第1375話 それでは魔法学園に帰るぜ
とりあえず、麓に観客さんと王族さんを運び終わったので、蒼穹の覇者号に騎乗部とアダベルと子供達、それからペペロンとグレーテとナージャを乗せた。
「私も私も、蒼穹の覇者号に乗りたいですっ」
飛空艇令嬢のメリンダさんが近づいてきた。
「え、『成層圏の召雷号』はどうするの?」
「副操縦士がおりますから、先ほど伝令に頼みました」
「そうなんだ、では、蒼穹の覇者号へようこそ」
「はいっ!」
メリンダさんは満面の笑顔だなあ。
飛空艇が大好きなんだろうなあ。
山頂の観客席などは工兵さんが撤収の作業をしていて、お祭りの後な感じで何だかもの悲しい。
メリンダさんを連れて蒼穹の覇者号のメイン操縦室に入ると、子供達とアダベルとコリンヌカルテットのお陰でずいぶんカオスな感じになっていた。
というか、子供はどこでも寝転ぶし、ライオンとかヤギとか存在感ありすぎである。
「うわあ、すごい機器ですね、古代の機器とかが多いです」
メリンダさんの目には子供達の乱暴狼藉は見えなくて、操縦機器の豪華さだけが見えるようだ。
艇長席によじ登って、貨物室の騎獣をチェック、騎乗部の連中はラウンジにいるね。
ヒューイは甲板で立っているな。
奴は甲板好きね。
さて、魔法学園に寄って騎獣を下ろしてから徒歩で王城に行くかな。
「あ、そうだ、メリンダさん、蒼穹の覇者号の操縦をしてみる?」
「え、いいんですか、いいんですか?」
「魔導頭脳のガイドも入るし、操縦法は大体一緒らしいから」
「わあ、やりたいやりたいですっ」
私は艇長席から降りてメリンダさんに船長帽を被せた。
彼女は艇長席に座り、嬉しそうに機器を見まわした。
「エイダさん、メリンダさんに操縦権を」
【かしこまりましたマイマスター】
「うわ、魔導頭脳、すごいっ!」
蒼穹の覇者号が他の飛空艇と一番違うのはエイダさんのサポートが受けられるという事だね。
手取足取り操縦法をアドバイスしれくれるので相当に楽なのである。
「そ、蒼穹の覇者号、発進準備」
【蒼穹の覇者号、発進シーケンスに入ります】
メリンダさんは出力レバーを押し上げた。
やっぱり大きい飛空艇を操縦しているだけあって、動きに無駄が無くて安心感があるね。
「うわあ、エンジンが凄い、操舵輪の反応も凄く良い」
メリンダさんは山頂から蒼穹の覇者号を浮かび上がらせて、王都に向けて回頭をした。
プートリー山の麓から、白銀の城号と成層圏の招雷号が浮き上がり、飛行する所が見えた。
二隻の飛空艇は大きいから浮上して近づくと迫力があるね。
プートリー山麓の馬車溜まりからは、馬車とか、騎馬や騎獣に乗って王都に戻る人達も見える。
騎士学校はペガサスで編隊飛行をして飛んで行った。
農学校や師範学校、神学校のチームも街道を走っているね。
「わあ、この船で遠くに行きたいです。アライドの首都に行っていいですか」
「だめでーす、王城の隣の魔法学園の厩舎前まで行ってください」
ピコンと音を立ててマップウインドウに地図と航行ラインが描かれた。
「わあああ、これ凄い、これ凄い、成層圏の招雷号にも欲しいですっ」
「魔導頭脳が無いとね、無理みたいです」
「凄いなあ凄いなあ、機器とか表示情報とか、凄い魔導技術の船ですねっ」
私の影からマメちゃんが出て来て、艇長席の袖机に踏ん張って立った。
「うわあ、可愛いっ、影犬ね、君もパイロットなのね」
メリンダさんは目を細めてマメちゃんの背中をもふもふしながら、王都に向けて飛行する。
白銀の城号と成層圏の招雷号を上に見て下側に付くように蒼穹の覇者号は王都上空に進入した。
二隻の大型船は王城の二階の着陸台に止める感じか。
一隻しか着けられないと思ったから、一隻は王城の庭園にでも止めるのかな。
メリンダさんは感嘆の声を上げながら手堅い操縦で厩舎前に着陸した。
「上手いですね、メリンダさま」
「お恥ずかしいですわ、オルブライトさま」
後部ハッチを開き騎乗部の騎獣たちを外に出す。
ヒューイは勝手に甲板から飛び降りて厩舎の中に入った。
(今日はありがとうね)
《歯ごたえが無かった、今度はもっと沢山レースをしたい》
(あはは、また来年ね)
《来年も俺はやるぜ!》
子供達や騎乗部員、あと派閥員達を下ろしてパイロット組だけで蒼穹の覇者号を格納庫に仕舞いに行く。
王城までの引率はヒルダさんとカーチス兄ちゃんに任せた。
メリンダさんは、グレーテ王女に誘われて、ペペロンやナージャさんと一緒に歩き出したようだ。
「大成功だったわね、優勝おめでとうマコト」
「おめでとう……」
「ありがとう、嵐が上手くはまったよねえ、楽しかった」
私たちは、格納庫に蒼穹の覇者号をしまって、武術倉庫口から地上に出て、王城を目指して歩き始めた。
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