第136話 カロルとコリンナちゃんと晩餐、あとジュリ
みなで食堂に入る。
わりと早い時間なので、まだ混んでないね。
「あ、マコト、こんばんは、今日は早いね」
クララがにこやかに話しかけて来た。
「まあねえ、あ、カロルとジュリちゃん、ここでお金払ってね」
「あらっ、ジュリちゃんですって、なんだか嬉しいです~」
ジュリエット嬢が嬉しそうにくねくねした。
名前が長くて言いにくいだけだー。
「まったく、たらしめ」
「たらしよね」
うっさいな、カロルにコリンナちゃん。
カロルが懐からお財布を出して、小銀貨を五枚払った。
ジュリエット嬢のメイドさんがクララにお金を払う。
カウンターで、今日のメインメニューを取り、トレイに乗せる。
今日のメニューは、春キャベツと豚のソテーであった。
おいしそう。
他は、ポテトサラダ、卵とトマトのスープ、黒パンであった。
全部をトレイに乗せて、コップにお茶をついで近くのテーブルに持って行く。
「お、お嬢様、わたしがやりますから」
「だめ~、みんながやってるから、わたくしもやるのー」
あわわ、ジュリエット嬢がトレイを持って歩いてくるのだが、慣れてないのか、ぐらぐらして上の物が落ちそうであるよ。
おっと、コップが倒れそうなのをコリンナちゃんが救った。
「あ、ありがとう、コリンナさま」
「いいえ、ジュリエットさま」
なんとか、テーブルにジュリエット嬢のトレイは軟着陸をした。
汗をかいたぜ。
「トレイを運んだのなんか初めてよ、たのし~」
侯爵令嬢は浮世離れしてんなあ。
「「一日の糧に女神さまへの感謝をささげます」」
だから、カロルにコリンナちゃん、私を拝むな~、そしてジュリエット嬢も拝むな~。
「女神じゃないから、拝むなよう」
「にたようなもの」
「そうそう」
「ありがたいのよ~」
口を揃えるなよっ、おまいら。
ほっといて食べよう。
パクリ。
ん~~~~~~、豚肉が良い味で美味しい~~~。
ソースが深みを出していて美味しい。
キャベツの甘みが良く合う~~~。
「今日も美味しいな」
「わあ、すごいすごい」
「わっ、うそ、こんなに美味しかったのー?」
「ここのシェフはイルダさんって言って、黄道亭の娘さんなんだよ」
「あー、確かに味が似てる~、ロイドさまに連れて行ってもらったよ~、おいし~」
この味が五百ドランクなら安いなあ。
おいしいおいしい。
あー、美味しい物食べると充実するよねー。
「ああ、トマトと卵のスープも美味いなあ、しみるしみる」
「しみる~、あと、みんなと食べるとたのしい~」
「それはありますね、ジュリエットさま」
「そうよねー、カロリーヌさん」
二人は顔を見あわせて笑った。
いいねえ。
やっぱり食事はみんなでたべないとね。
一緒に食事をすると、なんか仲良くなれた感じもするしね。
はあ、美味しかった。
さて、片付けて出よう。
食堂が混み始める時間だし。
「あ、あら、デザートはありませんの~」
「ないよ」
「ない」
「ちょっと寂しゅうございますわー」
「お嬢様、お部屋に帰りましたら、プリンがございますわよ」
「ま、それは良いアイデアだわ。帰ってプリンを食べましょう」
いいなあ、侯爵令嬢は。
ジュリエット嬢はトレイを食器返却口に出してから、こちらを向いてカーテシーを決めた。
「みなさま、今日はとても楽しゅうございましたわー、また明日もご一緒させてもらってもようございますか?」
「私はかまわないわよ」
「また、ご一緒しましょう」
「私も歓迎いたしますわ、ジュリエットさま」
「ありがとうございます、うれしいですわ」
ジュリエット嬢はメイドさんを連れて食堂を去って行く。
後ろから見ても中二ドレスだのう。
「変な人だけど、まあ、仲良くやれそうだな」
「失礼よ、コリンナ。でも、なんとかなりそうね」
「友達少ないみたいだから仲良くしてあげてね」
「ま、派閥の為だし、しょうがないね」
「侯爵令嬢様だしね、多少はしょうがないわ」
食堂から出た廊下で、メリッサさんとマリリンに出会った。
「あら、マコトさま、もう晩餐をおすましに?」
「うん、メリッサさまはこれから?」
「残念ですわ、ご一緒したかったのに、今日はマリリンと一緒に食べますのよ」
「食堂の料理が美味しくなって、嬉しいですわ。マコトさまのおかげなのでしょう?」
「まーねー、じゃあ、またご一緒しましょう」
「はい」
「おねがいしますわ」
しかし、マリリンはでかくてゴツいのにちゃんとご令嬢で良いね。
カーチスの元で育つと、女性らしい気遣いと戦闘力を持つ女騎士になれそうだ。
女騎士系は、リンダさんを筆頭に、がさつな人多いからねえ。
王妃さまの護衛とかにも抜擢されそう。
たしかに逸材であるね。
「派閥の人間増えたねー、一週間前はこじんまりしてたのに」
「最初は、マコトと私と、カーチス卿とエルマー卿の四人だったのにねえ」
ああ、その頃がずいぶん昔みたいに感じるなあ。
なんでまたこんなに膨れ上がったのか。
まあ、人が沢山いればいるほど、取れる手段が広がるから良いんだけどさ。




