第1376話 王城で祝勝パーティランチ
パイロット組が王城に着くと他の人達は待合室で待っていた。
アダベルとペペロンが仲良く椅子に腰掛けて足をぶらぶらさせて、子供達が駆け回っている。
「というか、王城、初めて」
「オヤジが卒倒する」
「末代までの自慢話だ」
村の三馬鹿が王城の待合室の豪華さに飲まれて挙動がおかしい。
まあ、あんまり平民が来れる場所じゃ無いよね。
私のひよこ堂の父ちゃん母ちゃん兄ちゃんも王城には来た事が無いはずだ。
騎士学校の騎手たちはもう来てるな。
騎馬で向かっている他の学校の騎乗部と、馬車で移動している貴族さんたち待ちらしい。
派閥のみんなもベンチに腰掛けたりしておしゃべりをしてるね。
しばらく待っていると各校の騎乗部部員が集まってきて、貴族さんたちも揃ったようで、会場のドアが開いた。
おお、なんだか立食パーティな感じだね。
大ホールのテラスには『成層圏の招雷号』が鎮座している。
大型飛空艇だから見上げる感じだね。
とりあえず、『魔法学園騎乗部』と書かれた席札のあるテーブルについた。
アダベルとペペロンがお料理ブースの方に行こうとしてメイドさんに止められていた。
王様の挨拶の後らしい。
給仕さんがそれぞれの人の所に来て飲み物を配っているね。
「聖女さま、お飲み物はいかがいたしましょう」
「聖女さん、乾杯だからシャンパンシャンパン」
「あ、そうか、じゃあ、シャンパンで」
「かしこまりました」
パスカル部長の助言でシャンパンを頼んだ。
というか、この世界にはシャンパーニュ地方が無いのでスパーリングワインなのだが、まあ、堅いことを言うまい。
給仕さんはシャンパンをグラスに入れて私に渡してくれた。
というか、マヌエルまでシャンパンなので笑うな。
王様が壇上に出て来た。
「やあ、本日の騎獣レースは素晴らしいものであった。レースで結果を残せた者も、残せなかった者も、仲良く美味しいランチを食べて、お酒を少し飲み、大いに交流しようではないか。それでは、乾杯!」
王様の音頭で私たちはグラスを合わせ、乾杯をした。
おお、シュワシュワして、わりと甘口のシャンパンだね。
うまいうまい。
子供達にはオレンジジュースが配られていたようで、みんなニコニコしながら飲んでいる。
お客さんがお料理ブースの方に歩き出した。
アダベルとペペロンが走って行き、子供達も続いた。
「いやあ優勝したねえ」
「いつもドンケツでパーティの料理が不味かったんだけど、今日のシャンパンが美味しい」
「聖女さんのお陰だよ、ありがとう」
「いやいや、みんな頑張ったしさ」
「ああ、また来年も勝ちたいねえ」
「各校に古式テイムを教えるからねえ、なかなかなあ」
「騎士学校は軍馬でも強いからなあ。あいつらの専門だし」
「ペガサスは買い損かねえ」
「というか、騎士はペガサス乗らないだろ、飛行騎獣は偵察兵だぜ」
シャンパンを飲みながらの噂話は楽しい。
が、そろそろ何か腹に入れよう。
「お料理取ってくるよ」
「俺も行こう」
「俺も俺も」
結局みんなで料理ブースである。
途中、料理を山盛りにしたお皿を持った、アダベルとペペロンとすれ違った。
お、ダンパとか、ジーン皇国歓迎パーティとかともお料理のメニューが違う感じだね。
どれも美味しそうだね。
お肉とサラダと魚フライをバランス良く取って、あと白パンを貰ってテーブルに戻る。
うんうん、おいしーっ。
シャンパンをカプカプ飲むと酔っ払いそうだけど、まあ、良いのだ、優勝なんだからねっ。
ちょっと食べてから、あちこちのテーブルに行って交流をしよう。
というか、聖女派閥のみんなは近所のテーブルに居るね。
コリンナちゃんにナージャがからんでいるなあ。
「ナージャさんナージャさん」
「なによ、今、ヘビ眼鏡との再戦の約束を……」
「パスカル部長が話したそうにしてるよお~」
「え、あ、そ、それは、そうか……、うん」
ナージャが頬を赤く染めてパスカル部長の所に行ったので、コリンナちゃんがサムズアップした。
「ゆ、優勝おめでとうございます、パスカルさま」
「あ、ど、どうもどうも、ナージャさんに祝福されるのが一番幸せです」
「あはは、そんなそんな、ケルピーのジョガーが沢の大瀑布の上を走っていたのがかっこ良かったですよ」
「えへへ、いやあ」
うわ、恋愛下手同士の甘々会話がすげえ。
砂糖吐きそう。
お客さんが動き始めて、私にもちょこちょこ挨拶してくる貴族の人がいる。
基本的に私をベタ褒めなので照れくさいね。
こういうのは社交の場なので、挨拶をして、ちょっと話したら別のテーブルに行く。
私もシャンパングラスを持って歩き回る。
まだ騎乗服にヘルメットとゴーグルなので結構目立つね。
子供達のテーブルに行くと、アダベルとペペロンが喰い比べをするように料理をガンガン食べていた。
グレーテ王女はメリンダさんとトール王子とティルダ王女と話していた。
王族外交だなあ。
「グレーテさんは、今晩こっちで泊まるの」
「ペペロンの魔力を溜めないといけないから、また女子寮の一室をお借りしますわよ」
「良いですねえ、女子寮にお泊まり。お部屋は空いてないかしら」
メリンダさんがうらやましがった。
いや、あなたは秋に留学に来るんでしょうに。
まあ、事前学習な感じかな。
「一室空いておりますわよ、手配いたしますか、メリンダさま」
「まあ、ユリーシャさまよろしいのですか?」
「ええ、かまいませんよ」
ゆりゆり先輩はそう言ってにっこり笑った。
そういや彼女は女子寮の副舎監だったね。
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