第1400話 リシュエール諸島に到着した
蒼穹の覇者号は順調に高度を上げて航行している。
結構高く飛んでるから街がおもちゃみたいよね。
操縦しているのはカロルだ、まあ、自動操縦に入ったら見てるだけなんだけどね。
モニターで船内をチェックすると、スイートでお洒落組がくつろいでお茶とか飲んでいるし、ラウンジでは剣術組が楽しげに会話をしているようだ。
子供達は甲板に居て、外を見たり、ごろごろ寝転んだり、ヒューイをかまったりしていた。
高高度ではないので、船内で気密するほどではないのだな。
船がアップルトン南部に入ると一面の小麦畑で、ここら辺がゆりゆり先輩の実家あたりっぽい。
小麦は去年の秋に種まきされて、収穫は今頃だ。
真っ黄色に色づいた小麦畑が広がっているね。
今年も良い小麦が取れますように。
小麦粉はパン屋の生命線だからね。
前方の遠くに海が見えて来た。
おお、南の海だぜ。
航法マップを見ると、あと一時間で諸島の中央街に着けるようだ。
島の街についたら御領主のシルビアさんのご両親に挨拶をして、島への滞在を許可してもらおう。
シルビアさんは良いよっていったけど、やっぱり御領主様の許可が無いとね。
島街で着陸してランチと行きましょうか。
海が見えたので、子供達が甲板の先ですずなりになって前を見ていた。
海はなあ、見えると感動物だからなあ。
孤児の中では海を見るのが初めての子もいるはずだ。
「カロル、操縦おねがいね」
「甲板に行くのね、行ってらっしゃい」
私は艇長席から滑り下りてメイン操縦室を出た。
中央通路でお茶ワゴンを押しているミーシャさんとすれ違った。
黙礼する。
メイドさんは休まず働いて偉いよね。
螺旋階段を上がってラウンジに入ると、わっと剣術組たちの会話が聞こえて来た。
盛りあがってんな。
「おう、マコト、一緒に喋らないか?」
「いや、海が見え始めたから甲板に行って子供達と見るんだ」
おお、と言ってみんなが窓の外を見た。
海が近くなっているね。
ラウンジから甲板に出るとわあっと海の匂いがした。
後を見たらラウンジにいた奴らがぞろぞろと後にくっついてきていた。
「うおお、海海」
「もうこんな所まで来たのか、飛空艇ははええなあ。いつもなら王都から一週間はかかるんだぜ」
「王都からあっという間で世界が小さく感じるんだよねえ」
そりゃあそうだよね。
前世の飛行機でも時間を飛び越している感じがしてたしな。
こっちの世界では飛び越し感が半端ないだろう。
甲板の先頭で、子供達とヒューイが先を見ていた。
「あ、マコト、海海、青い青い」
「本当ね」
「あとどれくらいで着くんだ」
「一時間ぐらいよ」
「海に入ってからも遠いんだなあ」
「それはまあ、島だしね」
久しぶりに見る海は青くて綺麗だった。
良いよねえ、海。
「マコトさま、お茶をどうぞ」
「あ、ありがとうダルシー」
ダルシーがテーブルにお茶を用意してくれたので座って飲む。
剣術部たちも、王家主従も、テーブルに座ってメイドさんからお茶とクッキーを貰い楽しんでいた。
子供達はジュースをたんまり飲んだのでお茶には興味が無く、興味があるのはクッキーの方のようだ。
「ダルシークッキーくれー」
「よろしいですか、マコトさま」
「一枚ずつね」
「「「「わあいっ!」」」」
子供達もテーブルに付いてクッキーとジュースを楽しみ始めた。
ダルシーは煮こごりの皿をもってきて、私の影をぽんぽんっと叩いた。
マメちゃんが影から首だけだして、モシャモシャと煮こごりを食い始めた。
無精をしては駄目だぞ、マメちゃん。
蒼穹の覇者号は海に出て、海上を一直線に飛ぶ。
水平線あたりに島が見えて来た。
「あれだ、あれが私の家の領、リシュエール諸島だ」
「おお、建物が真っ白だ」
「島では石灰が出るからな、真っ白に塗るんだ」
「白い島だ」
ギリシャのサントリーニ島みたいであるね。
私がお茶を飲み終わってメイン操縦室に戻ると、カロルが島の領館前へと着陸する所であった。
あんまり馬車も無いのか、馬車溜まりも狭いね。
「お、親父とお袋が出て来た、さあ、挨拶すっか」
「そうだね、ご挨拶をしよう」
私はシルビアさんと連れだってタラップを下りた。
「これはどちらの……、おや、シルビアではないか、どうしたのかね」
「聖女さんが避暑地を探してたから、うちにつれて来た、ヤクシム島のビーチを貸して欲しいってさ」
「ば、ヤクシム島なんか水源が無いぞ、聖女さまでしたら、どうぞ我が領館へお泊まり下さいませ」
「いえ、訪問じゃなくて、バカンスで海遊びをしに来たので、小島の浜を貸していただければ問題ありませんよ」
「しかし、水が」
「蒼穹の覇者号には大型の水のタンクがありますから問題はありませんよ」
「島街なんか興味は無いってさ、浜辺を貸す約束で送って来てもらったんだよ」
「そうか、これはこれは、愚娘がご迷惑をおかけしまして、聖女様のご訪問はとても嬉しゅうございます。無人島でありましたらどうぞご自由にお使い下さいませ」
「ありがとうございます。御領主様」
「あたしはこいつらとキャンプしてるからさ、後で取りにくるから島の特産物を用意しておいてくれよ」
「まったく、シルビア、お前という奴は。まあいい、ご馳走を用意しておくよ」
「まあ、帰って来て実家にも泊まらないの、シルビア」
「悪いな、かーちゃん、一週間ほどだから後でまた来るよ」
「ご飯ぐらい食べにきなさいよ」
「わかったわかった」
なんだか、御領主夫婦はシルビアさんの両親らしく、おおらかで良い人みたいだね。
さて、許可を取ったので、ヤクシム島へと行こう。
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