第1374話 授賞式は盛りあがる
怪我をした騎手と騎獣を治していたら、空はすっかり晴天になり、陽が差してきた。
風も無くてのんびりした雰囲気だね。
雨風に洗われた新緑の色が鮮やかで綺麗だね。
とりあえず、必要の無い障壁を消していく。
遠くの障壁も思うだけで消せるのでラクチンであるよ。
「ああ、キンボール、そして騎乗部部員たちよ、ステージにあがりたまえ、表彰式だ」
ジェラルドが私たちを呼びに来た。
「おっとそうだね」
私はヒューイから下りて、騎乗部のみんなとステージへ上がった。
《俺は待合所にいくぜ》
勝手に行くからヒューイは楽だよなあ。
一位の壇にパスカル部長が上がった。
二位は神学校の部長さんが上がる。
三位は農学校の部長さんだ。
師範学校が四位、騎士学校がどんケツであるね。
王様が出て来て、壇上でお辞儀をした。
「大嵐でのレースであったが、どの学校も途中で諦める事なく、本気でレースに打ち込んでいて、心が震えたぞ。今年のレースはとても見応えがあった。とくに王立魔法学園は、素晴らしい軍馬の騎乗と、水陸両用のケルピーで沢を行くという発想、なによりも騎獣の格が違う聖女マコトの竜馬ヒューイで、他のチームを圧倒した」
ケビン王子がうやうやしく騎乗レースの優勝カップを王様に手渡した。
「おめでとう、パスカル部長、素晴らしい結果だった」
「いえいえ、メンバーに恵まれました」
「騎獣たちの動きが普通と違ったが、アライドの隷属の首輪を使ってはいないのだな」
「はい、古式テイムを使える人と知り合いましたので、全員が騎獣を古式テイムしています、これによって人馬一体の動きが出来ました」
「素晴らしい、これは魔法学園の秘中の技術なのかね?」
「いえ、とても良い技術で将来性もあるので、騎乗部に連絡していただければ、先生を紹介しますよ」
まあ、先生はクヌートじゃなくて、マヌエルだろうけどね。
「うむ、参加チーム全員が古式テイムを覚えたレースは見応えがありそうだ。是非その技術を流行らせてくれたまえ」
「かしこまりました、我が主君」
「うむ、では、優勝おめでとう」
そう言って王様は大きなカップをパスカル部長に渡した。
いやあ、今年は無理だと思ってたから、ワイバーンさまさまだよね。
万雷の拍手が観客席から響き渡った。
「勝てたね~、聖女さん」
第四走者の太っちょ君が話しかけてきた。
「いやあ、ペガサスは怖いね、あんなちょっとの嵐の間合いで飛んで、逆転されそうになったよ」
「晴れの時はまあ、飛ぶペガサスに勝つのが絶望的でさあ、今回は嵐で助かったよ」
そうだろうなあ、飛んでチェックポイントを押さえられたら勝負にならないよ。
お、ハゲがやってきおった。
なんだなんだ。
「あ、嵐を呼ぶとは卑劣ではないか、そう思わないのか聖女候補よ」
「私は呼んでない」
「じゃあ、なんでレースが終わった直後に晴れわたるのだ、おかしいではないかっ!」
うるせえな、こいつ。
あ、王様がやってきた。
「聖女さまに何を絡んでおるのか、フランソワ」
「い、いえ、あまりに嵐が作為的で……」
「作為的でもなんでも、嵐が来た、ペガサスは役に立たなかったで良いでは無いか、それともなにか、わざと聖女さまが嵐を呼んだという確たる証拠でもあるのか」
アダベルがでででと走ってきて、ハゲの脛を蹴っ飛ばした。
「ありゃワイバーン天気だ、マコトを見に亜竜が集まっただけで、マコトは別に呼んでない」
「ぐぬぬ、痛いですぞ、守護竜どの」
「それでな、来年から騎乗レースに飛行騎獣は禁止じゃ」
「な、なんですと!! 王よそれは本当でありますかっ!」
「ペガサスが飛ぶのを見るだけの単調なレースでつまらないという意見が多くてな、委員会と協議した所、来年より飛ぶ騎獣は禁止とする事になった」
ハゲは世界が終わったような表情を浮かべて膝をついた。
わっはっは。
「ざまぁ」
と私は小声で毒づいた。
蒼穹の覇者号がお客さんを積めるだけ積んで麓に向かって降下して行った。
「カロルありがとうね」
【今は僕だ……】
「エルマー、助かるよ」
パイロット組は有能で良いね。
各校の騎乗部はステージにまだいて、興奮冷めやらない感じで雑談をしていた。
「今後はペガサス禁止かあ、というか、聖女さまの竜馬も出れないのでは」
「うわ、困るな、来年も出て欲しいのだが」
師範学校の騎手とパスカル部長が雑談をしていた。
《俺は飛ばなくても早いぜっ》
「ヒューイは地上を走るってさ」
「「おおっ」」
「そうか、飛ばなければ良いのか、元は陸上騎獣だしね」
「聖女さまにテイムされたら飛行能力が付いただけで、元はディラハンを乗せて王都を走り回っていたしね」
騎士学校騎乗部の第二騎手の生徒が寄ってきた。
「あー、騎士学校騎乗部でも、古式テイムを教えてくれるのかい?」
「構わないけど、ペガサスをテイムするのかい?」
「ああ、来年からのレースには出れないけど、俺はペガサスが好きでさ。古式テイムで人馬一体になったら楽しそうだなって」
「ああ、ペガサスは騎獣として良いもんなあ、解る解る。教えてあげるよ」
「助かるよ」
第二走者の彼はにっこりと笑った。
なんだ、良い奴もいるじゃんよ。
だが、第四走者は許さん、あとで懲らしめる。
雨も風もあがったので、各校の騎乗部部員たちは騎獣に乗って、山を下りていく。
ペガサスが編隊で飛んでいくのはやっぱり綺麗だな。
魔法学園の騎馬たちは、最後に蒼穹の覇者号に積んで厩舎に運ぶつもりだ。
「お昼はお城でパーティだな! 食べまくるぞ、ペペロン」
「お城ご飯美味しい? 美味しい?」
「お城のご飯は美味い」
「やったあっ!」
なんだか、こいつらはすがすがしいほどの腹ぺこドラゴンズだなあ。
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