第1379話 カロルと村に出てお祭り準備を眺める
ダイニングでのんびりしているのも飽きたので村を散歩する事にした。
「カロルも行かない?」
「そうね、行きましょうか」
パスカル部長とナージャのデートの心配よりも、自分とカロルのデートですよ、断然。
派閥員も、子供達も、何人かのグループに分かれて色々し始めた感じだね。
ティルダ王女たちは孤児達とクレヨンでお絵かきを始めた。
ヒューイを描いているのか、なかなか上手いね。
「私も行きましょう」
「ガウガウ」
「メーメー」
コリンヌさんが寄ってきおった、ヘビ三郎も混ぜろと寄ってくる。
私はカロルとデートしたいんだよっ!
空気読めようっ。
と、思っていてもコリンヌさんは読まないからなあ。
「よし、私とペペロンと行こう」
「え、アダベルさま、なんでですか?」
「私がライイチローに乗りたいからだ、ペペロンはヤギジローに乗れ、コリンヌはヘビサブローだ」
「いや、ヘビサブローには乗れませんよ」
「ヤギジローというのか、わははは、可愛い奴だなあ」
「メーメー」
よし、アダベルのお陰で場が混沌とした。
今だ!
私はカロルの手を取って玄関の方へ逃亡した。
「あはは、ほっとくと、みんなで散歩になってしまうものね」
「みんなで行くのも楽しいけど、やっぱりカロルとお散歩したいしさ」
「ありがとう、私もマコトとお散歩したいわ」
うひひ、これだよ、この二人でいる時の雰囲気が大事なのさ。
私たちは手を繋いで村への道を歩き始めた。
村は週末に夏祭りなので、あちこちでトンテンカンカンと大工仕事をしていた。
いつもは静かな村が慌ただしいのは珍しい。
村人が私たちを見つけて挨拶をしてきた。
私たちも挨拶を返して村を見て廻る。
宿屋の前のテーブルで風呂上がりっぽい騎乗部さんたちがくつろいでいた。
「やあ、聖女さん、ここは良い村だねえ」
「いいでしょ、馬ならすぐ来れるよ」
「そうだねえ、また遠乗りで来ますよ」
「ああ、良い温泉でしたよ」
みんなニコニコである。
お礼の言葉を聞いて、私もニコニコで、ついでにカロルもニコニコしていた。
「パスカル部長は?」
「ナージャさんと一緒にうろうろしてますよ。いや幸せそうで何よりですよ」
「それは良かった」
エバンズとカーチス兄ちゃんとエルマーが歩いていた。
取り合わせが珍しいな。
「お風呂はどうだった、エバンズ」
「良い湯だったな、この村はもうすぐ夏祭りか」
エバンズが遠い目をした。
きっと故郷のお祭りを思い浮かべているのだろうな。
「エバンズもお祭りに来なよ」
「土曜日だったか、いいかもな」
「んじゃ、お義姉様の結婚式が終わったら、みんなで飛空艇で来るからね」
「わかった」
エバンズはうなずいた。
やっぱ、ずっと基地に籠もって整備ばっかりしてたら背中が煤けてしまうからね。
ライ一郎に跨がったアダベルと、ヤギ次郎に跨がったペペロンが走って来て、通り過ぎた。
「まって~~」
その後をヘビ三郎を首に巻いたコリンヌさんが追いかけて行った。
なんだか、カロルと目を合わせて声を出して笑い合ってしまった。
村を歩きまわった。
あちこちの農家や畑が潰されていた。
ホルボス教会の建て直しと、ホルボスヘルスセンターと、村役場を建てるための用地整理みたいだね。
アシル親方たちがなにやら忙しそうに作業をしていた。
「こんにちはアシル親方、元気だった?」
「元気にゃー、聖女さん、騎乗レース優勝おめでとうにゃ」
「わ、ありがとう、親方」
アシル組の作業員さんたちはみんな獣人だから可愛いな。
「いつ頃教会できるかな」
「まだまだ、何年もかかるにゃー、俺っちが死ぬ頃できるかにゃー」
「うは、教会建築は時間が掛かるのね」
「当然にゃ、でも聖女さんの教会にふさわしい凄いのを建てるから待ってるにゃ」
「ありがとう、待ってるよ」
まあ、私が死ぬまでは自分の領地だろうから、大人になるころには教会もヘルスセンターも出来てるかもね。
「ホルボス村が発展するのが楽しみね」
「そうそう、地獄谷も一緒に発展させて、居心地の良い領地を作るわよ」
「マコトの領地だから、きっと素敵な領地になるわよ、絶対」
「うん、ありがとう、カロル」
カロルに太鼓判を押して貰って凄く嬉しかった。
ここが世界で一番幸せな領地になると良いなあ。
村人も健康で、地の恵みも沢山取れる、素敵な領地が良いね。
巡礼の信者さんも沢山来て、村が発展すると良いなあ。
宿屋の下の酒場で、ボリス先輩と村長が何やら打ち合わせをしていた。
「あ、これは御領主さま、お帰りなさいませ。騎乗レースで優勝なすったとか、おめでとうございますぞ」
「ありがとう、なんの打ち合わせ?」
「村祭りは人出が多くなりそうだから、馬車の溜まりとか確保しなければと思いまして」
「わ、それは大事ね」
そうか、今年のお祭りは私がいるから、王都からお客さんが沢山来るかも、なんだな。
王族も遊びに来そうだなあ。
「今年の夏祭りは派手になりそうですわい」
「教皇様とか、教会関係者も来たがりそうよね」
「宿屋が足りませんなあ」
「最悪の時は邸宅と、蒼穹の覇者号を解放するわよ」
「それは助かりますな。おねがいいたします」
やっぱりお祭りの規模が大きくなると色々と問題が出て来そうだね。
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