第1396話 アイス完売午後はもぶらぶら
「アイスは完売で~す、またの機会をお待ち下さい」
「ええ、秋祭り、秋祭りには売るよね」
「さあ、どうでしょう」
というか、秋にアイス食べたいのか村人よ。
牛乳缶二本分あったアイス液はすっかり使われて、みんなのお口に入ったのであった。
「ぐわあ、つかれた~~」
「お疲れアダベル……」
アダベルとエルマーはずっとアイスの世話をしていたからなあ。
「お疲れ様、お昼食べなよ、三人とも」
「食べる!」
「ありがとうマコト……」
「あ、ミートパイ美味しそう」
アイスチームに買ってきたガレットやミートパイ、シチューなどを与えた。
「午後は色々廻ろう、輪投げとかしたい」
「アダちゃん一緒にあそぼー」
「解った、今行くぞ」
子供達が迎えにきて、アダベルは走って行った。
仲良しでいいね。
私たちも色々廻ろう。
「治療のブースを作れば良かったわね」
「ああ、そういう手もあったね、でもまあ、今回はいいや、秋祭りにね」
「マコトにお祭りで終日働かせてもなんだしな。健康診断は別の日に一日かけてやろう」
まあ、そうだね。
近隣の村や街にもチラシを配って調子が悪い人に来て貰ってもいいかな。
今回の夏祭りはあまりホルボス村外のお客さんは来て無いようだった。
温泉があるから、王都からお客さんを呼び込んでもいいしなあ。
まあ、ホルボスの里ヘルスセンターが出来上がれば巡礼客でうはうはだろうけどね。
広場の西で楽隊が来ていて、ブンチャカした曲にのってみんな踊りを踊っていた。
子供や村人、アダベルやティナちゃん、クリフ兄ちゃん、村の三馬鹿なんかもなかなか上手に踊っているぞ。
「マコトも来いっ!」
「ようし、カロル、コリンナちゃん、一緒に踊ろう」
「解ったわ」
「お、おう」
ブンチャカした曲にのって輪になって踊る踊る。
ああ、楽しいね。
ケビン王子とジェラルドも輪に混ざり、踊る踊る。
良く見ると楽団の半分は甲蟲騎士さん達でなかなか上手いね。
ふいー、踊った踊った。
ダンスは楽しいね。
男衆が集まってレスリング大会をしていた。
「さあ、俺に挑戦する村人はいないかっ」
「ははは、負けませんぞ、ブロウライト様」
カーチス兄ちゃんが半裸になって、村人をちぎっては投げちぎっては投げしていた。
ケビン王子も挑戦したが、あっさり投げられた。
ジェラルドは【人間発電所】を掛けられて悲鳴を上げていた。
やっぱ、カーチス兄ちゃんは強いな。
「よっしゃ、勝負だ、ブロウライト卿!」
「あ、いや、シルビア嬢、女子はその」
「問答無用!」
シルビアさんが上着を脱いでカーチス兄ちゃんと取っ組み合った。
なかなかシルビアさんも強かったが男子には勝てなくて投げ飛ばされた。
「くそう、もう一本」
「いや、女子はさ」
「わはは、殿! 私に胸を貸してくださいっ!」
「いや、カトレア、お前もやめろ」
とはいえ、取っ組み合うと女子でも真面目に投げ飛ばすカーチス兄ちゃんであった。
なんか徒手系の武道もやってるなこれは。
ヒューイとライ一郎が子供達を満載してお祭り会場をのっしのっしと歩き回っていた。
なんというか、カオスな光景だよなあ。
「楽しいわね、マコト」
「うん、夏休み最初に良い思い出が出来たよ」
「秋までには地獄谷も整備して、あっちでもお祭りをしたいねえ」
「コリンナちゃんも頑張ってくれい」
ジェラルドと一緒だから地獄谷整備も楽しいでしょうよ。
うんうん。
宿屋の一階でそば茶を飲んでソバケーキをつまむ。
「きっと、来年の夏祭りも再来年の夏祭りも違うでしょうね。いろいろ変わって楽しいお祭りが続くのよ」
「そうともさ、秋祭りも来年の夏祭りもいろいろ企画しようい」
日本のお祭りみたいに金魚すくいとか綿飴とか、色々作りたいね。
そして夜は花火だね。
うん。
こっちの世界では花火はどこに発注するんだろう。
去年の王都の夏祭りの最後で打ち上がっていたから、どっかでやってるんだろうね。
たまには村の共同浴場へと行ってみた。
木造の湯船で野趣があるお風呂だ。
あんまり人数が入れないので、カロルとコリンナちゃんが一緒だ。
「泉質は邸宅の湯と一緒だな」
「木の湯船とか、雰囲気が違うよ」
「お祭りの歌が流れてる中でお風呂はなかなか素敵ね」
あー、あったまるな。
マメちゃんも出て来て湯船で犬かきである。
君はお風呂が好きだね。
「お祭りは何時まで?」
「さあ、夜も飲んで歌って食べて騒いでいるみたいだけど」
「晩ご飯が終わったら、お養父様、お養母様と、アルエ家の人、クリフ兄ちゃん、あとダシャ婆ちゃとお孫さんたちを送っていかないと」
「ああ、世間は明日月曜日ね」
「私たちは夏休み継続だ」
「派閥員は今晩も邸宅で一泊して、明日朝からリシュエール諸島へ向かおう」
「そうね、海、楽しみだわ」
「あ、寮に行ってコリンナちゃんの体操着をとってこないと」
「うえ~~」
コリンナちゃんが潰されたカエルのような声をだしたのでカロルと二人で笑ってしまった。
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