
ペペロンは浜辺に上がってグレーテ王女を下ろし、人化した。
「わあ、太陽熱い、すごい南だねっ」
「ペペロンきたかー」
「きたぞー、アダベル-」
二匹の人化した竜は胸を張って笑い合い、ハイタッチをした。
「そういやナージャは?」
「バカンスにパスカル部長さまが来て無いと聞いて王都で下りましてよ」
「それはたすかる~」
コリンナちゃんがデッキチェアの上で胸をなで下ろしていた。
「お、新しい奴が来たな、テントを出そう」
「そうだな」
カーチス兄ちゃんと、ディックさん、リックさんが蒼穹の覇者号の船尾に行ってテントの包みを取り出した。
ペペロンとグレーテ王女と一緒にワイワイ言いながらテントを立てた。
グレーテ王女とペペロンには予備の水着を渡した。
赤い水着と白の水着で、なかなか良く似合っているね。
さっそく二人は海に飛びこんで行った。
「コリンナちゃんも着替えて海に行きなさい」
「め、命令形!」
彼女もしぶしぶ紺のセパレーツの水着に着替えた。
「泳げるの? コリンナちゃん」
「泳いだこと無い」
「そうかー」
「そうねー」
突発的に聖女さまの水泳講座とあいなった。
この世界、水泳の授業は無いので、わりと泳げない人が多いのよね。
なので、カロルと一緒に簡単な水泳技術を教えた。
まあ、平泳ぎぐらいだけどね。
「わははは、トトメス泳ぎだ、わははは」
平泳ぎがアダベルのツボに入ったみたいで、真似をして大受けしながら彼女は泳いでいた。
平泳ぎでも、ものすごい速度が出るのがアダベルだなあ。
ペペロンとグレーテ王女もばちゃばちゃ泳ぎ始めた。
二人とも覚え立ての平泳ぎで楽しそうだな。
「もっと早い泳ぎ方は無いのか、マコト」
「クロールしてみる? カーチス」
「どんなだ?」
カーチス兄ちゃんにクロールを教えてみた。
運動神経抜群なので、すぐ覚えてバッシャバッシャ泳ぎだした。
「これは早いな、いいな」
男衆やカトレアさん、コイシちゃんとシルビアさんがクロールを覚えてバシャバシャ泳ぎ回っていた。
まあ、楽しそうでなにより。
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